先日発表された英エコノミスト誌の「世界で最も住みやすい都市」で、前回2019年度*の10位から一気にランクを上げ、3位に躍り出た「アデレード」。南オーストラリア州の州都として発展し続けているオーストラリア第5の都市だ。

過去に7年連続で首位に選ばれていたメルボルン(今回8位)を引き離し、ランクインしたオーストラリアの都市の中では最高ランクとなった。(*2020年は発表中止)(参照

実は、こうした世界ランキングが発表される前に、豪国内では既に、「最も住みやすい街」として注目されてきた都市でもある。

2020年11月発表のグローバル・マーケティング・リサーチ会社 Ipsos の調査で、アデレード中心部(以下、アデレードと記載)及びアデレード・ヒルズが、「オーストラリア国内で最も住みやすい都市圏/地区」に選ばれていたほどだ。(参照

この調査で、アデレードは、安全性、住宅価格、医療サービスなど、住みやすさを決定する16の要素すべてにおいて、平均を上回った唯一の大都市であった。

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1900年代に造られたアデレード随一の繁華街「ランドル・モール」には、昔のままの建物が並び、英国統治下の面影を残している。右下/現在は様々なショップが並ぶ美しい「アデレード・アーケード」の内部。(2021年3月 筆者撮影)

南オーストラリア州は、身近な環境問題に対して、長い年月をかけて取り組んできており、なかでも州都アデレードは、官民が一体となって、持続可能な都市づくりを前面に打ち出している都市でもある。(参照

こうした取り組みが、「住みやすさ」に繋がっているのだろうか?

今、「住みやすさ」で注目されつつあるアデレードの「持続可能な都市づくり」のヒントとは?

「持続可能で住みやすい社会」を目指す際に、欠かせないエネルギーやゴミ、自然環境問題などから、よく目標としてあげられる具体的な4つの項目で、アデレードという街をみていこうと思う。

1.再生可能エネルギーと脱炭素(二酸化炭素排出実質ゼロ)

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アデレード大学構内の「グッドマン・クレセント」。奥に見える建物「エルダー・ホール」ではコンサート等も開かれる。中心部北側の「ノース・テラス」は大学や美術館などが集まる文化ハブとなっている。(2021年3月 筆者撮影)

アデレード・シティ・カウンシル(自治体)が管轄する地区の電力は、2020年7月1日から100%再生可能エネルギーによって賄われている。(参照

また、2025年までに完全な脱炭素社会を目指していることから、目標を達成するために、電力ソースを現在の風力と太陽光に加え、廃水処理プラントから出るメタン=バイオガスによる発電の可能性を調査中だという。(参照

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左/テイクアウト用のカトラリーは環境還元可能な木製に。右上/サスティナブル(持続可能)な暮らしと環境保全に関心のある人々のコミュニティハブ「The Joinery」の駐車場にはEVステーションが設置されている。右下/人力車で市内を巡るツアー「エコキャディ」。(2021年3月 筆者撮影)

こうした動きに合わせた脱炭素社会へ向けた取り組みの一貫として、市内中心部には、市民が専用アプリで手軽に利用できる電気スクーターが配備されている。また、市内を巡る「エコキャディ」と呼ばれる人力トライシクルも観光客に人気だ。

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専用アプリでロック(鍵)解除をし、18歳以上ならだれでも利用できる電動スクーター「Escooters」は、市内のあちこちにステーションがある。(2021年3月 筆者撮影)

市内中心部の駐車スペースには、排気ガス削減を視野に電気自動車への切替えたカー・オーナーのために、最大1時間まで無料(*)で給電できるEVステーションが設置されている。 (*)=場所などの条件によって異なるため、詳細は公式サイトで確認を。(参照

2.使い捨てプラスチック製品の削減

アデレードのある南オーストラリア州は、2009年から再利用できないプラスチック・バッグ(レジ袋)を禁止してきた。さらに、2020年9月9日、南オーストラリア議会は、「使い捨てプラスチック製品禁止法」を可決。豪国内でいち早く、2021年3月1日から施行した。

こうした動きを受けて、アデレード市内中心部のホテルでは、世界中の多くのホテルが採用しているプラスチック製のカード型のルームキーをリサイクル可能な自然素材のものへ変更しているところが多かった。

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左/2020年12月にオープンしたばかりのホテル「EOS by SkyCity」の無料飲料水はガラスボトル。右上/EOS by SkyCityのルームキーはリサイクルウッド製。右下/2020年11月オープンの「Crowne Plaza Adelaide」のルームキーは竹製。(2021年3月 筆者撮影)

