
この舞台、一番の特徴は、俳優のひとりが開演前に本当にお酒を数杯飲むというルール。酔った状態でセリフをこなすなんて前代未聞だが、それがこのショーの魅力でもある。セリフは飛ぶし、アドリブは止まらないし、観客もどんどん巻き込まれていく。もはや演劇というより、上質な飲み会に迷い込んだかのような感覚。
とはいえ、ふざけているだけじゃない。演技も歌もダンスも、みんな本当にうまい。酔った俳優が放つセリフがやけに刺さって、笑いながらも不意に感動させられたりする。その余韻はすぐにディルドーを手にする役者さんたちの下ネタで壊されるのだけど。
そして、ここがニューヨークだからこそ成り立つ空気感もある。男女の枠にとらわれないキャスティングや、LGBTQ前提で繰り出されるジョークの数々。それが"わざとらしさ"ではなく、自然なユーモアとして成立していて、観客もあたりまえのように笑っているのが印象的だった。客席にいるゲイの男性も堂々と手をあげて自分がゲイであることを主張し、キャストと交わる自由さと一体感が、この街らしくて最高だ。

このショー、子連れはNGで、「ロミオとジュリエット」で涙を流したい人にもおすすめできない。出演者が急にTシャツを脱ぎ出して腹筋を見せたりと、自由すぎる展開が続く。でも、その無秩序さがむしろ心地よい。
撮影OKというのもユニークで、スマホを構えて撮影していると役者さんたちが近づいてきてカメラ目線で絡んでくる。観客と舞台の境界線がどんどん曖昧になる感覚は、クセになる。

笑いたい人、日常にちょっと飽きた人、そして酔っ払いを眺めるのが好きな人は、自分も酔っぱらってキャストとの一体感を得たい人は、ぜひ一度体験してみてほしい。シェークスピアって、こんなにくだらなくて最高だったんだと、きっと新しい発見がある。ニューヨークでしか味わえない、混沌と多様性のエンタメ空間だ。
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