今も昔と変わらず愛され続けているオーストラリア各州を代表する老舗ブランドのビールたち。製造中止となってしまったものもあるとはいえ、100年以上経った今も作り続けられているものも多く、昔と変わらぬ味を楽しめる。

とはいえ、オーストラリアで昔から愛されてきたビールは、そのほとんどが外国資本に買収されてしまっているのが現状で、今となっては純粋に『オーストラリアのビール会社』だと言える銘柄は、もう数えるほどしかなくなってしまった。豪老舗ビールがどんどん外資系になってしまうのは寂しいが、それが日本の企業であるために、日本人としては少々複雑な心境に陥ってしまうところでもある...

この辺の複雑な豪ビール業界事情は、後半でお読みいただくとして、まずは、ブランド創業100年を超え、今も現役の州代表ビールを一挙ご紹介!

ニューサウスウェールズ州

Tooheys トゥーイーズ
スタイル:ラガー(Tooheys New)

1860年代にメルボルンからシドニーへ移住したトゥーイーズ兄弟が、1869年にビール醸造を開始、1875年 サリーヒルズにて本格的に商業生産を開始した老舗ビール・ブランド。現在の主力商品である銘柄「Tooheys New(トゥーイーズ・ニュー)」は、1931年に開発、商業展開を開始し、今に至る。

ビクトリア州

Victoria Bitter ビクトリア・ビター
スタイル:ラガー

1851年にジーロングでビール醸造を開始し、1854年にメルボルンへ拠点を移して創業した老舗ビール・ブランド。オーストラリアで最も売れているビールのひとつ。

ビクトリア州には、この他に、1904 年創業のMelbourne Bitter(メルボルン・ビター)、 1864 年創業のCarlton Draught(カールトン・ドラフト)もある。また、国内生産を停止していた1888年生まれのFoster(フォスター)が、地元の熱望により、2020年にメルボルンで復活生産されることになった。

クイーンズランド州

XXXX フォー・エックス 
スタイル:ラガー

1878年にメルボルンからブリスベンへ移住してビールの醸造を開始、4つの「X」で「フォー・エックス」という風変わりな名前は、1893年にビールの格付けである「X」を4つ獲得したことに由来。1924年に「XXXX」という銘柄で販売を開始した。

タスマニア州

唯一の島州であるタスマニアは、島内でさらに分かれており、北部の地元ビールは「ジェームス・ボアグス」、南部は「カスケード」となる。

James Boag ジェームス・ボアグス 
スタイル:ラガー

Cascade カスケード
スタイル:もともとはラガーがメイン

「ジェームス・ボアグス」は、1883年にスコットランドからの移民であったジェームス・ボアグスが創業、北部の町ローンセストンが本拠地だ。

「カスケード」は、州都ホバートにあるオーストラリア国内最古のビール醸造所。創業した1824年から今日まで変わらずに営業を続けている。昔のままの歴史的な建物は、州の遺産として観光名所にもなっている。

南オーストラリア州

Coopers クーパーズ
スタイル:エール

1862年創業。今年でちょうど創業160年を迎え、オーストラリア資本のビール醸造会社としては国内最大。一番人気の「オリジナル・ペールエール」は国内だけでなく、海外にもファンが多い。まさに州のアイコン的存在としてアデレード空港にも「クーパーズ・エールハウス」という名のバーがあり、州を離れる最後の瞬間まで、本場のクーパーズ生で一杯やる人たちであふれている。

南オーストラリア州には、この他に、1888 年創業のSouthwark(サウスワーク)、1859 年創業のWest End(ウェストエンド)というブランドも健在だ。

西オーストラリア州

Swan スワン 
スタイル:ラガー

1857年にパースで創業。「スワン」という銘柄は、側を流れる川に生息する黒鳥(ブラック・スワン)からとられたもので、ロゴマークにも黒鳥の姿が描かれている。「スワン」は、西オーストラリア州代表ビールとして現在も販売されているものの、実際に製造しているのは州外の醸造所となっている。その一方で、1879年に建造された旧スワン醸造所跡一帯は、州の歴史遺産として登録、保存されている。

西オーストラリア州には、この他に、1837 年創業のEmu(エミュー)というブランドもあるが、こちらも現在は州外で生産されているのが現状だ。

ノーザンテリトリー準州

NT Draught エヌティー・ドラフト(2015年に製造中止)

1951年に「ダーウィン醸造所」として創業した比較的新しいブランドであったが、それまでこの地区を代表するビールがなかったことから、アイコン的存在として確立。翌年、「カールトン&ユナイテッド・ベバレッジ」に吸収され、同社が2015年5月に製造中止を発表、ブランドは消滅した。

次のページ:ほとんどの老舗ビール・メーカーが、日本の大手ビール企業の傘下となってしまったオーストラリアの複雑なビール業界事情と、オーストラリア・ビールの最新トレンドについて。>>

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複雑なオーストラリアのビール業界

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XXXX(フォー・エックス)の醸造所内にあるパブ・レストラン。工場直のできたて生ビールは最高!(筆者撮影)

前ページで各州を代表するビールを1種ずつ(タスマニアのみ南北各1種=2種)挙げてきたが、このうち、純粋にオーストラリア資本なのは、南オーストラリア州のクーパーズとタスマニア州のカスケードだけとなってしまった。驚くことに、この2社を除くその他すべての州代表ビールが、日本の企業に買収されてしまっているのが現状だ。

トゥーイーズ、フォー・エックス、ジェームス・ボアグス、スワンはもとより、次点として挙げたサウスワーク、ウェストエンド、エミューもすべて、キリン・ホールディングスが100%出資する子会社「ライオン」の傘下ブランドとなっている。

1998年から豪最大手のビール醸造メーカーであった「ライオン・ネイサン」に出資してきたキリン・ホールディングスは、2009年10月に全株を取得し、ライオン・オーストラリアとしてビール部門では豪国内最大企業だ。

また、消滅してしまったノーザンテリトリーの1ブランドを含む、残りのビクトリア州の3ブランドは、2019年にアサヒグループ・ホールディングスが、製造会社である「カールトン&ユナイテッド・ベバレッジ」を買収し、アサヒ傘下となった。(参照

オーストラリア・ビール界の最新トレンド

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ブリュワリー(醸造所)で提供している何種類かのビールをテイスティングできるお試しセットは、自分の好みのビールを見つけるのにぴったりだ。(Credit:Andrew Coleman-iStock)

オーストラリアでは、もともと「スタビー」と呼ばれる350ml前後の小瓶タイプが主流で、栓を抜いてそのまま口飲みするスタイルだったが、最近は輸送や安全面などを考慮してか、アルミ缶タイプが増えてきている。

また、おいしいビールを追求するオージーのビール好きはとどまることを知らず、近年、小規模でクラフト・ビールを製造するマイクロ・ブリュワリー(醸造所)がそこかしこにできており、どこも地元で大人気だ。

地元愛にあふれた歴史あるビールに加え、最近増えているマイクロ・ブリュワリーが切磋琢磨しながら造るクラフト・ビールを飲み比べながら、お気に入りを探す『ビール放浪』の旅が、オーストラリアの新たな楽しみ方のひとつになりそうだ。〈了〉

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