最新記事
テクノロジー

TikTok全盛期は終わった(アメリカの規制法案とは別の理由で)

TikTok Is on the Decline

2024年3月18日(月)16時50分
ニティシュ・パーワ(スレート誌ライター)
TikTok

11月の大統領選に向けてバイデン陣営もTikTokを使い始めた PHOTO ILLUSTRAION BY NATALIE MATTHEWS-RAOMO/SLATE, BIDEN-HARRIS HQ (@BIDENHQ) ON TIKTOK, ZINETRON/ISTOCK

<安全保障上の懸念があるとして、米下院がTikTok禁止法案を可決した。だが未来を担うZ世代に絶大な人気を誇った動画投稿アプリは、別の理由から衰退し始めている>

今は違うかもしれない。だが、過去5年にわたり世界のポップカルチャーから政治まで大きな影響を与えてきた中国発の動画投稿アプリTikTok(ティックトック)が、ついに下降期に入ろうとしているようだ。

その兆候は至る所に見られる。最近では、音楽大手ユニバーサル・ミュージック・グループ(UMG)が、所属アーティスト(テイラー・スウィフトやJ・バルヴィンらヒットメーカーが大勢いる)の楽曲提供を打ち切ったため、TikTokの無数の投稿から音楽が消えた。

TikTokはこの1年、新規ユーザーの獲得にも苦労してきた。昨年登場した通販機能であるTikTokショップは広告だらけで、ユーザーからは大ブーイング。AIを使った迷惑メッセージや偽情報の拡散、そして自らの顔を否定するような「加工フィルター」への不安も聞かれる。

似たようなコンテンツが多すぎるとか、「おすすめ検索ターム」が人為的に流行を生み出しているという批判もある。怪しい「健康」情報を広めるインフルエンサーの問題点を指摘する声も多い。

TikTokの運営会社も、各国で人員削減や性差別訴訟に揺れている。とりわけこの訴訟は、業績にダメージを与えるとともに、時価総額の大幅な減少をもたらした。

一方、11月に次期大統領選を控えるジョー・バイデン米大統領は、若者にアピールするためにTikTokを始めたが、その動画は身もだえするほどダサい──。

TikTokは死にかけているわけではない。だが、従来の空気感を台無しにする変化が起きていることを、ユーザーは感じ取っている。

それでも、ショップの収益が業績に与える影響が拡大するに従い、TikTokは定額サービスや、長い動画を投稿できる有料会員システムの導入を進めるだろう。

その背景には、依然として莫大な広告収入を得ているものの、広告業界でTikTokの評判が芳しくないという事情がある。これはTikTokの地政学的な影響力への懸念が関係しているようだ。

バイデンも「参戦」したが

TikTokが政治家のイメージアップに大きく貢献していることは、最近のフィリピンやアルゼンチン、そしてインドネシアの選挙で、強権的な政治家が親しみやすいイメージを打ち出して勝利を収めたことからも分かる。

アメリカの政治でも、TikTokは危うい役割を果たしている。ジョン・フェッターマン上院議員ら一部の政治家は、かつてはTikTokで地域の若手活動家たちを取り込もうとしていたが、今はTikTokがそうした活動家たちを、パレスチナ自治区ガザのイスラム組織ハマスの手先にしているという、根拠のない主張をしている。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米との鉱物資源協定、週内署名は「絶対ない」=ウクラ

ワールド

ロシア、キーウ攻撃に北朝鮮製ミサイル使用の可能性=

ワールド

トランプ氏「米中が24日朝に会合」、関税巡り 中国

ビジネス

米3月耐久財受注9.2%増、予想上回る 民間航空機
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは?【最新研究】
  • 2
    日本の10代女子の多くが「子どもは欲しくない」と考えるのはなぜか
  • 3
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 4
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 5
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    「地球外生命体の最強証拠」? 惑星K2-18bで発見「生…
  • 8
    謎に包まれた7世紀の古戦場...正確な場所を突き止め…
  • 9
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初…
  • 10
    【クイズ】世界で最もヒットした「日本のアニメ映画…
  • 1
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 2
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇した「透けレギンス」投稿にネット騒然
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はど…
  • 9
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 10
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 8
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中