最新記事

インタビュー

【再録】理数系女子の先駆者マリッサ・メイヤー

グーグルが初採用した女性技術者で、当時は同社副社長。その後ヤフーCEOになるメイヤーが2010年末に語った「女性とおたくとテクノロジー」

2016年3月31日(木)11時29分
ダニエル・ライオンズ(テクノロジー担当)

「先入観を取り払いたい」 2010年当時はグーグルで、検索製品&ユーザーエクスペリエンス担当副社長だったマリッサ・メイヤー(2014年撮影)。「女の子は女の子らしいルックスで、女の子が好きそうなものを好きであってもいいけれど、同時に理数系科目が得意だっていいのだということを示したい」などと語っていた。その後、2012年にヤフーCEOに転じ、老舗IT企業の改革に奮闘している Ruben Sprich-REUTERS


ニューズウィーク日本版 創刊30周年 ウェブ特別企画
1986年に創刊した「ニューズウィーク日本版」はこれまで、政治、経済から映画、アート、スポーツまで、さまざまな人物に話を聞いてきました。このたび創刊30周年の特別企画として、過去に掲載したインタビュー記事の中から厳選した8本を再録します(貴重な取材を勝ち取った記者の回顧録もいくつか掲載)。 ※記事中の肩書はすべて当時のもの。

[インタビューの初出:2010年12月29日/2011年1月5日号]

――テクノロジー業界に女性が少ないのはなぜか。

 これは私が変えたいと強く思っていることの1つ。私はテクノロジーが好きだし、そこに男女の違いはないと思っている。この領域ではまだまだ多くのことができると思う。例えば中学校や高校で、女子は理数系科目へのやる気をそがれているという調査結果を見たことがある。

 私自身はとても運が良かった。いつも数学と科学が得意だったけれど、それが特別なことだとか、ましてや好ましくないと思われる可能性があるなんて考えもしなかった。だからこういうネガティブな先入観を取り払いたいと強く思っている。女の子は女の子らしいルックスで、女の子が好きそうなものを好きであってもいいけれど、同時に理数系科目が得意だっていいのだということを示したい。

――シリコンバレーにおける女性技術者の割合はどのくらいか。

 技術部門では15~17%あたりで推移している。グーグルはもう少し多くて約20%。

――グーグルは業界全般よりも技術職を含め、女性の雇用に力を入れているのか。

 私はグーグルに初めて雇われた女性技術者なの。採用面接のとき、(共同創設者の)ラリー(・ページ)とセルゲイ(・ブリン)はこう言った。「今うちには7人の技術者がいるが全員男だ。僕らはこの会社をつくるときどんな会社にしたいかよく考えて、たくさん本も読んだ。男女のバランスが取れていたほうが、組織はうまく機能する。だから社内に優秀な女性、特に技術系の女性のグループがいることが重要なんだ」

【参考記事】ヤフー再建を任された天才女子の実力
【参考記事】ヤフーのメイヤーCEO、1年目の成績表

 これには時間をかけて取り組む必要があった。まだ会社ができたばかりの頃、技術職に男性が16人立て続けに採用されたことがあったの。するとラリーは、「20人に達したら、同じ数だけ女性技術者を雇うまで僕は採用通知に一切サインしないぞ」と言った。

 グーグルが女性技術者の採用に本腰を入れ始めたのはそれから。そのためのプログラムを作って、本気で努力を始めた。グーグルで女性従業員の割合が同業他社よりも高いのは創業者の2人が最初からとても力を入れてきたからだ。

 グーグルでは女性技術者の雇用に加えて、女性が働きやすい職場環境づくりにも力を入れている。例えば採用面接のとき、面接官に女性技術者を含めるようにしている。これは技術者同士の関係という意味で大きな意味があると思う。男性技術者には男としかコミュニケーションを取れない人が大勢いるから。

【参考記事】マリッサ・メイヤーは子育てなんかしない

――あなたが生まれ育ったのはウィスコンシン州だが、昔からコンピューター関係の仕事に就きたいと思っていたのか。

 最初は医者になりたかった。でもスタンフォード大学の1年生のとき、化学や生物学が得意だけれど、あまり達成感が感じられないことに気付いた。

 ところが必修科目の1つだったコンピューターサイエンスの授業では、毎日が新しい問題の連続。それをどう解決するか、新しいことをどう理論付けするか、今まで取り組んだことのない問題を解決するにはどんなアルゴリズムを作るか、毎日考えることができた。知的好奇心を大いに満たしてくれる分野だと思った。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米PCE価格指数、インフレ率の緩やかな上昇示す 個

ワールド

「トランプ氏と喜んで討議」、バイデン氏が討論会に意

ワールド

国際刑事裁の決定、イスラエルの行動に影響せず=ネタ

ワールド

ロシア中銀、金利16%に据え置き インフレ率は年内
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 3

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 4

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 5

    アカデミー賞監督の「英語スピーチ格差」を考える

  • 6

    大谷選手は被害者だけど「失格」...日本人の弱点は「…

  • 7

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    「性的」批判を一蹴 ローリング・ストーンズMVで妖…

  • 10

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中