ご挨拶:
初めまして。ロサンゼルスで和菓子D2C「Misaky Tokyo」を立ち上げた、三木アリッサと申します。2019年11月に立ち上げ、約1年。おかげさまで世界的セレブリティのキム・カーダシアンとコラボしたり、シュレックなどを手がける映画制作会社「ドリームワークス」の本社で販売したりするなど少しずつ実績をつけてきました。
アメリカで創業するにあたり、様々なD2C起業家・消費財創業者とお話しする機会が増えました。非常に勉強になることばかりだったので、これはみなさんにシェアすべきだと考え、NewsWeek Japanさんでコラムをいただくこととなりました。どうぞよろしくお願いいたします。
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(書き手:木村美紀)
記念すべき初回は、ニューヨーク州に置く、ヘアケア・ラグジュアリーブランドにフォーカスを当てたい。2020年2月、コロナでニューヨーク州がパンデミックになる直前に創業された『Masami』。
このブランドを共同創業したのが、30年間数々の大手会社でキャリアを積んできたLynn Power (リン・パワー)だ。
これまで、ジレット・ヴィーナス(Gillette Venus)のグローバルマーケティングの立ち上げ、クリニーク (Clinique)グローバルセクション立ち上げ、ロレアス・ナチュラルマッチの立ち上げなど多くの象徴的な美容ブランドで大活躍し、世の女性・男性に「美」を提供していきた。
そんなLynnはなぜ30年間のキャリアから外れラグジュアリーブランドを創業したのか。そしてラグジュアリーブランドとしてのe-commerceやto C, toBの戦略、最後にブランドの、夢は何なのか。詳しく話を聞いてみた。
<アメリカでの海藻の常識を変えるラグジュアリーブランド『Masami』>
──『Masami』を立ち上げる以前、どのようなキャリアを歩んできましたか??
前職ではニューヨークに本社を置く旧J. Walter Thompson(現Wunderman)のCEOを勤め、『Masami』を立ちあげるまでの30年間、大手企業での広告とマーケティングを担当しました。そして、長年お客様のブランドを作ってきた私は、自分のブランドを作りこれまでのキャリアで培った全ての知識を適用したいと考え、『Masami』を立ち上げました。
── なかなかの思い切りですね。ところで『Masami』とはどういう意味でしょうか?
『Masami』の由来は、日本語で「正美」すなわち「ピュアな美しさ」です。共同創業者であるJamesのパートナーの名前からとりました。私たちのシャンプーやコンディショナーの原料であるメカブは、日本の岩手県大槌から取り寄せています。日本では海藻が健康にいいのは周知の事実で、多くの食品や美容品に海藻を使用しています。しかしアメリカでは、海藻の認知度が低く、美容品に含まれていることはほとんどありません。チャレンジングではありますが、アメリカの美容の流行を創ることができるのはないかと思いました。
── 確かにアメリカではアボカドやケールが美容食材として人気ですもんね。ちなみに、『Masami』のお客様はどなたでしょうか?
無添加や保湿などの美容効果にこだわったお客様が中心です。アメリカの市場は安くて手に入れやすい市販のシャンプーやコンディショナーがカテゴリーの主戦場です。一方『Masami』は300ml $38 (約4000円)とお手頃な価格ではありませんが、価格相当のクオリティーをお客様に提供しています。
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<起業を恐れるな。まずは実現化>
── 私自身よく聞かれるのが「起業への恐怖心がないのか?」です。リンはどう思いますか?
起業に挑戦したい女性に伝えたいのが、「You can do it(君ならできる)」です。私は30年もマーケティングや財務などキャリアアップをする道を歩み続け、社会から一般的に安定だと言われるレールから外れることができませんでした。
── ではどのようにして踏み出ることができたのでしょう?
重要なのは、実現化です。アイディア、良い商品、分析などが少しでもあればまずは実現してみる。すべての細かい詳細や起業に必要な全ての知識がなくてもまずは起業してみることが大事です。特に現代のeコマースはものすごいスピードで日々変わっているので、全ての知識を深く知ろうとしたらきりがありません。
勉強することも大切ですが、起業家にとってより重要なのは、自分より詳しい「人材」です。
── まさにその通りだと思います。『Masami』はとても良いパートナーシップを築けてるイメージなのですが、どのようにその人材を探したのでしょうか?
私は元々マーケティングという人脈がかなり広い世界で働いていたので、その人脈を活用し、仲の良い友人数人に一緒に起業しないかと声をかけました。やはり、最初からお互いの倫理や能力、そして大事なモチベーションやコミュニケーション方法などを知っているとかなり仕事がスムーズにいきます。
<2021年のラグジュアリーブランドのヒントは「経験」>
── ラグジュアリー業界のトレンドで何かユニークなことはありますか??
