是が非でも、ノエルを家族と過ごしたかったフランス人の希望が叶い、テーブルを囲むのは6人までという制限付きではありながら、ほとんどの家族がクリスマスを家族と過ごしたフランスにとって、次は、年末の年越しの時をどう過ごすのか?が、注目されていました。ノエルは、家族と過ごすフランス人も、例年ならば、年越しは友人同士が集まって、わいわい過ごすのが一般的な習慣であるからです。

昨年10月には、1日の感染者数が6万人以上の危機的状況を迎え、10月末から11月にかけての2度目のロックダウンで奇跡的に1日の感染者数は、1万人台まで減少し、ロックダウンはノエルに向けて解除され、ロックダウンの代わりに20時以降の夜間外出禁止が敷かれたものの、ロックダウン解除とともに、また、ノエルが近づくにつれて、徐々に感染者数は増加し続け、2度目のロックダウン前には、24日と31日には、夜間外出禁止が撤廃される予定になっていたものの、結局、24日の夜間外出制限は撤廃されたままでしたが、31日の夜間外出禁止の撤廃は取り消しになりました。

外出がダメなら家でパーティー

かれこれ10ヶ月以上続いているこのコロナウィルス感染による行動制限に加えて、大晦日の夜間外出制限に、フランスの若者は、大反発。夜間外出禁止がダメなら、20時までに友人の家に滑り込み、夜通しパーティーをやればいいだろ!と年越しパーティーをやる気満々でした。実際に大晦日の前の段階の世論調査でも、フランス人の25%、若者に限れば50%の人が年越しのパーティーを予定している(ODOXA/仏・大手世論調査会社の統計より)という恐ろしい現実が示されていました。ましてやノエルで少なくとも感染は悪化している状況に上乗せする状況で、さらに広範囲の人が集うタガが外れやすい若者のパーティーです。結果は想像するのも恐ろしい限りです。

夜間に外出さえしなければ良いと考えている若者は、夜20時までに友人宅に集まり、一晩中、皆で家で過ごせば良いと考えており、この日に備えて、寝袋や簡易ベッドがあっという間に完売状態、若者は、外出しない年越しのパーティーの準備をしていることが当日前から露見していました。

最近、フランスの若者の間で人気急上昇中のユーチューバー・ユーゴ HugoDécrypte(登録者数110万人)(主に若者の世論調査をインスタグラム等で取りながら、幅広いニュースを伝えている)は、そんな若者の世論調査・動向も合わせてアップロードしており、特に若い世代への影響力も大きいことから、彼のチャンネルには、マクロン大統領がゲスト出演して彼のインタビューに答えたりもしています。彼の動画の中では、この彼自身がとった若者への世論調査によって、若者の45%が31日の夜間ロックダウンに反対しており、友人同士で集まるためには、20時までに集まり、翌日6時に帰りさえすれば良いのだろうと開き直っている人が多いことを伝えていました。

https://www.youtube.com/channel/UCAcAnMF0OrCtUep3Y4M-ZPw (ユーゴのYouTubeサイト)

2度目のロックダウン解除時には1日1万人前後にまで下がっていたものの、クリスマスを前後して1日の感染者数は、2万人前後に増加し始めました。この状況を受けて、大晦日の2日前には、政府の防衛審議会が開かれたので、当然、大晦日への対策が講じられると思いきや、フランス政府は、現段階では、制限を追加する状況にはないと判断し、結局、発表された対策は、感染状況の悪化している15カ所の地域に関しては、1月2日から夜間外出制限を現行の20時から18時に変更するというものでした。これには、はっきり言って、私は、失望しました。「夜間外出制限を18時に前倒しにするにしても、それがなぜ?1月2日からなのか?問題は、大晦日の年越しの日だろ!・・」と。この日1日、いや、せめて夕方からの半日だけでも完全なロックダウンにすることで、どれだけの感染を防げたでしょうか? 

