彼が遭遇し、切り取る空間そのものに矛盾と葛藤があるからだろう。永遠の自由と独立性、それを追い求め続けることで生まれる自信と安らぎ。そして、その対極にある過酷な生活環境から来た不安や危うさ。そうしたものをシンプルに捉えようとしているのだと話す。
哲学的でもあり、ロマンチストでもある。キャプションにもそれが端的に表れている。例えば、シラキューズが放浪の旅先で見つけた古い写真(上)がそうだ。
撮られた時も場所も分からない。でも、このプリントに纏わりついた割れ目や折り目の傷、そうしたものが一体どのくらい見られてきたかと感じさせてくれる。美しさとか、愛とか、あこがれを伝えてくれる。彼女は誰なのか? 誰がどのくらいこの写真を持っていたのか? 数年? 一生? いろんなことを想像させてくれる。これが写真の力だ。それはしばしば見えているものじゃなく、見えないものからくる。
実のところ、シラキューズが旅先で出会った人物やその生活環境は、彼の本当の被写体ではない。彼が最も望んでいるのは、写真からはみ出した、写真そのものを超えた写真を撮ることだ。
それは、彼自身がここ数年で最も感銘し影響を受けたものの1つ、といった事がらにも表れている。彼自身をドキュメントした映像作品「Traveler」のサウンド担当の言葉を引き合いに出していた。その人物の音楽的なゴールは、認知できるリズムとメロディをまったく取り省いた音楽を作ること――。
そしてシラキューズの旅のビジュアル・ライフワークも、その最終的なゴールは、すべてを投げ出してまで旅をしてしまう人間の中に潜む、遺伝子的な何か、そのエネルギーを見つけ出すことなのである。
今回ご紹介したInstagramフォトグラファー:
Nicholas Syracuse @nicholas_syracuse