荒れ模様の4月相場、期初の売りと押し目買いが交錯

2015年4月1日(水)18時06分

[東京 1日 ロイター] - 新年度相場は荒れ模様が続いている。いわゆる期初の売りと押し目買いが交錯。日本株やドル/円は方向感が定まらない。材料も、金融緩和と景気回復期待が綱引きをしている状態だ。

グローバルな金融相場がベースにあるものの、株価には過熱感も強まっており、再び上値を追うには景気や企業業績などの拡大に確信が持てることが必要となりそうだ。

<景気指標下振れでも、日銀緩和期待強まらず>

3月日銀短観は、売り材料として受け止められた。前回の12月短観では大企業・製造業DIはプラス12から9に悪化するとの予測であったため、3月のプラス12は底堅いとも評価できた。しかし、相場調整色が強まる中で「強気を取り戻す強い材料が期待されていた」(国内証券)といい、市場予測値のプラス14を下回った点が嫌気された。

日経平均には徐々に売りが強まり、一時250円超下落して1万9000円大台を割り込んだ。ドル/円も株安の動きにつられて119円台半ばに下落。10年長期金利も低下し、新年度初日の東京市場は、典型的なリスクオフ方向の動きとなった。

金融緩和をベースにした金融相場が今の強気相場の「正体」であるならば、悪い経済指標や企業業績は追加緩和を期待させるプラス材料であるはずだ。しかし、今回の日銀短観では市場予想から下振れしたにもかかわらず「日銀の追加緩和期待は、盛り上がらなかった」(邦銀)という。

自民党の山本幸三衆院議員がロイターのインタビューで、追加緩和のタイミングとして4月30日の会合が「良いタイミング」と指摘したことが、投機筋のショートカバーを誘ったとの指摘もあったが、市場では「後付け的な材料であり、追加緩和期待がこれで強まったわけではない」(大手証券トレーダー)との見方が多い。

<「金融・業績相場」>

金融相場でありながら、金融政策動向にそれほど市場が神経質になっていないのは、「利上げが迫る米国と違い、日銀の追加緩和にはまだ時間がかかる」(アムンディ・ジャパン投資情報部長の濱崎優氏)とみられているからだ。

3月日銀短観がそれほど悪い内容ではなかったこともあるが、「統一地方選を控え、さらなる円安をもたらしかねない追加緩和は行いにくいほか、米国側でもドル高への懸念が強まっている」(国内投信)ことも、日銀の緩和期待が盛り上がりにくい背景だ。

物価は原油安の影響で日銀目標の2%から遠ざかっているが、黒田東彦日銀総裁は、原油安のプラス効果が働いていずれ景気や物価を押し上げるとの見方を崩していない。3月31日の衆院財務金融委員会でも、総裁は「原油がどんどん下落しなければ、15年度後半から物価上昇率は加速する」と説明した。

今の相場は「金融相場」ではあるが、金融政策動向への感応度が低下。金融緩和環境はしばらく続くとの見通しを前提に、どこまで景気や企業業績が拡大していけるかという点が焦点になるという業績相場の性質が加わっているところに特徴がある。

市場では「金融・業績相場」(日本アジア証券グローバル・マーケティング部次長の清水三津雄氏)と名付ける声もある。

<年度替わりの需給要因>

相場が荒れるもう一つの要因としては、年度替わりに伴う需給的な要因もある。日本株市場では、益出しとみられるいわゆる「期初の売り」が出ているという。「ETFを保有していた地銀などが利益確定のために売りを出し、それを受けた証券会社は、現物を手当てするには時間がかかるためいったん先物を売っている」(外資系証券トレーダー)という。

3月までの上昇相場をけん引してきたエーザイなど医薬品株が1日の市場では値下がり率上位となるなど、利益確定売りが出ている可能性が大きい。

一方で、押し目買いが入るなど、出入りの激しい相場となっている。日経平均ボラティリティ指数が約2カ月ぶりに一時24台を付けたほか、東証1部売買代金も連日3兆円に迫る商いだ。

ただ、こうした利益確定売りの強まりは、国内勢だけではないようだ。前日31日の海外市場では、米ダウが200ドル超の下落となっただけなく、欧州でもドイツ株が0.99%安、フランスが0.98%安となった。日本株の先物手口でも、グローバルマクロ系ヘッジファンドの注文を扱うといわれている証券会社が、目立ち始めている。

ドル/円でも、「4月に入りいったんドルロングポジションを手仕舞うという動きが出ている」(邦銀)という。

次の焦点は3月米雇用統計だが、調整局面の中では、上振れよりも下振れの方が警戒されるという。「米経済は、雇用が良くて他はまちまちというのが今の市場の認識だ。雇用が良いとしても市場の認識は変わらないが、悪ければ、雇用さえも悪いのかとリスクオフに動くかもしれない」と三井住友信託銀行・為替セールスチーム長の細川陽介氏は話している。

(伊賀大記 編集:田巻一彦)

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