コロナ禍の合間を縫って、取材旅行に出かけました。日本ではあまり知られていない観光王道ルートから少し離れたマイン川の真珠と称される木組みの家並みが美しい街ミルテンベルクを訪問。ドイツの空の玄関フランクフルトから電車を乗り継いで1時間半ほどでアクセスできます。今回はミルテンベルクを拠点にして周辺の美食巡りを、そして次回は城や廃墟巡りをお伝えします。画像をたっぷり挿入しました。旅の気分を味わっていただければ嬉しいです。(画像はすべて筆者撮影)

マイン河畔に佇む木組みの街ミルテンベルク

バイエルン州北西部に位置するミルテンベルクは、マイン河畔に佇む木組みの家並みが美しい街。マイン川左岸に旧市街が広がる温暖な地です。今年7月中旬の豪雨による河川洪水被害はありませんでしたが、かつては旧市街も浸水した苦い経験を持っています。

市内のおすすめ観光スポットは、小高い丘に建つミルテングブルク城と博物館、歴史的旧市街、国内で最も美しい広場の一つと言われるマルクト広場(シュナッター・ロッホ)、ドイツで最古のホテルと言われる「ツム・リ―ゼン」、マイン川沿線の散策とバラエティー豊かです。

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旧市街マルクト広場にて

なかでも旧市街に連なる木組みの家並みは壮観。まさに日本人観光客がドイツをイメージする景観です。色鮮やかな木組みの家を各地で取材した私もコロナ禍でしばらく外出できなかったためでしょうか、凝った木組みの建物の美しさに圧倒されました。

ハウプト(中央)通りの中ほどにある目を惹く美しい建物は、ホテル兼レストラン「ガストハウス・ツム・リ―ゼン」。12世紀半ばに営業を始めたドイツ最古のホテルだと言われています。神聖ローマ帝国皇帝や、多くの著名人がここに泊まったと言われ、現在の建物は1590年に建てられたルネッサンス様式となっています。

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ミルテンベルクのシンボル・歴史的建造物「ツム・リ―ゼン」

1階のビアレストランで、昼食をとりました。レストランは次に紹介するビール醸造所ファウストの経営で、美味しい地ビールと郷土料理が人気です。

地ビールファウスト醸造所を訪ねて

ハウプト通りに面する二重塔の聖ヤコブ教会から、木組みの家々が並ぶ細い路地を2分ほど歩くと、醸造家一族ファウストが製造しているビール醸造所に到着。ミルテンベルクで最も古い歴史的な地区ブラッククォーター(Schwarzviertel)にあります。

ちなみにこのブラッククォーターとは、冬の間、太陽の光がほとんど届かないことから名づけられたそうです。同醸造所南側のグラィンベルク山が冬になると太陽の光を遮ってしまい、シュヴェルトフェガー門とマルクト広場の間(約650m)のエリアは、地面にほとんど太陽光が届かないそう。

ファウストの歴史は17世紀中頃までさかのぼり、2020年から4代目のヨハネス・ファウスト氏が運営しています。コロナ禍で昨年からレストラン営業中止やイベントがなくなり、いかがでしたかと問うと、案の定「売上の減少は避けられなかった」と言います。

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クラフトビールを試飲。大好きな黒ビールを最初にいただきました

ここではピルスナーやシュヴァルツなど約20種類のビールを醸造販売しています。ガイドさんに導かれて醸造用の釜や発酵釜を見学した後の楽しみは試飲です。発酵室の前にあるバルコニーに出てミルテンベルクの街並みを眺めながらビールを味わいました。

パン王国ドイツのソムリエに会う

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ドイツのパン文化は国内無形文化財に登録されているのをご存知でしょうか。毎日3000種以上のパンが焼かれているそうです。

ファウスト醸造所からハウプト通りを東へ150mほど歩くとマイヤーパン屋本店に着きました。ここのオーナーのフォルカー・マイヤー氏はマイスターとしてパン屋を営む傍ら、パンのソムリエとして活躍中です。

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パンソムリエのマイヤー氏

同マイスターの自慢は、フランケンランドブロート。「パン生地を72時間かけて発酵する手間暇かけたパンです。発酵時間を長くすることで、もっちりとした風味のある出来上がりになります。しかも噛みごたえは抜群です」と教えてくれました。マイスターは、「自分の要求を満たすためにパンがどうあるべきか」を説明してくれました。

パンのソムリエトレーニングコースは2015年から開始された比較的新しいコースです。ヴァインハイム(ハイデルベルクの北約18㎞)に本部を構える連邦アカデミーが同コースを開設しました。受講期間は約1年でパンの歴史、文化宗教や芸術におけるパン、栄養などあらゆる分野を学びます。最終試験は筆記、口頭、実技があり、受講者の4分の1は途中で挫折してしまうとか。マイヤー氏は同アカデミー1期生。現在は同校で講師として後継者の育成にあたっているそうです。

