経済・物価想定通り、追加緩和必要ない=黒田日銀総裁

2015年5月22日(金)18時11分

[東京 22日 ロイター] - 日銀の黒田東彦総裁は22日の金融政策決定会合後の記者会見で、会合では個人消費の改善などを背景に景気判断を「若干前進させた」と説明。経済や物価は想定通りに推移しているとして「現時点で追加緩和が必要とは考えていない」と明言した。

<個人消費、底堅さ増している>

会合では景気の総括判断について「緩やかな回復を続けている」とし、従来の「緩やかな回復基調を続けている」との文言から小幅上方修正した。理由について黒田総裁は、前日に発表された1─3月の実質国内総生産(GDP)で個人消費が3四半期連続のプラスになるなど「個人消費の底堅さが増しているため」と説明した。ことし4月から統計上は昨年4月の消費増税の影響がはく落するため「実質所得は伸びを高めていく」と指摘。「今後雇用・所得の改善が見通せるため消費が改善している」との見方も示した。

もっとも、消費増税が個人消費に与えた影響については「駆け込みの反動は終息した」が、「家計の実質所得にマイナスの影響があるのは間違いない」とし、「影響が100%なくなったか、もう少し見る必要がある」と述べた。また「経済が何か激変したということではない」とも述べ、景気判断の引き上げは小幅な調整に過ぎないとの見解をにじませた。

<追加緩和、「その時点で最も適切なことする」>

金融政策については「(日銀が)考えた線に沿って経済・物価が動いている」とし、「特別に変わったことになるとは思っていない」などと述べた。同時に「必要あると認めればちゅうちょなく政策を調整する」との公式見解を繰り返し、市場の追加緩和期待をつなぎとめる姿勢を示した。

仮に追加緩和に踏み切る場合は「その時点で最も適切なことをする」と述べ、幅広い政策手段を検討する姿勢をにじませた。

<昨年の追加緩和「今のところ適切だったと思っている」>

来週末に公表される4月の消費者物価指数(生鮮除くコアCPI)は、消費増税の影響を除き前年比マイナスの0.1%に転落する(民間エコノミスト予想の中央値)と見られており、実際の物価が人々の物価観(予想物価上昇率)に与える影響の有無が注目されているが、総裁は「足もとの物価が鈍化している中でも、各種アンケートなどから見られる予想物価上昇率は下がっていない」と説明した。

一因として、昨年10月の追加緩和が予想物価上昇率の安定に寄与しているとの従来見解を繰り返した。マイナスにとどまった14年度の成長率を下支えするには、早期の追加緩和が必要だったのではとの質問に対して、「昨年の追加緩和は今のところ適切だったと思っている」と述べた。

<潜在成長率、遠くない時期に1%>

1─3月のGDPは在庫の伸びの寄与が大きかった点について、「意図せざる在庫が積みあがっている感じはしない」とし「これが数値的に成長率を押し上げているのは事実だが、今後の経済成長にマイナスになることはないと思う」と述べた。

日本の潜在成長力は、日銀試算で0%台前半ないし半ばにとどまっている点について、リーマンショック後に資本の寄与がマイナスに転じたのが理由と説明。今後は設備投資の増加や、女子の就業率上昇などが貢献することで「遠くない時期に1%に戻る可能性は高い」と明言した。また政府が財政再建の前提としている2%成長の実現は「簡単ではないが不可能でもない」とし、政府の成長戦略が重要との見解を強調した。

<過度の期待の強気化ない─株価上昇で>

2%の物価目標達成時期については「原油価格動向次第だが、2016年度の前半」と、4月末に後ずれさせた時期を繰り返した。「毎月毎月2%の物価を達成するのは不可能」とし、2%の目標達成とは、平均的に2%の物価上昇率を達成するとの趣旨だと説明した。

日経平均株価が2万円の大台を突破し、東証1部の時価総額がバブル期並みとなった現状への所見を問われ、黒田総裁は「株価上昇の背景には過去最高の企業収益がある」とし、「現時点で資産市場や金融行動に過度の期待の強気化は観測されていない」とし、バブルではないとの見解を示した。

債券市場では、今後物価上昇率がなかなか目標の2%に達することがなく、日銀が現状通り年間80兆円(日銀の保有残高ベース)の国債買い入れを続けば、国債が枯渇するとの懸念も根強い。総裁は「先行きについても、買い入れに支障を来すとは思ってない」と述べた。

*内容を追加しました。

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