アデレード中心部の最新5ツ星ホテル「EOS by SkyCity」では、客室に配備する飲料水もペットボトルではなく、瓶入りを採用するなど、民間が率先してプラスチック製品削減に努めている。

また、個人家庭で日常的に使う洗剤やシャンプーなど、通常、プラスチック容器で販売されていることが多い生活必需品が量り売りで買える店もあり、ゴミ削減にも一役買っているようだ。

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アデレード中央市場内でオーガニック食品を30年以上扱ってきた「セントラル・オーガニック」が運営する『プラスチック・フリー』をモットーに掲げる健康ショップ「ハウス・オブ・ヘルス」では、シャンプーやリンス、洗剤などを量り売り&詰め替え可で販売。(2021年3月 筆者撮影)


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3.各種ゴミの削減とリサイクル

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アデレード随一の繁華街「ランドル・モール」に設置された不要になった洋服やバッグ、靴などをリサイクルできるステーション。(2021年3月 筆者撮影)

南オーストラリア州政府は、2004年から『Zero Waste SA』と呼ばれる「廃棄物ゼロ」のリサイクル戦略を採用。2011年までに約80%のリサイクル率を達成、430万トンの廃棄物を埋め立てからリサイクルへと転換してきた。(参照

これは、一人当たり換算でオーストラリア国内最高のリサイクル率であり、100万トン以上の二酸化炭素が大気中に放出されるのを防いだと試算されている。また、再利用できないプラスチック・バッグ(レジ袋)を禁止してきたことで、年間約4億枚がゴミにならずに済んでいるという。

瓶や缶などのリサイクルを始め、さまざまな不用品のリサイクルにも熱心だ。アデレード一の繁華街といえる「ランドル・モール」にも、服や靴、バッグなどのリサイクル・ステーションが設置され、市民のリサイクル意識の高さをうかがわせる。

この『Zero Waste SA』の取り組みは、2010年、国連ハビタットの「Solid Waste Management in the World Cities(世界の都市における固形廃棄物管理)」で表彰された。(参照

4.都市の緑化と光害対策

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1857年にオープンした歴史ある植物園「アデレード・ボタニック・ガーデン」。昔から大切にされてきた美しい植物園は市民の誇りでもあり、年間 260万人以上が訪れる。(2021年3月 筆者撮影)

アデレードは、2003年に「グリーン・シティ」を目標に掲げ、2014年までに都市圏の300の公園や空き地などに300万本の在来種の植物を植える計画を発表。(参照

このプロジェクトによって、都市の景観だけでなく、都市部の冷却化、大気と水質の改善、温室効果ガス排出量削減。さらに、在来種の野生生物たちの生息地を作り出し、種の保全にも貢献するという、地域の生物多様性にも着目してきた。

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左/中心部南の公園にあるユーカリの大木。元牧草地などにネイティブ(在来種)の植物を植え、元々この場所にあった自然環境の回復を目指す。右上/市民の憩いの場として解放された森林公園にある、子供たちの遊び場(奥の赤い日除け)。右下/「アデレード・ボタニック・ガーデン」のシンボルともいえる「パーム・ハウス」。(2021年3月 筆者撮影)

アデレード中心部南側に隣接する土地は、その昔、ほとんどすべての木が伐採された牧草地だったというが、現在は、在来植物が並ぶ森林部分が増え、子供たちが自然の中で遊べるスペースのある公園や庭園など、公共の場となっている。

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中心部の南側には、緑の多い公園が広がり、ピクニックやサイクリングなどを楽しむ市民の姿が見られる。(2021年3月 筆者撮影)

また、アデレード大学は、緑地の増加によって都市部で問題になっている『光害』も減り、人間の健康にとっても好影響であるという研究結果を発表。(参照

この研究結果は、アデレードが「健康に暮らすための持続可能な都市」を達成するために行ってきた、グリーン・シティ計画が正しかったことを裏付ける形となった。

些細な日常のなかで、できることから始めようと、市民らが率先して、環境に配慮した持続可能な生活を意識しながら行動することで、環境にも人にも優しい都市が実現しつつあるアデレード。

2003年頃から始めてきた環境に配慮したさまざまな取り組みが着実に実を結び、多くの人にとって「住みやすい街」になってきているといえそうだ。〈了〉

Special thanks to:Tourism Australia, South Australian Tourism Commission