2020年5月25日アメリカ合衆国ミネソタ州ミネアポリス郊外で、アフリカ系アメリカ人のジョージ・フロイド氏が警察官の不適切な拘束により死亡した事件を受けて、全米でBlack Lives Matterという激しい抗議運動が頻発したのは記憶に新しいと思います。

コロンビアでも同様に警察官が一般市民を死亡させる事件が発生し、現在コロンビアの様々な地域で抗議運動が起きています。

警察が無抵抗な弁護士を地面に押さえつけテーザー銃で攻撃。弁護士はその後死亡

9月9日の明け方、コロンビアの首都ボゴタの西部に位置するエンガティバで、警官が一般市民をテーザー銃（スタンガン）を用いて押さえつけ、死亡させるという事件が発生しました。

死亡したのはハビエル・オルドニェス氏。２人の息子を持つ40歳代の弁護士兼タクシードライバーでした。

オルドニェス氏は事件当日友人たちとアパート内で飲酒をしており、ビールを買い足す為に外出した際に警察官に呼び止められ事件に発展したようです。

警察官２人がオルドニェス氏を地面に押さえつけ、「もうやめてください、お願いします」と訴えているにも関わらず、テーザー銃で執拗に攻撃。

更に交番に連行した後に暴行を加え、オルドニェス氏がぐったりした為病院へ連れて行きましたが、その後死亡が確認されたそうです。

路上での暴行の様子は近くを通りかかった人々によって録画されており、その2分18秒にもわたるショッキングな動画はSNSを通じて瞬く間に拡散。その日のうちに抗議運動が始まりました。

当初は警察署への投石や落書きだった抗議運動も次第にエスカレートし、夜にはボゴタ各地の警察署をはじめとする様々な建物が破壊・放火され、デモ隊と警察との激しい衝突にまで発展しました。

深夜1時に警察に発表されたレポートによるとこの日だけで5人が死亡、80人が負傷したとのことです。

翌日9月10日にはボゴタのクラウディア・ロペス市長がSNSを通じて市民に夜7時以降は外出しないように呼びかけましたが、国民の怒りは収まることはなく、コロンビア各地で再び激しい抗議運動が起こり死者は11人に増加。

警察官がデモ隊に向けて銃を乱射する様子や、集団でデモ参加者に暴行する様子などの映像がSNSで次々と拡散され続けています。

更に死亡したのは10代20代の若者がほとんどで、全員警察官の発砲により死亡している点から、抗議運動はこれからどんどんエスカレートしていくことが予想されます。

以前から問題視されていた警察の暴力行為

悲しい事に、コロンビアの警察官が一般市民に暴力を加える事件は珍しいことではありません。

今年の5月19日には、首都ボゴタから500km離れたプエルトテハダで、24歳のアンデルソン・アルボレダ氏が外出禁止令を守らなかったという理由で警察官に殴り殺される事件が起こっています。

また昨年の11月25日に行われたデモでは、18歳のディラン・クルス氏が機動隊に頭を撃たれて死亡しました。

コロンビアでは警察は法務省ではなく国防省に属しており、今回の様な抗議運動が行われた際、警察はデモ隊をまるで「敵」を相手にしているかの様に攻撃する傾向があり、機動隊を送り込み武器や暴力で抑え込もうとする行動が目立ちます。

それが更に国民の反発を買い、毎回多数の負傷者がでてしまうのが悲しい現実です。

コロンビアのジョージ・フロイド

無抵抗な一般市民を地面に押さえつけ、周りの制止を無視して暴行を加える警察官の姿は、アメリカで起きたジョージ・フロイド氏の事件を思い起こさせ、コロンビアでも沢山のメディアがハビエル・オルドニェス氏とジョージ・フロイド氏の名前を並べて報道しています。

コロンビアでの警察官による暴力行為は、今年の2月25日から9月3日の間だけでなんと既に169件報告されていると言われています。

警察という立場を利用し、人権を完全に無視した暴力行為を今まで何度も行ってきたという現実に、コロンビア国民は日々不満を募らせていましたが、今回SNS上で拡散された目を覆いたくなる様なショッキングな動画でついにその不満が爆発。今回の大規模な抗議運動に発展しました。

既にSNSを通じて各地でデモ行進の呼びかけが行われており、激しい抗議運動はこれからしばらく続くことが予想されます。