焦点:アベノミクス推進へ歳出圧力、補正財源に限界 手詰まり感も

2017年8月3日(木)19時40分

[東京 3日 ロイター] - 第3次安倍政権の新内閣は、最優先課題とする経済再生に向け、デフレ脱却に再び本腰を入れられるかが焦点となる。内閣改造に先立ち、与党からは10兆円規模の補正予算を求める声も浮上しているが、税収の伸び悩みで財源は乏しい。内閣支持率の低迷に歯止めをかけるにも政策手段は限られ、政府への歳出圧力は、かえって手詰まり感を印象付けることになりそうだ。

「補正予算の断行を」。自民党二階派は7月25日の派閥研修会で、アベノミクス政策の推進を促す文書を採択した。

文書は、日本経済がなおデフレ脱却の途上にある現状を踏まえ、1)金融政策との連携と10兆円の補正予算、2)当初予算の年率3、4%の拡充――を掲げ、政府に追加歳出を求めるものだ。

今回の内閣改造で、安倍首相は、政権の新たな看板となる「人づくり革命」の担当相に茂木敏充・前自民政調会長(経済再生相も兼務)を起用し、実務的な布陣で、今後も経済政策を推進する考えを示した。

茂木氏は、今年6月の経済財政運営の指針(骨太方針)で、首相からの要望に応じる形で財政運営を巡る表現ぶりを変更。首相の信認も厚いとされ、政府、与党内には「『人づくり革命』に紐づけた対策補正は十分考えられる」との見方がある。

もっとも裏付けとなる財源が頭打ちとなる中で、どこまで経済再生に取り組めるかは見通せない。

安倍政権は、経済成長に伴う税収増で2014年度まで1兆円を超える剰余金を確保してきたが、16年度は3782億円と、2年連続で数千億円規模にとどまった。

予算要求官庁の一角である経済産業省の幹部は、春先の幹部会議で補正予算の議論に及んだ際、「ある出席者から『財源がない』などと、まるで財務省のような発言があった」経緯を明かす。

学校法人「加計学園」の獣医学部新設や南スーダン国連平和維持活動(PKO)の日報隠し問題などで国民の信頼を失った安倍政権。北朝鮮問題をはじめ厳しさを増す安全保障環境の中、外交面で成果を上げることも容易ではない。

専門家からは「毎年のように新たな看板政策を打ち出す手法に国民が白けてきた。粘り強く政策の推進に取り組む姿勢を示さなければ、国民の意識は変わらない」(政策研究大学院大学の飯尾潤教授)との声も上がっている。

(梅川崇 編集:山口貴也)

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