2つの地下鉄プロジェクトには共通している匂いがある。ヴィジュアル用語でいうダーク、あるいはノワールなのだ。暗い匂いが漂っているのである。リール自身もそれを認め、また意図的に「ざらざら」した感じを捉えようとしていると言う。彼がニューヨークの地下鉄にそう感じる理由をさらに問うと、こう返ってきた。
ニューヨークは人で溢れかえっている。なのに、インフラは非常に古い。そんな状況の中で地下鉄にいれば、人々は不安や緊張、あるいは閉所恐怖症的な感覚を無意識に発してしまうもの。そうした深層的感情をつかみとるようにしているんだ、と。
実のところ、そうしたどこかダークで緊張を孕む匂いは、彼の大半の作品に存在している。もう1つ別のプロジェクトである、ネガフィルムを実験的にプリントしたポートレイト・シリーズもそうだ。彼が25年以上かけて作りあげたダークルーム(暗室)テクニックを用いながら、1枚につき何時間もかけてプリントしたものだ。
写真史におけるプリント・マスターであるマン・レイとアーヴィング・ペンに敬意を表している、と彼は言うが、そこにはリールの感性と彼自身がニューヨークで一体化してきた彼そのものの匂いが根付いている。だからこそ、作品はより魅力的になり、ダークであったとしても情熱を放っているのである。
今回ご紹介したInstagramフォトグラファー:
Stephen Reel @stephen.reel