コロンビアの先住民グループが経営するコカナサ(Coca Nasa)と、世界的大手飲料メーカーであるコカコーラがある飲料の名称をめぐって対立しています。

問題となっている飲料はコカナサが製造する地ビール、コカポーラ(Coca Pola)。

大手飲料メーカー コカコーラ社は、「市場に混乱を招き、コカコーラの名声を不当に利用する可能性がある」として、名称が似ているコカポーラの名前を変更するようにコカナサに要求。これに対しコカナサは「コカの葉に関係する名称を使用するなと言う要求に対応することは難しい。なぜならコカの葉は先住民の歴史的遺産なのだから」と名称を変更しない構えを見せています。

当初コカコーラ社は10日間経っても対応しない場合は法的措置を取るとコカナサに圧力をかけていましたが、市民からコカナサを支持する声が多く上がっているからか、提示された10日という期限は過ぎても今のところコカコーラ社から法的な動きはとられていないようです。

Coca Cola declara la guerra a Coca Pola, una cerveza colombiana a base de hoja de coca elaborada y vendida por los indígenas nasa https://t.co/2KUk9IiOCT

-- laverdad_es (@laverdad_es) December 23, 2021

　

コカはドラッグではない

コカと聞くと麻薬のコカインを連想しがちですが、実はコカの葉はカルシウムやビタミンが豊富なスーパーフード。そのため南米の先住民は7000年も前からコカの葉を薬草として使用しており、彼らとってコカは馴染みのあるシンボルとも言える植物なのです。麻薬であるコカインは、すり潰したコカの葉にガソリンや薬品を混ぜ込んで乾燥させたもの。コカの葉自体にドラッグのような依存性や毒性は一切ありません。

コカナサの創立者であるファビオラ・ピニャクエさんはカウカ県インサ出身の先住民で、90年代に政治学を勉強するために首都ボゴタに上京し、授業の合間にコカの葉のお茶を売って生活の足しにしていました。しかし90年代といえば麻薬組織とコロンビア政府が激しく争っていた時代。先住民の血を引いていないコロンビア人が持つコカの葉のイメージは「コカインの原料」というネガティブなものだったのです。そんなコカのイメージを変えたいと、ファビオラさんは1998年にコカナサを設立。コカの葉を合法に商品化するために国からの許可を得て、今ではお茶に止まらず酒類や塗り薬などコカの葉を使用した製品を幅広く製造販売しています。

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Una hoja para la paz, una hoja menos para la guerrapic.twitter.com/8GrPckAF7Q

-- Coca Nasa (@cocanasa) January 19, 2022

　

コカポーラはパクリ？

コカナサが製造販売するコカポーラ。コカの葉でできたビールなのですが、名前だけを聞くとコカコーラと似過ぎではないかと思う人も少なくないのかもしれません。コカはコカの葉を意味しているのは分かりますが、ではポーラとは何の意味があるのでしょうか？

スペイン語でビールのことはセルベサ(cerveza)と言いますが、実はコロンビアではビールは口語表現でポーラと言われています。1910年、コロンビアの独立100年を祝うために飲料メーカーであるBavaria社がラ・ポーラ(La Pola)というビールを発売したことがきっかけで、それ以来国民の間でビールはポーラと呼ばれるようになったのです。つまりコカポーラとは「コカのビール」という意味。「コカのラム酒（ロン）」という意味でコカロンというお酒も販売していますし、コカポーラがコカコーラの名前を真似たとは断定できないでしょう。

En 1911, nació la primera marca popular de Bavaria, La Pola, creada para celebrar el centenario del Grito de Independencia y en honor a Policarpa Salavarrieta. Su nombre se volvió genérico para referirse a la cerveza en Colombia.

Las marcas más populares: https://t.co/5fiQIlU0iG pic.twitter.com/p5lvfe5yOf

-- Panorama Cultural (@P_Cultural) August 3, 2019

　

実際に購入してみた

コカナサについて色々調べているうちに興味が湧いてきたので実際にコカポーラを購入してみることにしました。

購入したのは

・コカポーラ（コカのビール）

・コカロン（コカのラム酒）

・コカクッキー

これら全てにコカの葉が原料として使われています。

コカの葉を食べたことがないのでコカの味がするかはなんとも言い難いですが、ほのかにお茶のような風味も感じられてどれもとても美味しい商品でした。

特に驚いたのはラム酒のコカロン。コロンビア人の夫も「今まで飲んだラム酒の中で一番美味しい」と絶賛するほど。美味し過ぎてあっという間になくなってしまいそうなのでまたリピートしなければいけません。

　

今回コカポーラの名前の件で話題になったコカナサですが、彼らは先祖代々受け継がれてきたコカを愛し、一部の人によって曲げられたコカへのイメージと汚名を払拭しようと努力しています。

コカインのコカではなくて先住民のコカへ。コロンビアの平和の願い、これからもコカナサの商品を買い続けようと心に決めたのでした。

最後に、商品発送の連絡と一緒にコカナサから送られてきたメッセージをシェアしたいと思います。

「私たちの商品を購入することによってあなたはコロンビアの先住民を支援しているということを覚えておいてください。争いのコカの葉を１枚減らして、平和のための１枚のコカの葉に。」