最新記事

金融

量子コンピューターがビットコインを滅ぼす日

2016年10月13日(木)16時00分
アンソニー・カスバートソン

Pashkova-iStock.

<これまでに何度も存続の危機に瀕し、そのたびに生き返ってきた仮想通貨ビットコインだが、量子コンピューターの誕生と共にその歴史は終わると専門家は予想する>

 ビットコインはもう終わりだ。投資家はこれまで何度もそんな噂を聞かされてきたが、すべてオオカミ少年の叫びだった。ビットコイン終焉説を追跡したサイトをのぞくと、誕生7年目のビットコインはこれまでに100回以上も、メディアに死亡宣告されたことが分かる。ところが最近のブーム再来でこの1年に価格は3倍に高騰。ビットコインはしぶとい。価格崩壊にも、ネット上の盗難にも、コミュニティー内の内輪もめにも耐えて生き残ってきた。だが行く手には最大の脅威が待ち受けている。それは量子コンピューターだ。

【参考記事】ビットコインをめぐる5つの誤解を解く

 量子コンピューターは82年に物理学者のリチャード・ファインマンが始めて理論を提唱して以来、コンピューティングの新時代を切り開く技術として期待されてきた。ここ何年かでグーグル、NASA、CIAなどが開発に着手し始め、実用化が現実味を帯びてきた。コンピューター科学の専門家によると、超強力なマシンが登場すれば、現在の暗号化技術は通用しなくなるという。そうなればビットコインの技術的な土台は崩れ、仮想通貨の偉大な実験は終焉を迎える。

すべての秘密鍵を解読できる

「ビットコインは量子コンピューターに耐えられない。第1号の量子コンピューターの誕生日が、ビットコインの命日になる」と、英サイバーセキュリティー企業ポスト・クォンタムの共同創業者アンダーセン・チェンは本誌に断言した。

【参考記事】ビットコイン、小規模な投資家から再び注目を集める

 チェンによると、量子コンピューターの登場が脅かすのは、ビットコインの取引を可能にするパブリックキー(公開鍵)とプライベートキー(秘密鍵)の暗号化技術だ。ビットコインのウォレット(財布)はこの2つのキーで成り立っている。送金者に公開鍵を教えれば、ビットコインを受け取れるが、受け取ったコインを使うには、自分しか知らない秘密鍵が必要だ。秘密鍵が第三者に知られれば、ウォレット内のコインをすべて使われかねない。

「量子コンピューターなら、公開鍵を基に、秘密鍵を割り出せる」と、英プリマス大学警備・通信・ネットワーキング研究所のマーティン・トムリンソン教授は言う。「計算はわずか1、2分で終わる。つまり、量子コンピューターはすべての秘密鍵を解読でき、世界中のすべてのビットコインにアクセスできるということだ」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ノボノルディスク肥満治療薬、睡眠障害など幅広い用途

ワールド

インドネシア国会、中銀の成長支援役割強化などで法改

ワールド

米FDA、イーライリリーやノボなどに警告書 医薬品

ワールド

インドネシア、EUと貿易協定で合意 来週署名へ=閣
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェイン・ジョンソンの、あまりの「激やせぶり」にネット騒然
  • 2
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 3
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 4
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがま…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 7
    腹斜筋が「発火する」自重トレーニングとは?...硬く…
  • 8
    「なにこれ...」数カ月ぶりに帰宅した女性、本棚に出…
  • 9
    「この歩き方はおかしい?」幼い娘の様子に違和感...…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「リラックスできる都市」が発…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 5
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 6
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 7
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中