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日本人コーヒー生産者が語るコロンビア

松尾彩香|コロンビア

11歳の環境活動家フランシスコ・ベラとは一体何者なのか?

Credit: YouTube Niño ambientalista solicitó a los congresistas "legislar para la vida" - El Espectador

2017年、スウェーデンのグレタ・トゥーンベリさん(当時15歳)が議会の前で「気候のための学校ストライキ」を行ったことで世界中の注目を集めました。彼女の活動は世界中に大きなインパクトを与え、彼女をきっかけに改めて環境について考えたという大人も多くいることでしょう。

今世界中で使い捨てプラスチックが廃止になったり、ガソリン車の廃止が決まったりと、環境保護について様々なアクションが起こっていますが、私は彼女の活動が世界中の人の環境に対する意識を変えたことも、これらのムーブメントが起こった理由の一つなのではないかと勝手に思っています。

さて、世界がエコに注目しているところで、コロンビアではある11歳の少年、フランシスコ・ベラ(Francisco Vera)さんが国内で注目を集めています。

彼は一部で「コロンビアのグレタ・トゥーンベリ」と呼ばれていますが、一体この少年は何者なのでしょうか?

 

コロンビア最年少の活動家

フランシスコさんは自然と動物を愛する11歳の少年です。首都ボゴタに生まれましたが2歳の時に同クンディナマルカ県のヴィジェタという自然あふれる小さな街に移り住みました。

市会議員の叔母の影響で環境保護や社会問題にはずっと関心があり、5歳の頃から闘牛の禁止を求めるデモ行進などに参加していたそうです。ゲームが好きという子供らしい面もある一方で、議会の本会議や大統領選の演説を見ながら育ったというのですから、若くして活動家になるのもなんだか頷けてしまいます。

また本を読むことが大好きで新しいことを学ぶことがとても楽しいと、あるインタビューでは話していました。

2019年5月、10歳の時に「Guardianes por la vida(生命のガードマン)」と名付けられたグループのリーダーとして本格的に環境活動家としての運動を開始し、今日ではコロンビアだけでなくスペイン、メキシコ、アルゼンチンに数千人もの仲間がいるんだそうです。

 

上院議会でスピーチ。一躍有名人に。

彼が有名になったのは2019年12月18日。

上院議員の前で環境についてもっと配慮して欲しいと訴えたことがニュースとなり、全国に彼の名が知れ渡ったのです。

スーツ姿でビシッときめたフランシスコさんは上院議長席に招かれ、ハキハキとした口調でスピーチを始めました。

「上院議員の皆様、上院議長、おはようございます。まず始めに上院議長にこのような民主的な場でお話しする機会を与えていただけたことに感謝を申し上げます。」

「今日は我々のグループ(Guardianes por la vida)を代表して、私やあなたたちが原因となって起こる環境への悪影響について意識を持って欲しいとお願いをするために参りました」

「国の上院議長のみなさんに生命のための法律を制定して欲しいのです。例えばフラッキング法による石油の採掘、動物実験、使い捨てプラスチック、動物虐待などです」

このスピーチをした時フランシスコさんはまだ10歳でしたが、大人顔負けの話し方や言葉の選び方にコロンビア中が驚きました。

 

ツイッターで積極的に呼びかけ

SNSの中でフランシスコさんが一番アクティブに発信しているのはツイッター。

とは言ってもまだフランシスコさんは11歳の子供ですから、SNSは母親であるアナさんが管理しているそうです。  

上の動画の中で、フランシスコさんは「一番大切なことは教育だと思っています。なぜなら、人々に地球の価値を伝えることで彼らはそれに意識を向けるようになり地球を大切にするようになるからです。」と語っています。

