ところが、昨年12月の中央経済工作会議ではそれは誤解だと明言している。もともと習近平は2013年から「二つの『ブレることなく』」というスローガンを打ち出し、国有企業も民間企業もどちらも重視すると言っていた。今回の会議の決定では「我々が二つの『ブレることなく』を続けるのかどうかに関して不正確な議論が横行しているようだが、これからも続けるとここではっきり言っておきたい。国有企業と民間企業を制度と法律において平等に扱うという原則をしっかり実現し、政策の上でも世論においても民間企業の発展を奨励していくべきである」と述べている。国有企業も民間企業も大事なんだという2019年までの両論併記の路線に戻っただけでなく、さらに踏み込んで、党・政府の幹部は民間企業の困難に耳を傾けるなど、フレンドリーになるべきだと強調している。
また、プラットフォーム企業が発展をリードし、雇用を創出し、国際競争の中で力を発揮することを支持する、とも言っており、アリババ、テンセント、滴滴などに対する規制を強めてきた過去2年の流れから転換しそうである。さらに、李克強が党政治局常務委員から引退するのと共に消えるかと思われた「大衆創業、万衆創新」のスローガンも復活し、それをさらに推進すると言っている。
経済成長のエンジン
このように、今回の決定を見る限り、2020年11月のアント・フィナンシャルの株式上場延期あたりから始まった民間企業に対する統制強化の流れが一変する可能性が高い。実際、中央経済工作会議の直後の12月18日には浙江省政府の幹部がアリババを訪問して激励している。なぜこのような転換が起きたのだろうか。
それは現下の経済情勢の厳しさと関係があろう。2022年はGDP成長率が3.0%となって目標の5.5%を大幅に下回り、特に不動産市場の不況は深刻である。2023年も5%以上の成長を目指すことになりそうだが、すでに地方政府がかなりの債務を負っているため、財政支出を拡大して成長を刺激する策は取りにくい。そこで、ここ数年抑えていた民間企業の活力を解放することで、経済成長のエンジンを点火しようという狙いなのであろう。
ただ、果たして中国の民間企業家たちがこうした期待に応えて投資や事業を活発化させるかどうかは未知数である。今回何の前触れもなく突然方針が変わったので、民間企業家たちは果たしてこの転換をどれだけ真に受けていいものか戸惑っていることであろう。そもそも共産党の決議文の語調を変えるだけで即座に民間企業の活力が高まるわけもない。今後も規制緩和を続けるとともに、政府のサービスを向上し、創業環境を整備することが重要である。