國井 今後は経済と公衆衛生とをバランスよく考え、新型コロナ終息に向けた対策をする必要がある。公衆衛生・医療の専門家だけでなく、ビジネス、経済などいろいろな人たちが集まって、議論と努力をすべきだ。

基本的に、アウトブレイクはうまく抑えても、抑えられなくても批判されるものだ。大流行もなくうまく抑えれば、「(介入を)やり過ぎだ」と非難され、大流行したら「何をやっている」と言われる。政策決定者もそれを助言する者も、批判されることが多いのは世界共通のようだ。

新たな病原体の出現時には分からないことばかりだ。だからこそ、専門家はある限りの知見と新たな情報の分析を通じて、独立した立場で政府にどんどん意見や提言をすべきだと私は思う。経済など別の専門家の意見や観点も踏まえて、それらを最終的に判断するのは政府だ。

さまざまな意見や考え方があることは普通で、それらを十分に議論しながら最終判断を下すことが大切だ。あとになってみないと正解は分からないので、なぜその結論になったのか、その理由や根拠をきちんと国民に説明することが重要だと思っている。情報をきちんと公開すること、判断の理由なども含めて、簡潔に分かりやすく説明すること、リスクおよびクライシスコミュニケーションの重要性が問われた時だと思う。

今後、第2波、第3波の可能性は日本にも十分ある。というより、それを想定しながら対策を準備しなければならないと思う。西浦さんはしばらく静かに研究に没頭したいと言っているが、私も「8割おじさん」がマスコミに登場しなくてもいい日が早く来ることを望んでいる。

<2020年6月9日号「検証:日本モデル」特集より>

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2020年6月9日号(6月2日発売)は「検証:日本モデル」特集。新型コロナで日本のやり方は正しかったのか? 感染症の専門家と考えるパンデミック対策。特別寄稿 西浦博・北大教授:「8割おじさん」の数理モデル
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 数理モデルは1980年代後半のHIV流行を受けて90年代に理論の現実への実装が飛躍的に発展し、2000年代以降は技術的にコンピューターも速くなり、定量性が格段に上がった。観察データと重ね合わせ、ある程度真実を捉えられるようになってきた。新型コロナウイルスについては、各国で疫学的な分析やモデルで「急所」を確実に捉えることができておらず、道筋が見えていない。だから、イギリスとスウェーデンで方針が全く違ってしまった。