ドイツ・メルヘン街道開設から今年で50周年を迎えた。人々をおとぎの世界へと誘う、まだ知らない魅力一杯のグリム童話ゆかりの地を巡る旅へようこそ。
ドイツの観光街道といえば
ドイツの観光街道と聞いて、真っ先に思い浮かぶのは「ロマンチック街道」だろう。中世の宝石と称されるローテンブルクや、ディズニー映画『シンデレラ』の城のモデルとして知られるノイシュヴァンシュタイン城など、南ドイツを縦断する全長約400kmのルートは、世界中の観光客を惹きつけてやまない。
一方、北ドイツを舞台に、より幻想的な魅力を放つのが「メルヘン街道」だ。グリム兄弟が生涯をかけて各地を巡り収集した昔話や伝承をもとに紡がれたグリム童話のゆかりの地を巡る、全長約600kmにも及ぶこの街道は、訪れる人々を魅了し続けている。
メルヘン街道とは?
Foto©norikospitznagel 最終目的地ブレ-メンに到着できなかった音楽隊の記念碑。ブレーメンにて。次回紹介。是非お楽しみに。
ドイツ・メルヘン街道は、グリム兄弟生誕の地ハーナウからこの街道が開設されたシュタイナウ、兄弟が通った大学都市マールブルク、そしてメルヘン街道の首都カッセルを経由し最終目的地のブレーメンへと続く道のりだ。約70の加盟都市を結び、童話の世界を現実に体験できる観光ルートとして、多くの人々に愛されている。
道中には、物語にちなんだモニュメントや博物館、キャラクターグッズを扱うショップなどが点在しており、子どもから大人まで幅広い世代が楽しめるよう工夫されている。
これから2回にわたり、グリム童話ゆかりのスポットを紹介していきたい。訪れたことのある街、聞いたこともない街まで、きっと驚きの発見があるはず。
今回巡るスポット
今回は、シュタイナウ、マールブルク、バート・ヴィルトゥンゲン、カッセルを巡ってみよう。どの街にもグリム童話の足跡が残り、魅力あふれるスポットが広がっている。
Foto©norikospitznagel マールブルクの市庁舎前にて。グリム兄弟もこの夜景を目にしたのだろうか。
メルヘン街道が開設されたのは、今から50年前。ドイツ・メルヘン街道協会の専務理事、ベンヤミン・シェーファー氏は、当時の構想をこう語っている。
「グリム兄弟の足跡をたどるルートを作り、童話とともに観光資源として売り出していこうというアイデアは、何度も議論を重ねる中で生まれました。そしてこの街道が誕生したのです」
50周年を記念して街道沿いの各都市では、無料の市内観光ツアーや特別イベント、地域独自のキャンペーンなどが開催され、例年以上のにぎわいを見せている。
1.幼少期を過ごした街シュタイナウ・アン・デア・シュトラーセ
シュタイナウ・アン・デア・シュトラ―セ(Steinau an der Strasse)は、生誕地ハーナウから移り、グリム兄弟が1791年から96年まで幼少期を過ごした街。木組みの街並みと静かな雰囲気があり、観光客も比較的少なくゆっくりと街歩きを楽しめる。
人口約1万人の可愛らしいこの地は、兄弟が多感な幼少期を過ごした思い出の地。ここにある「グリム兄弟ハウス」は、この兄弟に捧げられた最大級の博物館で、見逃せないスポットだ。市内には幻想的な童話の泉や、ルネサンス初期のシュタイナウ城が美しく保存されており、訪れる人々をおとぎ話の世界へと誘う。
さらにVR(バーチャル・リアリティ)体験を通じて、19世紀初頭のシュタイナウへとタイムスリップするのはいかがか。グリム兄弟の子ども時代が蘇り、50周年ならでは特別な思い出となるに違いない。
次は大学都市マールブルクへ
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2.知性とロマン、そして物語が交差する街マールブルク
マールブルク(Marburg)は、1802年から1806年までグリム兄弟が大学時代を過ごした古都。
Foto©norikospitznagel11世紀に設立されたこの街は、学術と文化の中心地として栄え、16世紀にはドイツ最古の大学の一つであるマールブルク大学も設立された。ハイデルベルク、ゲッテインゲン、テュービンゲンと並び、ドイツの4大大学都市として長い歴史を持つ。