数年前から業界で言われていることですが、「これからのラグジュアリーブランドは物理的なモノではなく、経験が大事」です。世界には高価なモノやブランドにあふれていることから、人々はブランドとの一時的な関わりではなく経験や質を求めつつあります。また、生活や価値を支えてくれるサステナブル(環境維持)かつ健康なモノ、を消費者は求めています。モノや経験を与えられるラグジュアリーブランドは、お客様に「自分はスペシャル(特別)」だという気持ちや自然環境に貢献しているという気持ちにさせることができます。
弊社ではこの流行とうまく向き合い、オンラインでの購入から丁寧で綺麗な包装までお客様が特別な経験ができるよう心がけています。例えばシャンプーなどの商品をダンボールにただ入れるのではなく、商品をフェルトバッグに包みお客様に届けています。
── 素敵な工夫ですね。「経験」の観点ではどのような取り組みを他にしていますか?
ミートアップで、海藻の説明などをコミュニティイベントを開催しています。なぜならアメリカ人は実は海藻を詳しく知らないからです。アメリカで人気な「Sushi(寿司)」に海苔が使われいることは認知していても、海藻に種類があることや健康にいいことはあまり認知されていません。このように、SNSに投稿すること以外の方法でも私たちのブランドの世界観を発信しています。
── ちなみに今そのコミュニティには何人ほどいるんですか?
リン:今45人ほどいます。
── 盛り上がっていますね。
そうなんです。そしてそのファンの方たちもとても協力的で私たちのブランドストーリーをシェアしたりしてくれます。今はまだ小さなイベントを重ね、何がうまく行くのか試しているところですが、今後は大規模のイベントができればと思います。アリッサさんも「Misaky Tokyo』のオリジナル和菓子「Crystal Treats」をお家で作る方法をミートアップとして講義してみたらどうですか?
── 楽しそうですね。ぜひ試してみたいです。
ラグジュアリーブランドの「経験」というのは、お客様全員を日本に連れて行き温泉旅行に行く、という大規模ではなくて、海藻の実物を見て触る、くらいで十分だと思うんです。材料を知り、創業者を知り、起業の背景を知る。そして、なによりファン自信が私たちを支えていることにより幸福感を味わえば、最高だと思います。
── つまり、ファンとのコミュニケーションが大事だ、と言うことですね。
インスタグラム、ツイッター、フェイスブック、ピントレストなどにとても力を入れています。TikTokでMisaky Tokyoがとてもうまくいってるらしいので、今後娘と息子も加えて挑戦してみようと思います。
── ヘアケアプロダクトのブランドとしてとして、お客様やtoBに対してどのような戦略を取っていますか?
やはり私たちのプロダクトの良さを最もアピールできるのは、既存のサロンで実際に使用してもらうことです。現在、ロサンゼルス、サンフランシスコなどにあるサロンと提携を組んでいます。見て、匂いを楽しみ、そして髪の艶、保湿、まとまりを実感することがなによりも一番効果のある宣伝方法です。ちょうど先月、ニューヨーク州やシカゴなどの大都市にお店を置いている『DREAMDRY』という大人気サロンと提供を組み限定プロダクトを開発しました。サロンと提供を組むという手法は、サロンオリジナルヘアケアプロダクトを開発していない限りサロンには悪影響はありません。弊社のプロダクトをサロンが使い、お客様が満足しサロンをリピートする、というWin Winの関係が作れます。
また、Sample Size Social という美容のプロとインフルエンサーが扱っている美容プロダクトの店舗や高級住宅地で有名なビバリーヒルズにも弊社のプロダクトを置かせてもらっています。
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<夢は、東日本大震災の復興と質の良い美容品への理解>
── 最後に、ブランドに抱いている夢を教えてください。
一つ目の夢は「自然環境に貢献する」です。大槌は2011年に東日本大震災で津波の被害に遭い、いまだ復興中です。さらに、津波により日本の海の生態系が壊されました。そこで『Masumi』も復興に貢献したいと思い、『Masumi研究所』を立ち上げ大槌での研究をスポンサーしています。
二つ目の夢は「美容品にも無添加がなぜ大事なのかを理解してもらう」です。
アメリカの市場に出回っている90%のヘアケアプロダクトが、毒素・硫酸塩・パラベン・バラードなどの毒素が含まれています。しかし、大半のアメリカ人がシャンプーに毒素が含まれていることを知らず、消費しています。私たちはまだまだ小さなブランドですが、身体と環境に良い美容品を使うことの重要さを人々に教えていければと思います。

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文・編集:木村美紀