リューデナウの白い犬とライムの犬?「セント・キリアン ディスティラーズ」

ミルテンベルグから6㎞ほど離れたリューデナウのウィスキー蒸留所「セント・キリアン」へ向いました。 

セント・キリアン蒸留所の創立のきっかけはアイルランドから始まります。投資銀行家のアンドレアス・テュームラー氏は、ウィスキーの大ファン。美味しい一品の噂を聞くと、よく試飲に出かけていたとか。そんなある日アイルランドで樽ごと買いたいと思うほど心躍るウィスキーに出会ったそう。非売品だったこのウィスキーを何とか手に入れたい一心で、蒸留所へ3日間通い詰めて、ついに樽を譲りうけ帰独したといいます。

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国内最大級に成長した「セント・キリアン」CEOアンドレアス・テュームラー氏

その後もウィスキーへの思いは募るばかり。こうして同氏は、「好き」が高じてリューデナウの古い繊維工場を改造してセント・キリアン蒸留所をスタートしたのです。ウィスキーは蒸留してから少なくとも3年寝かせることで初めて商品として販売できるそうで、同社は2019年よりウィスキーを名乗ることができるようになりました。

蒸留所内見学ツワーではホワイト・ドッグやライム・ドッグのようなフルーティーなスピリッツを味わいました。新鮮な蒸溜液である「ホワイト・ドッグ」は、すでに「ウイスキー・ワールド・アワード」において、そのカテゴリーで世界最高の製品に贈られる賞を受賞しています。

フランケンワインの宝庫

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新型コロナウィルスの感染拡大が続くロックダウン中、ドイツではアルコール消費量が増えました。外食が絶たれてしまい、それなら自宅で料理をしながら美味しいワインを飲みたいという家のみが多くなったことが背景にあるようです。

ミルテンベルク周辺は、ワインの産地としても有名です。この街はクアフランケンと称されるワイン生産地「フランケン」に属し、その中心部に位置します。 

クアフランケン」は、バイエルン州ヴュルツブルクとヘッセン州フランクフルト間の中ほどに位置し、その間を蛇行するマイン川渓谷周辺に散在する21の町を対象にした地域を指します。2015年より正式にこの名称を使用するようになりました。地域のワイン醸造家の協同組合のような役割を果たしており、加盟者が協力しあってワインや地元の特産品を宣伝して活性化に努めているそうです。

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クリンゲンベルクのブドウ畑とマイン川を眺めながらアニヤさん自慢のワインを試飲

昨年30周年を迎えたクアフランケンの赤ワイン遊歩道(全行程80㎞弱)を散策中、日本へも出荷しているというビオワイナリー・シュトリツィンガー運営者アニヤさんが出迎えてくれました。同ワイナリーのブドウ畑はミルテンベルクからマイン川に沿って北ヘ約13㎞の隣町クリンゲンベルクにあります。

ワイナリー創業から40年ほどと、歴史は浅いものの、シュトリツィンガーワインは地元クリンゲンベルクのホープとして話題をさらっています。国際ビオワイン賞2021年では、2019年リースリングトロッケンと2018年リースリングピュアが金賞を、2019年ポルトギーザーと2019年リースリングゼクトが銀賞受賞の快挙を遂げました。

ミシュランも称賛するグルメレストラン

ミルテンベルクから北ヘ約6㎞、グロースホイバッハのガストハウス・ツァ・クローネ(Gasthaus zur Krone )で「ここはミシュラン星レストラン?」と思うほど感激の料理を満喫しました。

ホテルにレストラン併設のクローネは、1969年にレステル家が開店。現在は、2代目ラルフさんと妻ニッキーさんが初代から受け継ぎ、レストランに注力して大成功を収めています。

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キッチンにて。ニッキーさんとラルフ・レステル夫妻

食後、ご夫妻に伺ったところ、なんとクローネはグルメガイド「ミシュラン」によるビブグルマンを獲得しているというのです。ファーストクラスの料理に納得しました。ビブグルマン評価は、手の届きやすい価格で高品質な料理を提供し、一定の選考基準を満たしているお店に与えられるマーク。同レストランのメインディッシュは20ユーロから30ユーロとお手頃です。

「ミシュラン星にはこだわりません。お客さんから美味しいと評価をいただくのが、一番の誇りです」とラルフ氏。ちなみにニッキーさんはワインソムリエとしても活躍中。料理とワインのペアリングも抜群でした。

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上から前菜ツナのマリネ、メインは仔牛の頬肉とポテト、デザートはテラミス、アイス、フルーツ

欧州では海外旅行も少しづつ規制緩和されていますが、今後コロナ禍はどう展開するのか先が読めません。夏休みもほぼ終わり、コロナウィルス感染者も再び増加中のこの頃です。いつか日本からドイツ訪問が可能になったら、ミルテンベルクを中心に周辺の魅力あるスポットを巡ってみるのはいかがでしょうか。