国税庁がユニバーサルを調査、カジノ計画の資金の流れで=関係筋

2015年3月20日(金)16時16分

[東京/ビロクシ(米ミシシッピ州) 20日 ロイター] - 国税庁が、パチスロ機大手ユニバーサルエンターテインメント のカジノ計画に関連する資金の流れを含む税務処理について、調査を始めたことがわかった。

同社をめぐっては、フィリピンでのカジノ計画に関して4000万ドルの資金が2010年に流出し、計画の便宜供与を狙った賄賂に使われたのではとの疑惑が浮上している。

複数の関係筋がロイターに明らかにした。

国税庁の調査とは別に、香港の反汚職当局であるICAC(廉政公署)も4000万ドルの資金の流れについて調査を行っている。複数の関係筋によると、ICACは、資金が香港の銀行口座を経由した取引だったことから、調査に着手することになった。

ユニバーサルは18日、米子会社のアルゼUSAが、「米司法省による同疑惑に関連すると推察される捜査」を受けていることを明らかにしていた。ただ、大陪審からの召喚状がいつだったかなどは明らかにしていない。発表文の中で同社は、「公平かつ適正な捜査が行われる限り、もとより証拠を欠くことが再々確認され、捜査が終結するものと考えている」と述べている。

ロイターが複数の捜査関係者に取材したところ、米連邦捜査局(FBI)は、アルゼUSAの銀行口座から複数の別口座を介し、当時フィリピンのゲーム規制当局のトップの側近で、カジノ計画のコンサルタント、ロドルフォ・ソリアーノ氏に2010年に流れた資金について、贈賄を禁止する米規制に抵触するかについて調べを進めている。

FBIの捜査は2012年から始まっており、この過去数カ月の間にも関係者との捜査を継続し、証拠を収集中だ。

資金の流れのほかFBIは、ユニバーサルエンターテインメントの代理人を務める弁護士が2013年7月に、贈賄疑惑を指摘した同社元社員に対し、捜査当局への協力をやめれば一定の対価を支払うなどとする民事訴訟の和解案を提示したことが、司法妨害や証人買収にあたるか否かについても調べている。

ロイターの取材によると、和解案はユニバーサルの代理人弁護士から、同社元社員の代理人弁護士に提示されていた。ユニバーサルの代理人弁護士は、元社員が和解条件を受け入れれば、同氏に対する民事訴訟を取り下げ、「一定の対価を支払う」としていた。

一方、複数の関係筋によると、国税庁によるユニバーサルの税務調査は2014年から始まり、今週も都内の同社本社で行われている。税務調査の範囲がどの程度のものか詳細は明らかになっていない。

ユニバーサルは、4000万ドルの資金の流出は、複数の同社元社員によるものだと主張している。同社の第三者委員会が設置され、資金流出問題について調査が行われた結果、同委は賄賂の証拠は認められなかったとの報告書を出した。

ただ、同時に、社内の企業統治(ガバナンス)に問題があったとも指摘。その後ユニバーサルは、送金された4000万ドルのうち、1000万ドルについて不適切な会計処理が行なわれた可能性が高いとの第三者委の指摘をふまえ、12年10─12月期の四半期報告書で会計処理を訂正するなどの対応を行っている。

一連の調査、捜査について、香港のICACは、個別事案についてコメントはしないとしている。米FBIはコメントを差し控えた。

国税庁の広報担当者は「個別の案件について答えられない」と述べた。ユニバーサルの広報担当者はコメントをしていない。

フィリピンの捜査当局も贈賄の疑いで調べを進めたが、調査を停止している。ロイターはソリアーノ氏にコメントを求めたが得られていない。

<ミシシッピ州は条件付きで免許を認可>

一方、米ミシシッピ州では19日、賭博管理委員会が開催され、岡田会長も出席した。同委は岡田氏に対するミシシッピ州での「適合性」審査を更新したほか、スロット・マシン販売を営むユニバーサルの米子会社、アルゼ・ゲーミング・アメリカの販売免許も認可した。

ただ、ユニバーサルのフィリピンにおけるカジノ計画に関し、贈賄を禁止する米規制に抵触するかについてFBIが進めている捜査で、同氏が責任を問われないことが条件となる。

岡田氏が米国で公の場に姿を現したのは、FBIの捜査が始まって以来、初めて。

岡田氏は同委で発言の機会を与えられた際、「最近いろいろな疑惑というような言葉で報道されたり、ロイターとか朝日新聞とか、特にこういったところでの報道が大変な誤解を受け、私自身が悪人であるかのように報じられている」と語った。

米ミシシッピ州賭博管理委員会のアレン・ゴッドフレー氏は同委の後、ロイターに対し、FBIが調べを進めている内容は「懸念すべき事項だが、確かなことが分からない限り、私は何もできない」と語った。

ユニバーサルは12年12月、4000万ドルの使途不明な資金送金について報道したロイターと同社記者、編集者を相手取り損害賠償請求訴訟を東京地裁に起こしている。ロイターは、会社として報道内容を支持するとコメントしている。

(ネイサン・レイン、ケビン・クロリッキ、翻訳編集:江本恵美)

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