まもなく4月。日本では入社式を楽しみにしている新社会人が多いかと思います。大学や高校を卒業して社会に出る新卒者にとって、4月1日は特別な日でしょう。
コロナ禍で人々の価値観が変容しましたが、労働に対する仕事の報酬は一つの物差しにもなります。初任給ならなおさらのこと、所得を得る期待感も高まるかと思います。
そこで今回はドイツの年収ラインキングを探ってみました。今さら言うまでもありませんが、2020年はコロナパンデミックで失職者や時短勤務者が増えたことから、例年とは様子が違います。それでも調べていくと職業別、州別、旧東西ドイツの違いなど、面白い背景が見えてきました。
年収中央値は560万円 医師は2551万円
「キャリアと報酬」の専門サイトGehalt.de の発表した2020年の年収アトラスは、税込み、労働時間週40時間、22万件のデータをもとにフルタイム勤務者の年収を算出した結果です。地域、業界別、教育、企業規模、ポジションなどを考慮して集計しています。ここでは年収の中央値(メディアン・データの中央の値)に着目しました。
まずはドイツの年収中央値は、43,189ユーロ(1ユーロ=130円で換算・約561万円)。管理職は95,097ユーロ(1236万円)。大学や専門学校卒業者57,040ユーロ(742万円)、高等学歴なしの場合37,800ユーロ(491万円)、新入社員は37,334ユーロ(485万円)。
数字だけをみた印象では高額だと思うかもしれません。ですが、ドイツでは所得税や医療保険等の諸税を引いた手取り額は、額面(総支給金額)の6割ほどが手取りとなります。(公務員や特例を除く)。
そして居住地や勤務先の規模により差があり、年収の額面だけを比較するのは難しい点もあります。大企業では59,000ユーロ(767万円)に対し、小企業は37,100ユーロ(482万円)と大きく差もあるようですが、所得が多いから生活が豊かだとは言い切れないようです。
ベルリンやミュンヘン、ハンブルクなど大都市では家賃の高騰や高い生活レベルで出費がかさみます。娯楽施設や余暇の過ごし方は、地方より多様で充実しているのはうれしいことですが、その分支出も増えていきます。地方では、一軒家やマンションも手ごろな価格で購入できる利便性があります。
またコロナウィルスワクチン開発で注目を集める医療薬品会社や研究所の専門家の年収は高所得に急浮上しました。年収中央値は67,524ユーロ(878万円)。その他、銀行61,651ユーロ(801万円)、薬品業界60,536ユーロ(787万円)も安定した年収を得られそうです。
コロナ感染抑止対策として導入されたロックダウン(都市封鎖)中も営業可能な食料品店やドラックストアは、好調でした。年収は高額ではありませんが、それでも定収入のある点は恵まれており、従業員の年収は31,200ユーロ(406万円)。
これに対し、ロックダウンにより店舗を長期に渡り閉鎖せねばならない小売業界は、31,911ユーロ(415万円)と芳しくありません。コロナ禍以前も、通販に押されて低迷していた小売業でしたが、さらなる痛手を負ったようです。
またレストランや接客業の29,000ユーロ(377万円)や観光・ホテル業界の34,621ユーロ((450万円)は、移動の規制により旅に出ることができなくなり、依然として大きなマイナスが続いています。
前書きが長くなりましたが、職業別年収ラインキングトップ5は次の通りです。
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1.医師(勤務医・医局長と開業医) 196,251ユーロ (2551万円)
2.医師(勤務医・医長) 121,748ユーロ (1582万円)
3.販売部長・物流部長 96,868ユーロ (1259万円)
4.投資販売部長 90,661ユーロ (1179万円)
5.IT技術専門職 88,610ユーロ (1152万円)
州別年収ランキング
ドイツの連邦州は16あります。その中で首都ベルリンとハンブルクは、それぞれ単独で州としての行政権を有しています。東西ドイツの統一から30年以上過ぎたものの、旧東西の賃金格差はいまだにあるようです。下記ランキングトップ5は旧西側の州です。
14位から16位は旧東側の州が占めました。14位ブランデンブルク州35,077ユーロ(456万円)、15位ザクセン・アンハルト州34,784ユーロ(452万円)、16位メッケンブルク・フォルポメン州は33,690ユーロ(438万円)。規模の大きな企業が少ない、観光業が大きな収入源、生活者の少ない地域や年金生活者が多い地域なども低年収に繋がっているようです。
一方で、管理職の年収では州別ランキングとは少し異なります。1位はヘッセン州の100,378ユーロ((1305万円)、2位はバイエルン州98,182ユーロ((1276万円)。16位(最下位)は旧東側メクレンブルク・フォアポンメルン州76,284ユーロ(992万円)でした。
1.バーデン・ヴュルテンベルク州 46,620ユーロ (606万円)
2.ヘッセン州 46,329ユーロ (602万円)
3.ハンブルク 45,571ユーロ (592万円)
4.バイエルン州 45,124ユーロ ((587万円)
5.ノルトライン・ウェストファレン州 43,829ユーロ (570万円)
州都別年収ランキング
州都別でランキング1位のシュトゥットガルトは、メルセデスベンツやポルシェが本社を構えており、自動車産業が盛んな大都市。近郊にはエンジニアリングテクノロジー企業のボッシュ本社もあり、これらの企業は同州の経済を牽引しています。
最下位のシュウェリン(メクレンブルク・フォアポンメルン州)は、34,500ユーロ(449万円)。上位との年収の差は大きいものの、ここでも生活環境や生活レベルの違いがあり、お金があれば幸せだとは限りません。幸福とはお金で買うものでなく自分の気持ち次第だからです。
1.シュトゥットガルト(バーデン・ヴュルテンベルク州) 54,012ユーロ ((702万円)
2.ミュンヘン(バイエルン州) 53,662ユーロ(698万円)
3.デュッセルドルフ(ノルトライン・ウェストファレン州) 50,626ユーロ(658万円)
4.ウィースバーデン(ヘッセン州) 49,611ユーロ (645万円)
5.ハンブルク 45,571ユーロ (592万円)
満足という名の贅沢
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最後に今回のテーマから離れてしまいますが、少しだけ付け加えたいと思います。
お金の余裕があれば心の余裕も生まれやすいでしょう。買いたいものも買えるし、海外旅行も気軽にできます。ですが、昨年から続くコロナパンデミックで想定できないことも起こり得ることを痛感しました。そして一瞬のうちに、これまでの生活環境が崩れ去り、大切な人を失うことも目前で起こっています。とはいえ、移動規制が続いても日常生活で困ることはありません。
エピキュリアンという言葉をご存知でしょうか。大意は享楽者や快楽主義者。その語源となった古代ギリシャの哲学者エピキュロスは、生きていくうえでの快楽を追及したそうです。そしてたどり着いたのが「満足という名の贅沢」だったとか。(ニーチェの言葉より)
健康である幸せ、そして満足という名の贅沢の尊さをかみしめながら、イースターホリデー(4月1日から5日まで)を自宅で過ごしたいと思います。
ハッピーイースター Frohe Ostern!
参考文献・ドイツ連邦統計局