「今年の冬はトルコのリビエラ5つ星ホテルで22日間過ごしてみませんか?宿泊費600ユーロでオールインクルーシブです」
格安で快適な旅を提供するドイツ大手旅行会社広告の一例だ。
暗くて寒い冬のドイツを脱出して温暖な地にする長期滞在するシニア層は過去にも絶えなかった。だが今シーズンは、これまで国外で越冬したことのない人達も真剣に海外脱出を考えるようになった。暖房費や物価の高騰を考えれば、思い切って出かける価値はあるかもしれない。
旅行費用は自宅の暖房費節約で回収できる?
「価格高騰に直面するガス輸入業者を支援するため、消費者は期間限定でより多くの料金を支払うことになる。ガス料金の負担は一世帯当たり数百ユーロになると考えている。4人家族で年間2万キロワット時を消費する場合、最大1,000ユーロの追加費用が見込まれる」
ロベルト・ハーベック連邦経済大臣は昨年7月末、こう声明した。
賦課金導入の理由は言うまでもなくロシアによるウクライナ侵略の影響を受けて、エネルギー価格や物価の高騰に拍車がかかったからだ。エネルギー輸入業者は高いコストで市場から購入しなければならず、企業の財務的負担が増えた。それをカバーするために、輸入業者は高い価格を顧客に転嫁する羽目になった。
そんな重苦しいニュースが出回り、だったら今冬は「自宅の暖房費を節約し、温暖な地に長期滞在」というアイデアが注目を集めるようになった。
だが本当に暖房費節約で旅費を回収できるのだろうか?
オールインクルーシブで1日30ユーロ以下
「暖房費に使うお金で旅行を」(Reisen statt Heizen)というモットーのもと、多くの旅行会社がすでに長期滞在越冬プログラムを強化している。今冬のターゲットは、シニア層だけでなくフリーランス、さらにはホテルやホリデークラブからデジタルでワ―ケーション可能なホームオフィス勤務者だという。
いわゆる「エネルギー休暇」と呼ばれる寒さをしのぐ旅先は、世界を対象としたオファーが溢れている。なかでもドイツ人に人気なのはトルコやギリシャだそう。
ドイツ大手旅行会社FTIでは、トルコで1月から3月までのロングステイオプションを提供中だ。なかには1日30ユーロ以下で過ごせるオールインクルーシブもあり、時間を調整して行きたい気分になる。
またギリシャも四季を通して人気の旅先だ。蒼い空、太陽、そして魚介類も豊富で温暖な気候を求めて、冬の間は長期滞在する年金生活者も多い。クレタ島だけでもドイツのディスカウンターショップ「リドル」が10店以上もあり、ドイツ人医師もいるという。
ただし寒い時期には様々な行楽施設が閉鎖されるため、ギリシャの島々のホテルで冬を過ごすのは夏ほど魅力的ではないという声もあがっている。一方で静寂と物価安、温暖な気候だけあれば充分という客には問題ないようだ。ドイツからのチャーター便は3月まで再開されないので、ロングステイ滞在者はこれらの点を留意すべきとFTIは忠告している。
チュニジアは、1月から3か月間のプログラムでオールインクルーシブ(ホテル、飛行機代込み)1,800ユーロと破格キャンペーンを提供(FTI)。また1日25ユーロで生活できるうえ、空港送迎やランドリーサービス、背中のマッサージとフェイシャルトリートメントも含まれるロングステイも売り出している。
海外越冬で暖房費節約はできる、それとも妄想?
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海外越冬で暖房費節約は妄想?
©ReinerSturm_pixelio.de
「温暖な地で冬を過ごす」・・・ドイツ年金生活者にとって、何も珍しいことではない。しかしエネルギー危機を脱するために、生活環境が許せば、もっと多くのドイツ人が国外脱出を試みるだろう。
ドイツ消費者センターによると、持ち家や賃貸などにより異なるが、年間暖房費の約7割が冬に発生するそうだ。そこで冬は海外脱出したほうが安上がりなのではと考えるのは当然だろう。
ところが不在中も暖房を完全に切る訳にはいかないという。特に断熱性の低い60年~70年代築の建物は、冷たい外気の影響を受けやすく、室内の壁にカビが発生しやすいそうだ。ということは不在中も暖房費はゼロにならない。
暖房を弱めることで節約できる可能性はあるものの、現時点では節約効果を正確に数値化することができない。おそらく暖房がいらなくなる今春以降に詳細が判明するだろう。
さらに賃貸の場合、不在中も家賃や光熱費等を引き続き支払わねばならない。長期旅行者は、健康保護も念頭に置く必要がある。EU圏内では、国民は法定健康保険で一定程度カバーされている。ただし、欧州以外の国には適用されていない。通常8週間を超える期間の健康保険は高額になりがちだ。
暖房費を節約した分、海外滞在の資金にするという「エネルギー休暇」と理解すると、この計算はうまくいかないようだ。もちろん、旅行者が滞在中にドイツの自宅を貸し出すこともできる。とはいえ賃貸アパートの場合は、家主の同意が必要だ。さらに家賃として得たお金には税金がかかるので注意したい。
越冬のスタイルは一か所ロングステイだけではない。例えば豪華クルーズ船の需要も増加傾向だ。コロナ禍を経て、この冬は数十隻の船が世界一周クルーズに出かける予定だ。少なくともその間、暖房費は含まれている。
ドイツ自治体公益事業者は、末端顧客向けのガスと電気の料金が恒久的に2倍になると予想している。地球温暖化の影響もあり、将来的に暖冬を迎える可能性もあるとはいえ、値上げのつけはやはり消費者に回ってくる。
とどのつまり快適な冬を過ごす術は、費用をどう捻出するかにかかっているようだ。