にもかかわらず、こうしたパニック論は何度も繰り返されている。有名な例としては、1993年にトランスジェンダー男性ブランドン・ティーナが殺害され、のちに『ボーイズ・ドント・クライ』として映画化された事件が挙げられる。

また、1995年にトーク番組「ジェニー・ジョーンズ・ショー」に出演したスコット・アメデュールが殺害された事件も有名だ(視聴者が秘密を告白する番組で、知り合い男性への思いを語ったアメデュールは、数日後にその男性に殺された)。

さらに、1998年に同性愛者であることを理由に大学生マシュー・シェパードが殺害された事件や、2008年に15歳のラリー・キングが、好意を示した14歳の男子同級生に銃殺された事件、2015年に同性愛者ダニエル・スペンサーが隣人に殺害された事件なども知られている。

米国法曹協会は2013年、全米各州に対してゲイ・パニック論を禁止するよう呼びかけた。以降、今回のバージニア州に先立って、2014年のカリフォルニア州を皮切りに、コロラド州、コネチカット州、イリノイ州、メイン州、ニュージャージー州、ニューヨーク州、ネバダ州、ロードアイランド州、ワシントン州の10州が、ゲイ・パニック弁護とトランスジェンダー・パニック弁護を禁止していた。

ニューヨーク州知事アンドリュー・クオモは、2019年に同種の禁止令に署名をした際、次のようにツイートした。「今回の法案成立により、私たちはこの有害な法的弁護戦略を歴史上の塵として葬り去ろうとしている。あらゆる場所に住むLGBTQの人々にとって、大きな意味を持つ勝利だ」

ニューヨーク州議会上院議員として法案を起草した民主党のブラッド・ホイルマンは当時、こう述べていた。「この禁止令は、検察官、被告側弁護人、陪審員、裁判官に対し、被害者のLGBTQとしてのアイデンティティを、被告が武器として利用することはできないというメッセージを送っている」

(翻訳:ガリレオ)

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