アルゼンチンといえばサッカー。
11月にカタールで行われるFIFAワールドカップも近づくにつれ、国内はそわそわし始めています。
今回で5度目となるW杯出場を果たすアルゼンチン代表リオネル・メッシは、今月ついに「Star+」のインタビューで、自身にとって最後のW杯になるであろうことを明言しました。
「不安と緊張が同時にある。これで最後だからね。
待ち遠しい半面、うまくやりたいと思ってしまう怖さがある。」
過去、2014年W杯ブラジル大会の決勝ではドイツに、2015年と2016年のコパ アメリカ決勝では2度共チリに敗れ準優勝に留まるなど、目前で勝利を逃し「一度もアルゼンチンに優勝カップを持ち帰ってきたことがない」と、国内では批判の声すら聞こえてくるなど、代表戦では悔しい思いをしてきたメッシ。
しかしついに昨年2021年のコパ・アメリカではブラジルを破りアルゼンチンを優勝へ導いた他、今年6月に行われたイタリアとのフィナリッシマでも3-0で快勝。現在連続35試合無敗を記録し、メッシが代表入りして以来最も強力で完成度の高いチームと言われ、期待値はこれまで以上に高まっています。
彼は今回で歴代5人目となる、5度のW杯に出場した選手に数えられる他、最も多くの試合に出た選手としても歴史に記録を残すのではないかと言われています。
また歴代最多勝利選手(現在1位がドイツのミロスラフ・クローゼで17勝、メッシが12勝)になる可能性も、ゼロではありません。
とは言え、記録なんてどうでも良い、とにかくレオ(メッシの愛称)に有終の美を、というのがアルゼンチンの雰囲気かもしれません。先日、インタビュアーがインタビューの途中でレオへの愛が溢れ、本人を前にして感極まって泣き出すという、いかにもアルゼンチンらしい?ニュースもありました。
Agradecido con la vida de poder haber cumplido uno de mis máximos sueños.
-- Pablo Giralt (@giraltpablo) October 21, 2022
Gracias Leo por tu calidez y sencillez.
Sos muy grande.
Y gracias a todos los que se emocionaron igual que yo y me acompañaron en este maravilloso viaje.
Te quiero, Leo!
pic.twitter.com/Nd6tUsXkdD
=====
唯一無二のサッカー選手、リオネル・メッシ
数々の記録を破り続け、歴代最多7度のバロンドール(世界最優秀選手賞)を受賞し、6度のチャンピオンズリーグ得点王と歴代最多6度のゴールデンシューを獲得。多くのサッカー関係者や選手から世界最高峰の選手と称されるメッシ。
しかしその道のりには困難がありました。幼少時から類まれなるサッカーの才能を発揮していましたが、10歳の頃成長ホルモンの分泌異常の症状が発覚、継続した治療なしでは身体が発達しないと診断が下りたのです。アルゼンチン経済の逼迫により自国での治療は困難・・・という状況を救ったのが、スペインのFCバルセロナでした。
アルゼンチンの天才少年のビデオを目にし、加入テストを受けさせたFCバルセロナは、家族揃ってのバルセロナへの移住を条件に治療費を全額負担することを約束。メッシは家族と共にバルセロナへ渡り、チームの本拠地近くのアパートで暮らし始めました。
そして2001年、異例の13歳という年齢で正式契約が結ばれ、スペインでの生活を本格的に始めることとなったのです。
(試合中に良く聞こえてくる、彼のもうひとつの愛称である「プルガ」は、「ノミ」という意味ですが、その生い立ちからきたニックネームです。)
治療の甲斐あって順調に成長したメッシは17歳でデビューして以来、20年もの間トップ選手として2021年までバルセロナでプレイし続けました。
その為、プロとしてアルゼンチンのチームには一度も所属したことはありません。そして、バルセロナ在籍中数々のタイトルを獲得するも、2006年~2019年までのアルゼンチン代表としての試合では一度も優勝を手にすることはありませんでした。
アルゼンチンサッカーは、試合中熱くなって喧嘩になったり、審判に暴言を吐いたりすることが普通です。しかしメッシは冷静沈着、謙虚な人柄を持つ選手です。
アルゼンチン国歌演奏時も、彼のやり方としてあえて歌わず黙って聞いていたことで有名で、それは批判の目で見られることもしばしばでした。
世界的なスーパースター選手であることには変わりないので、メッシのことを誇りに思う人もいましたが、下町出身でザ・アルゼンチン人であったマラドーナといつも比較され、「ヨーロッパ育ちの冷たい奴」というイメージで見る人もまた多くいました。
その空気が変わったのが2021年、コパアメリカ。
メッシは長年期待されながらも実現できなかった「アルゼンチン優勝」へと導きました。得点王、アシスト王、MVPの"個人賞3冠"を達成し、28年ぶりのコパアメリカ優勝。私もその時に感動した記憶は未だに鮮明で、翌日のニュースでは、どのメディアも「悲願の優勝、おめでとうレオ!!」だったことを覚えています。
"誰もが待ち望んだキス!"
