ここ最近、80歳や90歳のインフルエンサーと聞いても驚かなくなった。目を引くファッションやアクセサリーを身にまとう高齢者が精力的に活躍する姿は微笑ましい限りだ。
ドイツでもコロナロックダウン(都市封鎖)を機に話題をさらっているおばあちゃんがいる。スポーツで人気を博している81歳のエリカ・リシコさん(ノルトライン・ヴェストファーレン州ランゲンフェルド在)だ。
自宅のリビングで筋トレやダンスを楽しむ動画は、SNSを通して瞬く間に視聴者を釘付けにした。米国TV番組や海外メディアで紹介されたエリカさんは、国境を越えた人気ティックトッカー&インフルエンサーとなった。
▼グット・モーニング・アメリカで紹介されて大ブレイク
ドイツでコロナウイルス感染率がじわじわと上昇しはじめた2020年2月1日、娘シルケさんは自宅のリビングでトレーニングに熱中する母エリカさんの姿を家族に見せたいとインスタグラムに投稿した。
同年3月中旬から、国内でコロナ感染抑止策としてロックダウン規制が施行され専門店やスポーツジムは閉店となった。ジム通いを日課としていたエリカさんは、自宅トレーニングを精力的に行うようになった。
そこでシルケさんは、以前から噂に聞いていたティックトック(動画共同アプリ)に母の筋トレシーンを興味本位で投稿してみた。結果は思いのほか大好調で反響に驚いた。現在フォロワーは13万人、いいねは300万に達する日もある。
エリカさんが一気に注目されるようになったのは今年1月、米国ABC放送報道番組「グット・モーニング・アメリカ(動画視聴できます)」の取材を受けてから。それ以来、ドイツメディアの取材も後を絶たない。トルコ、フランスでも報道され、瞬く間に「81歳のインフルエンサー」としてブレイクした。
「動画投稿の反応(コメントやフォロワー数)を確認するのも大きな楽しみ。若者からも感想をもらえるなんて思いもしなかった」と、喜びと驚きをかみしめているエリカさんだ。
写真や動画公開には関わりたくないと渋っていた夫ディーターさん(81歳)も妻に感化され、一緒に踊ったりトレーニングをするようになった。
「自宅には3キロのバーベルがあるわ。でもスポーツ器具は必要ないんです。どこに住んでいても床はあるでしょう。その気になればどこでもできますよ。定番は筋トレですが、その日の体調と相談しながら進めています。例えば前日行ったトレーニングで筋肉痛が残っていたら、ヨガ、ピラティス、ダンスに切り替えるます。とにかく臨機応変に体を動かすことです」(エリカさん)
▼50 代から夢中になったジム通い
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「スポーツジムに通うようになったのは50代から。今の生活に感謝している」というエリカさんだが、それまでどんな人生を送ったのだろうか。
生まれ育った境遇は決して楽ではなかった。2歳の時、母を亡くした。4人の子供を抱える父子家庭となり、生活は苦しかった。
「本当に貧しかった。4人の子持ちの父に嫁ぐ女性はいなかった。養母もおらず、姉が私たちの世話をしてくれた」
夫ディーターさんとの間には2人の子供に恵まれた。子育て、そして実父の介護に追われる日々を過ごした。子供達の自立、さらに実父を亡くしてから、突然自分の時間ができたエリカさんは50代でスポーツジムへ通い始めた。アエロビクスやピラティス、筋トレなどに挑戦した。
エリカさんはロックダウン前、週に15時間ほどジムでトレーニングを重ねていた。朝食後、夫と一緒にジムへ出向く。夫は2時間後に帰宅、エリカさんはお昼までトレーニングに励む日々だった。ジムで若者たちと言葉を交わしながら、汗を流すのは本当に楽しいという。
動画で見る限り、健康そのもののエリカさんだが2003年、人口膝関節手術を受けた。そのためジョッキングや飛び跳ねることはできない。そんなこともあり、筋トレにのめりこんでいったようだ。
健康の秘訣は「禁煙、少量のアルコール、毎食料理を作る」。そして適度の運動だ。昨年3月中旬のロックダウンで体重が増えたというエリカさん。「でも自宅で定期的に筋トレをするようになって、パンデミック前の体重に戻ったわ」とほほ笑む。
「私はティックトッカーでもインフルエンサーでもなく、フィットネスジャンキー(スポーツに夢中)なのよ」と位置づけするエリカさんだ。
「子供の頃は、自分は太っていると思った。短い脚も嫌いだった。できればもっと若い時からトレーニングをすべきだった。動画撮影は週に3回ほどと決めている。筋トレは毎日でも楽しい。でも撮影を義務化すると負担になるからほどほどにしている」
▼自宅トレーニングで話題を集めたエリカさんの本音は?
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地元ランゲンフェルト市長フランク・シュナイダー氏は「エリカさんを大変誇りに思う。その気にさえなれば、何でもできる。年齢は関係ない。コロナパンデミックで気の重い日々を過ごす昨今、エリカさんのトレーニング姿は私たちに勇気を与えてくれる」と胸を張る。
「健康づくりは誰にでもできる。気持ちの持ちようでポジティブに生きられる。動画を通してスポーツに興味を持ち時間を有意義に使ってほしい。そしてパンデミックを乗り切ってほしい」とエリカさん。
「でも本音はスポーツジムに通ってトレーニングをしたい。その方がモチベーションも上がるから」という。ロックダウン解除までフィットネスジャンキーエリカさんの自宅トレーニングはしばらく続きそうだ。
参考記事 2月22日フランクフルターアルゲマイネ紙 ARDドイツ第一放送局、シュピーゲル誌他。
エリカさんの動画は、ARDドイツ第一放送局でも視聴可能です。