アングル:中国企業の海外事業買収、資源分野除けばかなり好成績

2015年3月27日(金)13時00分

[香港 27日 ロイター] - 中国国有企業による過去の海外事業買収は、資源分野を除くとかなりの好成績を上げている。まもなく伊ピレリとの事業統合に直面する中国化工集団公司(ケムチャイナ)もこの事実に安堵するだろう。

中国の国有企業は低い資金調達コストや巨大な国内市場を背景に大挙して海外での事業買収に繰り出し、過去10年間の買収総額は3910億ドルに上る。

これまでの買収案件を振り返ると、資源分野こそコモディティ価格急落が響きまちまちだが、他の分野はもっと心強い成果を出している。

ロイターが買収完了から3年以上を経た最も規模の大きい案件25件について株価、売上高、マージンの3つの観点から調べたところ、14社では買収の標的となった企業ないしは買い手の企業においてすべての項目が改善した。25社のうち7社は標的企業か買い手企業もしくはその両方が非上場のため、情報が不十分だった。

成功例としてはレノボ・グループ(連想集団)による2004年の米IBMのパソコン部門買収、浙江吉利控股集団 による10年のボルボ乗用車部門のフォード・モーター からの買収、大連万達集団(ワンダ・グループ)による12年のAMCエンタテインメント買収などが挙げられる。

買収後の成績が振るわなかったのは上海汽車(SAIC) による04年の双竜自動車買収など4件だった。

銀行筋や業界間関係者によると、中国企業は外国での事業買収の経験が浅いため事業統合をめぐり標的企業の中で不安が高まり、標的企業を説得するために買収価格を引き上げることがある。そのほか単に中国企業の方が買収に積極的だというケースもある。

例えば1月に復星国際がクラブメッドを買収した際には、クラブメッドの同業4社のEV/EBITDA倍率に62%のプレミアムを乗せた。

もっともアーンスト・アンド・ヤングのアジア太平洋部門のファイナンシャルサービス担当シニアパートナー、キース・ポグソン氏によると、中国の買い手企業はただ資金量が豊富なだけでなく、どの事業を買うか熟慮しているという。

ポグソン氏は「中国企業は国内の消費者の好みや中国での事業について海外の競合相手よりも優れた発想を持つ傾向がある」と話す。

これまでで最も目立った成績を残しているのがレノボによるIBMのパソコン事業買収。レノボは11年間でパソコン市場世界最大手に成長。株価は5倍に上昇して営業収益は年平均28%の伸びを達成し、懐疑派の懸念は杞憂だった。

この案件に携わった内部関係者によると、レノボはIBMの企業文化を壊すことなく迅速に統合を進めるべきだと即座に理解。米ノースカロライナ州モリスビルと北京の2カ所の事業拠点を維持し、経営陣の大半を残留させた。浙江吉利もボルボに自前の経営陣をスウェーデンに置くことを認めた。

プライスウォーターハウスクーパースの中国向けプライベート・エクイティ・リーダー、デービッド・ブラウン氏によると「中国企業は海外事業にはまったく干渉せず、大概は海外企業のそれまでの経営陣に権限を残している」という。

アルバレス・アンド・マーサルズのマネジングディレクターのオリバー・ストラットン氏は「必ずしも資金がたっぷりあれば効率よく経営する能力を持てるというものではない。優れた中国企業はこの点を習得し始めている」と話した。

(Lisa Jucca、Denny Thomas記者)

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