アングル:薄れるバフェット氏の神通力、保有銘柄が減収

2015年5月1日(金)19時08分

[ニューヨーク 30日 ロイター] - 競合他社に負けない確立されたブランド力を持ち、経済的に「要塞」とも言える手堅い企業へ重点投資する──米著名投資家ウォーレン・バフェット氏(84)は、この戦略を苦労して築き上げてきた。だが、彼のポートフォリオ中、多くの銘柄でその要塞は弱体化しつつある。

米IBM、コカ・コーラ、プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)などはほんの一例だ。業界大手であっても近年は競争激化に直面して売上高は減少しており、以前ほど他社を上回る業績を出すことは難しくなっている。

バフェット氏の投資会社バークシャー・ハサウェイは、5月1日に四半期決算を発表する。その後、ネブラスカ州オマハでの年次株主総会開催となる。

2014年末時点で保有比率のトップ15に入った銘柄は、1年で平均7.8%の上昇となり、S&P500種全体の13.1%を下回る結果となっている。

バフェット氏の多くの支持者らは、彼の投資手法は短期的なものではないからだと言うだろう。だが比率の大きい銘柄の一部は、長期的にみても売上高が下落基調をたどっている。

「バフェット氏の要塞は、以前ほど鉄壁でも難攻不落でもなくなっている」。シーブリーズ・インベストメント・パートナーズ(フロリダ州)を率いるダグ・カス氏はこう話す。

だからといって、バフェット氏が愚かだということにはならない。これら15銘柄の株価は5年間で平均85%上昇しており、S&P500種の78%上昇をアウトパフォームしている。

これ以外にも、バフェット氏には楽観できる成功例がある。金融危機の直後に7億5000万ドルで取得したゴールドマン・サックス株は、時価25億ドル相当に跳ね上がった。バンク・オブ・アメリカ株7億株を50億ドルで取得できる株式購入権は、いまや112億ドルの価値がある。

<大手企業の減収傾向>

ただ、過去には難攻不落だったこれら大手企業が競争激化に直面し、今後も減収傾向が続くかどうかは明らかでない。

一例を挙げると、バフェット氏は昨年、IBM株7690万株を132億ドルで購入したが、市場価格は簿価を下回っている。IBMは利幅が低いハードウエアメーカーから、クラウドコンピューティングに基づくソフトウエアおよびサービス企業への転換で苦戦中。今年第1・四半期は前年比で12四半期連続の減収を記録した。

コカ・コーラも同様だ。9四半期中8四半期で減収となっており、同社は「顧客の嗜好が変わったため」と説明している。

ただ、彼の運用するコカ・コーラ株4億株の取得金額は計13億ドル。4月29日時点の時価は162億ドルにもなる。

スペンサー・キャピタル・マネジメントの創業者で投資マネジャーのケン・シャビン・スタイン氏は「バフェット氏が1980年代に同株を買って以来、リターンや配当益は巨額だ。今後、複利は何年もにわたり多額になるだろう」との見方を示した。

<新体制の影響は未知>

バークシャーではここ数年、最大級の投資案件についてはバフェット氏、その他は投資マネジャーであるトッド・コームズとテッド・ウェシュラーの両氏が決定を下すようになっており、この変化による影響も不透明だ。

同社による毎年恒例の「株主への手紙」には、投資比率の大きい15銘柄しか触れられておらず、この大半がコームズ・ウェシュラー体制前からの運用だ。したがって、もっと比率の小さい銘柄のパフォーマンスが良好であるケースも考えられる。

両氏は衛星テレビ放送のディレクTV株の取得を決め、54%のリターンを上げた。半面、昨年の英小売大手テスコ株の譲渡では4億4400万ドルの売却損を出している。

シーブリーズのカス氏によると、バフェット氏は運用を始めた当初、無名の株式に投資して利益を上げていたが、バークシャーが規模を大幅に拡大した今となってはもう難しくなっているという。

他方で、バフェット氏が今さら投資アプローチを変更するのは愚かだと考える投資家もいる。

「バフェット氏がある日目覚めた途端に『ああ、私は間違っていた。やはりアップル株を買おう』と言い出したら、バークシャーの株主らは混乱してしまうだろう」。同氏に関する本の執筆者で、個人的にもバークシャーに投資しているヘッジファンド責任者ジェフ・マシューズ氏は言う。

マシューズ氏はこうも話した。「50年間のリターンが複利計算で20%になるなら、運用成績は誰よりも上ではないか。アップル株を買っていなかったからと言って、なぜ悪く言われなくてはならないのだろう」

(David Gaffen記者、Jennifer Ablan記者 翻訳:田頭淳子 編集:加藤京子)

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