オーストラリアには、奇妙な生き物がたくさん生息している。哺乳類や爬虫類、鳥類も相当変わったヤツがいっぱいいるが、昆虫類も負けてはいない。猛毒を持つ蜘蛛も多いが、私たち人間にとって最も身近な昆虫のひとつでもある「アリ(蟻)」の中にも毒を持つものがいるから、油断ならない。
日本に生息しているアリは、295種とされているが、オーストラリアには、1,275種ものアリが生息しているのだから、種類の多さは歴然。(参照1, 2)
そのなかには、あのギネス・ブックが「世界で最も危険なアリ」として認定した凶暴な殺人アリが潜んでいる。
その名は、『ブルドッグアリ』。

英語でもそのまま「ブルドッグアント」と言い、地元の人たちは「ブルアント」、「ジャンピングアント」、「ジャックジャンパー」などとも呼ぶ。(※厳密には、生息域や大きさで異なるらしい)
先日、自宅の裏庭でその「世界で最も危険なアリ」、ブルドッグアリに不意を突かれてやられてしまった...。死者が出たこともあるというこのアリの、人体への影響はどれほどなのか・・・身をもって体験した殺人アリの生態に迫る!
一瞬にして指先から頭へ突き抜ける激痛が襲う
事件は、ガーデニング中に起きた。裏庭の草取りをしていた時、突然、指先に激痛が走った。その痛みは、指から一気に脳天を突き抜けるような鋭い痛みで、ウッと声にならないような唸り声をあげ、思わず尻もちをついてしまったほどだ。
アイツにやられた!
すぐにその姿が頭の片隅をよぎった。・・・ブルアント(ブルドッグアリ)・・・これまでも何度か家族がやられたことがあったのだ。

すぐにガーデニング用手袋を外して、急いで庭にある水道へ走り、右手の指先全体を流水でジャージャーと勢いよく洗い流した。その後、家の中へ戻って、応急処置。対処が早かったおかげか、噛みつかれた箇所が後になって痒くなっただけで、大事に至らずに済んだが、1ヶ月以上経った今もまだ噛み跡が残っている。
今回、着用していたガーデニング用手袋は、手のひら側はゴム製になっていて、トゲなどが容易に刺さらないようになった作りのものだったが、手の甲側は布生地になっていたため、ゴムと布の境目を狙ってやられたようだ。
凶暴なキバハリアリ界の頂点に立つ、世界で最も危険なアリ

ギネス・ブックが「世界で最も危険なアリ」に認定した『ブルドッグアリ』は、大きな顎に鋭利な牙とお尻に毒のある針を備えたキバハリアリ属というアリの仲間だ。キバハリアリ属は、世界で90種ほど確認されているそうだが、ニューカレドニアの1種を除く、残りすべてがオーストラリアに生息している。(参照)
オーストラリアのキバハリアリ属は、隔絶された大陸で生き残った原始的なグループのアリだ。どれも攻撃的な性格だが、『ブルドッグアリ』は、最も凶暴かつ攻撃的で、その頂点に君臨する。体の大きさは約3センチにも達し、アリとしては世界最大級だ。(参照)
キバハリアリ | NHK for School オーストラリアにいるキバハリアリがセミを捕る様子を見る映像です。 https://t.co/LlxDA0PxX9
-- Miki Hirano (@mikihirano) February 18, 2022
強力な刺傷力を持つことで知られ、昆虫の世界では最も有毒な毒のいくつかを持ち、噛まれて毒を注入された場合、深刻なアレルギー反応を引き起こして、死に至ることもあるというから恐ろしい。
記録によると、ブルドッグアリの攻撃で死亡した例は、1936年以降、少なくとも3人。最も新しい死者の記録は、1988年にビクトリア州の農場主が亡くなったケースだそうだ。
ブルドッグアリは、ジャンピングアントやジャックジャンパーとも呼ばれているが、和名では「トビキバハリアリ」とも言われるほど、跳躍力に優れ、かなり遠くまで飛ぶことができる。そのため、どこからともなくいきなり飛んでくることがある。突然、目の前に現れてやられることも少なくない。
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ブルドックアリにやられた時の応急処置

もし、ブルドッグアリをはじめとする、キバハリアリにやられたら、すぐに振り払うこと。そしてまずは、流水で勢いよく患部を洗い流し、5分以上経っても体調に変化がみられなければ、そのまましばらく冷やした後、石鹸を使って患部とその周辺をきれいに洗ってから消毒し、氷などで冷やし続けるといい。すぐにこれらを行うことで、痛みや痒みを長引かせずに済む。
ただし、攻撃を受けた直後に、患部が真っ赤に腫れたり、気分が悪くなる、または、頭が痛くなるなどの体調の変化を感じたり、アレルギー反応が起きた場合は、すぐに病院へ。
オーストラリアには、かわいい動物も多いが、危険な生き物も多い。そこにどんな生き物が生息しているかを予め知っておけば、慌てずに対処できるはずだ。知っているのと知らないのでは、生死を分けることもあるかもしれない。これはマジで...
我が家の裏庭にブルドッグアリが生息していることはわかっていたので、比較的落ち着いて対処でき、一瞬、噛みつかれただけで毒針を注入されずに済んだが、あの猛烈な痛みは二度と経験したくないと、つくづく思う。
でも我が家では駆除しないことに決めている。彼らもここの住人(人ではないが)なのだから。自然との共存は苦労もあるが、楽しいことのほうが多いから、たまに痛い目に遭ってもくじけないのが肝心なのだ(笑)。〈了〉