-- 西原なつき@在住バンドネオン奏者 (@bandoneona) July 11, 2021
メッシの手に、念願の、念願のトロフィーが本当におめでとう https://t.co/6szG2D4nko
その後のインタビューなどでも、優勝後の経験は信じられないような日々だった、母国への愛はより増したと話しています。
W杯観戦チケットの申し込み数ランキング上位5試合に、アルゼンチンが出場する全試合が入っており、どれだけ人々が注目しているかもうかがえます。
以前の記事にも詳しく書いていますが、アルゼンチン国内のインフレの年率は年内に100%まで到達することが予想されており、生活は日に日に圧迫されている・・・、などと言いながらも、カタールまでサッカーを観戦しに行く意気込みだけは他の国の人々よりも大きいようです。
低所得層の、国から補助金が出るカテゴリーの人たちも多く試合観戦の抽選に応募し、そのうち150人が当選していた、ということで税務署が調査に入っているとニュースにもなっていました。
=====
国内の変化
2014年から暮らしていて、私にとって今年は3度目となるアルゼンチンで経験するワールドカップ。どんなに経済が苦しい局面にあっても、大きなデモや事件があったとしても、サッカーの大事な試合が来れば全てそっちのけでサッカー第一になる、ということも毎回感じることです。終わったころに、「で、なんだったっけ?」と改めて現実に戻るのです。
今年はW杯目前にして、それにまつわる、さらに首を傾げたくなる変化も起こっています。
アルゼンチンの米ドル⇔アルゼンチンペソの換金レートの数は、公式発表されるもので、8月時点で6つほど(銀行のオフィシャルレート、輸出入用レート、外国人旅行者用レートなど)があり複雑だったのですが、それが先日さらに増えました。
この目的はというと、外貨とのやり取りをする際にそのケースごとにそれぞれに違ったパーセンテージで課税をするためのレート設定なのですが、それが増えに増え、現在17つもの公式のドル⇔ペソレートが存在しているようです。
(参照/10月13日ラ・ナシオン誌)
この中でも一番注目を集め、ニュースでもよく取り上げられているのが、「カタール・レート(Dólar Qatar)」なるもの。サッカー観戦にカタールに行く人たちをはじめ、海外旅行をする人たちの旅先での支出に対象となる課税レートです。
(そのほかにも、ご親切にお友達同士で通貨を交換する時用のレートとして「お友達レート」、「ネットフリックスレート」、人気ロックバンドが11月にアルゼンチンで初ライブをするということで、そのバンドの名前から取った「コールドプレイ・レート(Dólar Coldplay)」などなど・・・)
これをオフィシャルとして政府が発表してしまっているということで、ここに住む現地の人々も総じて「この国、本当にどうなってんの」という反応でした。
何はともあれ、今は完全にサッカーに気が持っていかれているアルゼンチン。
カタールまで試合に行く人たちはいそいそと準備を始め、またテレビを持っていない人は今からどうやって観戦するか、近場で試合が見れるカフェやバーをチェックしたり、お隣さんと交渉を始めたりしている人も。
人生を楽しむことを忘れない人々。この部分に関しては、見習いたいものかもしれません。
私も、レオを、アルゼンチンを、全力で応援したいと思います!
