最新記事

ベンチャー

ウーバーはなぜシリコンバレー最悪の倒産になりかねないか

2017年3月13日(月)21時40分
ケビン・メイニー

インド工科大学に招かれたカラニック(昨年1月) Danish Siddiqui-REUTERS

<1年前まで輝く星だったウーバーは、今やトラブル続きで評判はガタ落ち。GMを上回る時価総額は、逆にIPOを妨げ、資金調達もままならない。このまま行けば、自ら創造した配車サービスというビジネスの形だけ残して消える可能性もある>

わずか1年前、アメリカの配車サービス大手ウーバーはまるで万能の魔法使いのようにIT業界に君臨していた。だが化けの皮が剥がれた最近のイメージといえば、狂ったように車のレバーを引く不機嫌な酔っ払いのようなCEOが、救いを求める従業員に向かって拳をふるうような粗暴さだ。

【参考記事】乗客レイプのUber運転手に終身刑で、問われる安全性

今のウーバーは、何もかもが裏目に出る。事故にあった原子炉のようにメルトダウンして、シリコンバレーの中心に巨大な穴を開けるのでは、と懸念が高まっている。オンデマンドで車を手配するウーバーの革新的なサービスは、世界中で多くの人々に愛され、需要は高まる一方だ。市場が成長するのは間違いない。だがその成長には、ウーバーがいなくても支障なさそうだ。

腐敗した企業文化、不運なメディア露出

ウーバーの問題の根幹にあるのは粗野な企業文化だ。昨年12月に退職した元エンジニア、スーザン・ファウラーは、在職中に上司からセクハラを受け、人事部に何度も訴えたが、まともに取り合ってもらえなかった。会社は機能不全に陥っていると、先月ブログで公表したことで、ウーバーの社内事情が世間に知れ渡った。職場は冷酷だったと批判したファウラーは、ブログにこう綴った。「管理職は、昇進を巡って同僚と争うか、直属の上司の揚げ足を取ることしか考えていなかった」

【参考記事】ウーバーと提携したトヨタが持つ「危機感」

数日後には、ロータスの創業者ミッチ・ケイパーと、労働環境を専門にする妻のフレアダ・ケイパーが、ウーバーの経営陣に公開書簡を送りつけた。設立初期に出資したケイパー夫妻は、ファウラーの告発に対する対応に誠意がないことに不満を抱き、「破壊的な企業文化」にうんざりしていると書いた。「我々が今こうして声を上げるのは、ウーバーに幻滅し怒りを覚えるからだ。社内からの変化を待つだけでは限界だと感じた」

1週間後、トラニス・カラニックCEOがウーバーの運転手を罵倒するビデオが公開された。ウーバーが運賃を下げ続けるせいで収入が減ったと、運転手は不満を訴えた。「あなたのせいで私は破産だ」と言われたカラニックは激昂し、運転手をののしった。ブルームバーグがビデオを入手し配信すると、カラニックはまた謝罪する側に立たされ、同社のホームページに「リーダーとして根本的に変わり、成長しなければならない」という短文を掲載した。わかりきっていたことだ。

【参考記事】安くて快適な「白タク」配車サービス

ネガティブな宣伝効果

ウーバーにはネガティブな話題がつきまとう。イスラム圏7カ国からの入国を禁止したドナルド・トランプ米大統領の大統領令に抗議するタクシー運転手がニューヨークのJFK国際空港でストを行った先月は、ウーバーの運転手がスト破りをして営業を続けたことで抗議者側と衝突した。スマホからウーバーアプリの削除を呼びかける「#DeleteUber」運動がツイッターで広まり、同社は火消しに追われた(いくつかの推計によると、約20万人のユーザーがアプリを削除したもようだ)。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

金総書記、プーチン氏に新年メッセージ 朝ロ同盟を称

ワールド

タイとカンボジアが停戦で合意、72時間 紛争再燃に

ワールド

アングル:求人詐欺で戦場へ、ロシアの戦争に駆り出さ

ワールド

ロシアがキーウを大規模攻撃=ウクライナ当局
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 2
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指すのは、真田広之とは「別の道」【独占インタビュー】
  • 3
    【世界を変える「透視」技術】数学の天才が開発...癌や電池の検査、石油探索、セキュリティゲートなど応用範囲は広大
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 6
    中国、米艦攻撃ミサイル能力を強化 米本土と日本が…
  • 7
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 8
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 9
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 10
    【クイズ】世界で最も1人当たりの「ワイン消費量」が…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指すのは、真田広之とは「別の道」【独占インタビュー】
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 6
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 7
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中