ツイッターでは、デモ活動やゴミの削減を呼びかける投稿の他に動物や自然と触れ合うフランシスコさんの写真も多く見られ、地球や生命の美しさを再認識させられます。

ツイッターという発言の規制がほとんどないプラットフォームでは、心ない発言や批判の声を浴びせられることも少なくありません。

コラムニストのアドルフォ・サブレ氏はEL TIEMPO誌のコラム、Los niños predicadoresの中で「グレタ・トゥーンベリやフランシスコ・ベラはなんか不自然である。幼少期から才能を発揮する天才がいないとは言わないが、彼らはなんだかおかしい。グレタやフランシスコの裏には誰がいるんだ?何が欲しいんだ?金か?権力か?票か?」と発言し、このコラムニストのツイッターのフォロワーたちは「環境のことなど話さずにテレビでお人形を見ることに時間を費やせ」などとフランシスコさんを批判しました。

そのコラムについてフランシスコさんはツイッターで短いビデオを投稿。

「コラムでは、グレタと僕が当たり前のことを言ってるのになぜメディアで話題になっているのかと疑問をもたれています。それには僕も同感します。たくさんの人々が理解していないような当たり前なことを僕たちは言っているんです。もう一つの地球がないことは学位や博士号がなくても理解できます。それと、コラムニストさんは僕たちがお金や権力や票が欲しいのか尋ねていますが、僕は未成年なので公職に就くことも立候補することもできません。ゴミ拾いやデモ活動でお金をもらったりもしていません。コラムニストさんには生命や環境の保護活動をうやむやにする為に子供を利用しないで欲しいです。」と反論し、そのビデオは16万回以上も再生されました。

 

最近また話題になっているフランシスコ・ベラ

先週1月14日、フランシスコさんのツイッターに何者かによって脅迫のメッセージが残され再びニュースを騒がしています。

内容は「このクソ野郎をぶっ潰してやりたい。もし環境について話し続けるようなら、こいつの指を切り落として叫ぶところを見たい」「もう忠告したからな、フランシスコ」というような内容で、現在犯人を見つけるための捜査が続けられています。

フランシスコさんを応援する様々な政治家や著名人がこの出来事をツイートし、フランシスコさんのサポートを表明。賛同する人が次々と現れ『#FranciscoEstamosContigo(#フランシスコ、私たちは君の味方だよ)」というタグはその日のトレンドとなりました。

イヴァン・ドゥケ大統領も「許すことのできないことである」とすぐに犯人を見つけ出すように命じ、有力な情報を提供した人には1千万ペソの協力金が支払われるとのことです。

 

国連から表彰。将来を担う少年。

脅迫ニュースから一転、今度は嬉しいニュースが飛び込んできました。

国際連合の人権委員会がフランシスコさんの環境保護活動に対して感謝状を贈呈したのです。

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Credit; Twitter @ONUHumanRights

感謝状は国連コロンビアの代表から直接手渡しされ、ツイッターは祝福のメッセージで溢れました。

フランシスコさんのような子供が増えていくことを多くの人が望んでいます。

 

昨年コロンビア政府は2050年までに温室効果ガスを50%削減することを発表し、各都市でサイクリングロードが整備されたりエレクトリックバスが大量に導入されたりと、物凄いスピードで『エコ化』が進んでいます。私が住む村はとても田舎で、今まで家庭で出るゴミはプラも缶も全て道端で燃やしていましたが、今年からゴミ収集車が通るようになり、環境への配慮が感じられました。

今回2021年のキーパーソンとしてフランシスコ・ベラさんを紹介しましたが、将来の地球を担う人物としてこれからの彼の成長と活動に注目していきたいと思います。

Profile

著者プロフィール
松尾彩香

コーヒー農家を営む元OL。コーヒーを栽培する一方で、コーヒー農家の貧困や後継者不足問題、コロンビアでの生活についてSNSを通じて発信。朝の一杯のコーヒーに潜む裏話から、日本ではあまり報じられないコロンビアの情勢まで幅広くお伝えします。2022年7月よりスペイン在住

ブログ: http://campesinita.com

Twitter: @maon_maon_maon

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