長期化するコロナ禍自粛生活のなか、ペットと暮らし始める人が増えている。なかでも人気者は犬だ。うそはつかないし、飼い主に忠実。犬の散歩は気分転換になる。人との接触が極端に少なくなったロックダウンのなかで、寂しさを紛らわしてくれる上、好きなだけハグもできる。
一方で、世話が面倒になり放棄するケースも増えている。居場所のなくなった犬は、まず動物保護施設(ティアハイム)で預かる。だが、スペースに限界のあるティアハイムは、「ペットは一生の友達。衝動買いは止めるように」と、警鐘を鳴らす。
2人に1人が孤独感に襲われている
コロナ禍ロックダウン中のアンケート調査によると、2人に1人が孤独や寂しさを感じていると回答した。興味深いのは、若者の方が高齢者よりも孤独感を訴えている点だ。特に25歳前後の若者は、6割以上が寂しいという。
そんな背景から、ペットを飼う人が増えているようだ。ここでは2019年比で購入者が2割増えた犬に焦点を当てて、「ペットを飼う」を考えてみたい。
1月中旬、ノルトライン・ウェストファレン州ケルン近郊ベルクハイムにあるティアハイムがSNSに投稿した写真が大きな反響を呼んだ。
「ペットはコロナ禍だけでなく、一生の友達!」このプラカードを首に吊るした犬や猫の写真は、瞬く間に耳目を集めた。
***bitte teilen*** Tiere sind Freunde fürs Leben! Unsere Bewohner haben gehört, dass es tatsächlich Leute geben soll,...
Tierheim Bergheimさんの投稿 2021年1月19日火曜日
同ティアハイム長ハイケ・ベルクマンさんは、「ペットを手放す人が急増している。まずこの施設で預かりますが、人間の都合で追いやられるペットがかわいそう」と訴えた。
欧州連合(EU)のガイドラインとして動物保護法により、ドイツは正当な理由がない限り動物の殺処分を禁止している。国内には多くの民間の動物保護団体があり、動物の福祉や権利を守り、「動物は物ではない」という考え方を持つ。
動物保護団体経営のティアハイムは、全国に約500カ所存在する。動物の保護をはじめ保育、飼い主の譲渡、動物飼育における教育活動を行っている。
ティアハイムは、動物保護団体や地元の助成金と企業の寄付、そして預かっている動物の譲渡や併設するペットペンションの収益により運営されている。
ペット通販の落とし穴
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ドイツでペットを入手する際によく利用されるのはティアハイムだ。ここで保護されている動物は、予防注射や病気の対応も完璧になされているので安心だ。
その一方で、ティアハイムには子犬が不足しているのも事実。入手したい犬種が見つからない場合もある。そこで手っ取り早く、通販を利用する人が多い。
全ての通販が違法という訳ではないが、そこには大きな落とし穴もある。欧州におけるペット通販は、麻薬と武器に続く大きな収入源だと報告されている。重要があれば供給するビジネスは繁盛する。 欧州市場に向けて商業ベースの動物交配・繁殖を行うブリーダーは、東欧に多数存在する。
2020年1月から10月の統計では、東欧からの輸送トラックを国境で検問中、80車から800匹のペットが病気や偽造書類の違法で摘発されたという。水もエサも与えないまま長時間トラックに閉じこまれた犬や猫は狭いケージに閉じこまれていた。特に目立ったのは生後間もない子犬だった。これは氷山の一角で違法搬送の正確な数字は判明していない。
ティアハイム・ベルクハイムを取材した報道番組のレポーターは、東欧スロバキアに拠点を置くペット通販サイトに問い合わせをした。それによると、同サイト経営者は「犬の親はここにはいない(つまり出生元は不明)。生後9週間で自社へ搬送されてくるので決して違法ではない」と、強調した。
ちなみに動物保護法により、子犬は生後8週過ぎないと母犬から引き離すことはできない。また生後15週間以下の犬の輸入は禁止されている。そして売買には狂犬病予防接種証明書の提示も求められる。
時間もお金もかかる犬と付き合うには
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犬を飼えば、時間だけでなく費用も高くつく。
犬税(年間100ユーロほど・1万2千6百円))をはじめ、エサやおやつなどの年間費用は、犬種によるが、750ユーロから1200ユーロほど(約9万5千円~15万円)。さらに、予防注射や予期せぬ病気・ケガの治療費もかさむ。休暇や出張中に預ける動物ペンション料も考えねばならない。犬を飼うには多くの責任を伴い、それ相当の心構えも必要だ。
まずは賃貸犬で散歩に行く手もある。あるいは友人のペットを休暇中に預かり、本当に自分で飼うことができるのか体験してみるのもいいだろう。
コロナ禍の現在、すぐティアハイムへ足を運ぶことは難しいが、事前予約をして出かけることも可能だ。以前、取材したハイデルベルク・ティアハイム施設長デジレ・シュティアさんは、こう語っていた。
「里親になりたい人達は何度も施設を訪問し、気の合いそうな動物をゆっくり探します。動物が好きだからというだけでは譲渡できません。例えば犬の飼い主になりたければ、住居環境や保護者の家族構成、勤務時間など質問に答える必要があります。施設として動物を譲渡すればそれで終わりというわけではなく、新環境の中で動物が大切に育っているのか、その後のフォローもしています」
ドイツ政府はコロナ感染抑止の強化対策としてロックダウンを2月14日まで延長し、企業の在宅勤務も増やすよう要請した。ホームオフィスはしばらく続きそうだ。
最後に前出ベルクハイム・ティアハイム長ハイケさんの切実な思いをお伝えしたい。
「ロックダウン中、これからペットを飼いたいと思っている人に向けてキャンペーン写真を投稿しました。目的は、これ以上不幸なペットを増やしたくないからです。飼うなら、コロナ禍だけでなく、10年以上付き合う覚悟をしてください」
変更後:ドイツは正当な理由がない限り動物の殺処分を禁止している