物価が継続的に上昇する高いインフレは人々の買い物動向を変えた。ドイツではオーガニックスーパーマーケットが小売業の風景に欠かせない存在となっているが、オーガニック製品はディスカウントストアで入手することが多くなっている。その結果、一部のオーガニック小売業者が存続危機に陥っている。

過去70年間で最も高いインフレ上昇率

先日こんなことがあった。

最寄のスーパーマーケットで魚を買った。価格は1パック3.99ユーロ。ところがレジでは4.99ユーロと表示された。なおこの商品はオーガニック食品ではないが、気がつかないうちに値上がりしている例として紹介したい。

早速「3.99ユーロと表示されていましたが...」と伝えると、レジ担当の女性は売り場まで走っていった。まもなく彼女は、3.99ユーロと書かれた価格カードを手にして戻ってきた。

「本部より値上がりの連絡が毎日入るのですが、価格の書き換えが追いつかない状態です」と、女性は説明した。彼女の責任ではないと理解できるものの、(価格変更は)自分の担当ではないと釈明するドイツらしい返答だと思った。

「この魚は4.99ユーロです。それでも買いますか、それともやめます?」と聞かれた。魚が食べたくて出向いたので「買います」と、返答した。と同時に、「いつまで値上がりは続くのだろうか?」とため息が出た。

一例をあげると、レタス1個は1.15ユーロから1.59ユーロに。ピーマン1個1.49ユーロから1.79ユーロに、パン1㎏1.59ユーロ から1.69ユーロに、500グラムのパスタ39セントから1.19ユーロに。トーストパン1袋は89セントから1.29ユーロにと、値上げは連日続いている。

消費者物価は東西ドイツ統一後、かってないほど急速に上昇した。昨年10月のインフレ率は10.4%に達し、過去70年間で最も高い水準になった。

ちなみに23年1月のインフレ率は8.7%の見込みで緩和しつつある。

なんといってもインフレ率を高めた要因は、エネルギー価格と食料品の価格上昇だ。連邦統計局によると、22年のエネルギー価格上昇は21年度比で43.0%にも上る。

環境意識の高い消費者も物価高騰には勝てない

市場調査会社GfKが昨年秋に発表した数字によると、オーガニックスーパーの売り上げは1年間で10.8%も激減している。自然食品店や健康食品店では37.5パーセントのマイナスさえ記録した。

オーガニック業界の大きな問題は、エネルギー、原材料、肥料市場のコスト高が産業を圧迫していること、食品取引の価格高騰、ドイツ人の消費行動の変化などだ。

ドイツ農民連盟(以下DBV)によると、オーガニック分野の22年総売上高は、約150憶ユーロだった。ちなみに過去最高の21年総売上高は約160憶ユーロを記録した。

そして22年の消費者物価は前年比平均7.9%上昇し、食料品価格は平均13.4%上昇した。

環境意識の高い消費者も、「持続可能なものを買いたいが、インフレ率に見合った収入増は期待できない。結局価格を見て、選択肢があれば安い方を選ぶ」ということらしい。その結果、国内で有名な有機小売業者は債務超過と過剰債務の恐れを避けるため、自己破産手続きによる救済を求めざるを得なくなっている。

ディスカウントストアとのパートナーシップ 

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トレンドはディスカウントストアとのパートナーシップ 

このところ、特にオーガニック専門店は窮地に立たされている。オーガニックマーケットチェーンの「ベーシックBasic」が破産を申請し、オーガニック小売店のスーパー「ビオマルクトBiomarkt」がそれに続いた。また、オーガニック食品だけにこだわらない従来型のスーパーマーケット「テグートTegut」でも、オーガニック分野は21年比で2%の微減と報告された。

そこで少し前までは、考えられなかった「オーガニック食品をディスカウントストアで販売する」という措置がトレンドとなり始めている。

例えばドイツ大手ディスカウントストアのアルディは、有機栽培生産者団体「ナトゥ―ルランドNaturland」の食品を23年上半期より販売する予定だ。

このパートナーシップは、「包括的なオーガニック製品をさらに発展させるための重要なステップ。今回の提携は、消費者の買い控えを補う新たな販売チャネルを提供するもの」と同社広報担当者は述べている。

アルディ競合のドイツ大手リドルは、すでに2018年11月から有機栽培者団体「ビオランドBioland」と協業し、オーガニックのリンゴやハーブなどを販売し始めた。

当時、生産者組合がディスカウントストアと提携することは考えられないとされていた。そしてリドルと同団体とのパートナーシップは業界に大きな波紋を広げた。競争力のある価格で顧客の支持を得るのは、ディスカウント業者が最適のようだ。双方にとってウィンウィンな関係になるからだ。

コロナが大流行した時期のように、スーパーマーケットや専門店で特別な高品質の食品を探すのではなく、現在では「価格」という一点に焦点が当てられている。

オーガニックのトレンドは、今のところ明らかにディスカウ ト部門に移行している。だが、有機農業の不確実性は高いままで、製品分野によって見通しは異なっている。

「2030年までに有機栽培面積のシェアを30%にする」というドイツ連邦政府の目標は、実現できるのか注目したい。

参考記事

フランクフルターアルゲマイネ紙

ドイツ連邦統計局

t-online 他