Foto©norikospitznagel
この街ならではのグリム童話をテーマにした「グリム・ディッヒ・プファド(Grimm-Dich-Pfad)」と呼ばれる散策路を是非辿ってみよう。全長約2kmのこのコースでは、「カエルの王様」や「白雪姫のハイヒール」など、舞台画家パスクアーレ・イッポリトによる実物大のフィギュアが点在し、童話の世界が街中で再現されている。
Foto©norikospitznagel 誰が一番美しい?鏡に聞いてみようまた、歴史を感じる旧市街の石畳の道や木組みの家々が並ぶ風景は、まるで中世にタイムスリップしたかのよう。聖マルティン教会や市庁舎周辺も見どころで、散策に時間をかけてゆっくりと楽しみたい場所だ。

Foto©norikospitznagel 坂や狭い石畳の多い市内では、歩きやすい靴を履いて出かけよう
さらに、13世紀に建てられた街のシンボル「マールブルク城」からは、街全体を一望できる。城跡や庭園を巡りながら歴史的な雰囲気を満喫したい。
3. 白雪姫の故郷バート・ヴィルトゥンゲン
北ヘッセン州にひっそりと佇むバート・ヴィルトゥンゲン(Bad Wildungen)は、「白雪姫」のルーツの一つとされている、知る人ぞ知る童話の故郷だ。
街を歩けば、赤い屋根が映える木組みの家並み、色鮮やかな花で飾られたバルコニー、そして曲がりくねった石畳の路地が出迎えてくれる。
「白雪姫の故郷」とされる理由は、街に伝わる実在の人物や歴史的背景にあるそうだ。近郊に佇むベルンシュタイン城は、かつて白雪姫のモデルとされる王女が暮らしていたと伝えられており、その伝承がグリム兄弟にインスピレーションを与えたとか。
白雪姫のモデルは、バート・ヴィルドゥンゲンのヴァルデック伯爵フィリップ4世の娘マルガレータだと言われている。彼女には、実際に怖い継母がいて、隣国の王子と恋に落ち、そして1554年21歳という若さで謎の死を遂げた。ここは、真実と童話が錯綜するメルヘンの世界を体感できる場所。
次はメルヘン街道の首都カッセルへ
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4.童話の記憶を未来へつなぐ街カッセル

©norikospitznagel
カッセル(Kassel)は、グリム兄弟ヤーコブ(1785-1863)とヴィルヘルム(1786-1859)が童話集を初めて出版した歴史的な街。兄弟は生涯の大半(約30年)を過ごし、童話集を編集した重要な拠点であることからメルヘン街道の首都と言われる。
特に注目したいのは「グリムヴェルト(Grimmwelt)」。ここにはユネスコ世界記録遺産に登録された初版本や、グリム兄弟自筆の手紙や原稿などが展示されている。
また兄弟が最初に編纂を手がけた「ドイツ語大辞典」など貴重な資料も展示されている(注・兄弟の死後、他の学者や研究者が引き継ぎ、同辞典を完成させた)。

Foto©norikospitznagel グリム家ファミリーヒストリーの展示
Foto©norikospitznagel 伝承昔話を収集したメモを象徴した展示グリム童話として知られる作品、「子供と家庭のメルヒェン集」は、兄弟がドイツの伝承昔話を後世に残したいと考え、昔話を収集し、それを編集したもの。初版では、日本でもお馴染みの「ヘンゼルとグレーテル」「白雪姫」「ブレーメンの音楽隊」など 156編が収められている。
また、あまり知られていないが、この童話集で挿絵を担当した画家の末弟ルードヴィッヒに関する展示もある。館内には映像や音声で楽しむ展示も多くあるため、子供も大人も飽きることなく閲覧できる。
次回は、ハン・ミュンデン、ゲッティンゲン、ハーメルン、そして北の最終地点ブレーメンを巡りたい。