日経平均2万円へ第1関門、決算迎える高PER小売株

2015年3月31日(火)18時18分

[東京 31日 ロイター] - 日経平均2万円回復に向けた第一関門としてみられているのが、今週から本格化する小売り企業の2月期決算発表だ。

賃金上昇やインバウンド消費などマクロ的な業績拡大ストーリーを基に株価が上昇してきたが、個別業績がそれを裏付ける内容になるか注目されている。来期増益を織り込み期待先行で上昇してきた日本株の「試金石」となりそうだ。

<下落したニトリ株>

ニトリホールディングスの株価が下落した。前日30日に発表された2016年2月期業績予想は、増収増益。営業利益予想は前年比7.1%増の710億円と市場予測の736億円をやや下回ったが、増配予定も示され、株価は朝方に買い先行で始まるなど失望される内容ではなかった。

だが、買い一巡後は、利益確定売りに押され、大引けではTOPIXの0.94%を上回る2.63%の下落。きょうは年度末であり「年度替わりに伴うリバランスなど需給要因が大きいのではないか」(証券ジャパン・調査情報部次長の野坂晃一氏)との見方もあるが、株価下落の一つの要因としてみられているのが高いバリュエーションだ。

同社株は、年初から前日30日までに29%上昇。TOPIXの上昇率10.6%を3倍近く上回っている。予想株価収益率(PER)は2016年2月期の増益見通しで、23倍台から21倍台に低下したが、依然としてTOPIX平均の18倍強を上回る。

業績は良かったとはいえ、市場の反応を見る限りでは、高PERの株価を満足させるほどの業績見通しではなかったともいえる。

<マクロストーリーに頼った株高>

この株高に伴う高PERはニトリに限ったことではない。小売り株は年初から前日まで17.6%上昇と平均を大きく上回っており、平均PERは25倍程度にまで上昇している。

一部薬品株の70倍、100倍といった数値に比べれば低いが、新薬が爆発的に売れるといった期待感が小売り株にあるわけではない。人口(市場)が減少する国で小売り株が平均を上回るPERを付けたのは、賃金上昇やインバウンド消費などで消費が拡大するとのマクロ的業績拡大ストーリーがベースとなっている。

今回の小売り決算では、このストーリーを裏付ける業績(予想)内容となるかが注目されていたが、増収増益予想のニトリやしまむらでさえ株価は大きく下落、市場の反応は厳しかった。

小売り株は2006年1月に前回ピークを付けたが、当時は営業利益率の改善という裏付けもあった。今回は「前回と違い需給ギャップが解消されず、営業利益率が改善しないままマクロストーリー先行でPERだけが切り上がってきた」(外資系証券アナリスト)との指摘もある。期待先行の株高であることは否めない。

<期待感は根強い>

今年の内需回復への期待感は、大きいのは確かだ。消費再増税見送りに加え、「原油安によるエネルギー価格の低下で、可処分所得が改善。今年後半から内需の回復が明確になってくる」(シティグループ証券・チーフエコノミストの村嶋帰一氏)との見方が多い。

2月期決算の出だしの株価反応は厳しいが、市場の強気な期待は多少のことでは損なわれないとの見方もある。「保守的な業績見通しであっても、賃金上昇やインバウンド消費への期待は大きく、市場の期待感は失望には変わらないのではないか。むしろいい押し目と受け止めらるかもしれない」(内藤証券・投資調査部長の田部井美彦氏)という。

フィデリティ投信は3月から、日本株のオーバーウエート幅を引き上げた。日銀の景気刺激策は今後も日本株を押し上げ、米国の力強い個人消費の伸びも支援材料になる見通しとしている。

ただ、2015年度の増益基調を株価は相当織り込んできた。現在の予想1株当たり利益は日経平均で約1120円。31日の終値でみて来期PERが16倍まで低下するには7.1%増益、15倍なら15.5%増益が必要だ。

日本株がレンジを超えて上昇し始めたのは、2月中旬。ガバナンス改善期待や企業業績期待が買い材料とされたが、新たに加わった買い材料は特段みられなかった。春闘の最終的な評価は、中小企業にどこまで広がるかを確かめる必要があるし、経済指標は国内外ともにまちまちだ。

金融相場をベースとして、来期以降の業績を期待先行で織り込んできたのが、今回の株高相場といえる。そのけん引役は小売りなど内需株であり、高PERを裏付けする業績(見通し)が示されるかが日経平均2万円に向けての第一のハードルとなりそうだ。

(伊賀大記 編集:田巻一彦)

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