一般人の私でさえが収集できる情報でさえ、大晦日の日にフランスの多くの若者が起こすであろう行動は充分に推測できていたのに、なぜ少しでもそれを回避する手段を取らなかったのか? それを考えるとフランス政府が下した決断に、私は、腹立たしささえ感じていました。

政府のこの決断に対して、フランスの科学評議会は、この年末年始の人の集まる行事(ノエル、年越し)の後、1月には、フランスの感染状態がコントロール不可能な状態に陥ることを警告していました。

そして迎えた大晦日の日

そして、迎えた大晦日の夜には、警察官が10万人動員される厳戒態勢が敷かれることになりました。政府も決して警戒をしていなかったわけではないのです。例年は、凱旋門を中心に繰り広げられるスペクタクルや花火などのために、年越しのカウントダウンの瞬間には、人で溢れかえるシャンゼリゼなどは、取り締まりの警官だけが通りを練り歩き、街路樹の赤いイルミネーションと警察車両の青いライトだけが静かに光る異様な光景、エッフェル塔の花火も中止となっていました。

   ベルサイユ4.JPG人混みを避け、無観客で行われたベルサイユ宮殿庭園での年越しの花火  France2より 筆者撮影

しかし、パリの街中がしんと静まりかえっている分だけ、例年なら、ここを訪れているはずの人々がどれだけ家の中、屋内に集まってパーテイーをしているかと思うと、それが逆に恐ろしいほどでした。しかし、10万人の警察官を動員して警戒した大晦日の年越しもまさか、それぞれの家を巡回してチェックすることは不可能です。外から見る分には、静かになっていた大晦日も実のところは、年越しのカウントダウンを祝うことを決して諦めたわけではなく、それは、街の様子からは見えない形で、しっかりと行われていたのが現実です。

ブルターニュで行われていた2,500人超えのレイブパーティー

ところが、行われていたのは、家の中でのカウントダウンパーティーだけではありませんでした。元旦の日になって、ブルターニュ地方のレンヌ南部・リューロンでは、2,500人が集まるレイブパーティー(ダンス音楽を一番中流すパーティー)が行われていたことが発覚したのです。

パーティーの場所に選ばれたリューロンの倉庫のようなスペースには、31日の夕方から数百台の車が集まり始め、夜通しのパーティーが始まりました。パーティーには、フランス国内だけではなく、イタリアやスペイン、ベルギーなどの隣国からも人が集まる大所帯。警察が介入した時には、すでに簡単に解散させることができないほどの人数になっており、憲兵隊が発砲する事態にまで発展し、少なくとも警察官25人が負傷しましたが、参加者を傷つけることはできないことから、警察も憲兵隊も手が付けられない状態が続き、パーティーは、一昼夜以上、36時間、続けられていました。

パーティーに集まっている若者は皆、屈託なく、音楽に合わせて楽しそうに踊り、マスクをしている人などほとんどおらず、たまにマスクが見えても顎マスク。ビールなどのアルコールを口に含んで、人に吹きかけている人までいます。これでは、飛沫が飛ぶどころの騒ぎではありません。最近は、映画やドラマの映像でさえ、それが現実のことでないとわかってはいても、人混みを見かけると、一瞬、ギョッとしてしまう私にとっては、もう信じがたい光景です。また、この状況を警察や憲兵隊までが出動しながらも即刻、解散させることができずにそれが一昼夜以上も続いてしまったことも、理解不能です。

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このレイブパーティーは、第1波の感染拡大の二の舞になる

海外からも含めて、フランス国内の様々な場所から集まったというこの2,500人のレイブパーティーでは、少なくとも662人が逮捕、407人が勾留されています。しかし、大半の若者は、解散させられて、自分の住む地域に戻り、何食わぬ顔をして、いつもの日常生活に戻っていくのです。現段階でもすでに1日の感染者数が2万人を超える状況で、ましてや、気温の低下で、このウィルスが最も活発になっている中、しかもイギリスで発見されたというコロナウィルスの変異種に世界中が警戒して国境閉鎖などの対策を取っている現状の中、このパーティーがクラスターとなったのは、確実です。

そもそも、このウィルスは、中国から広がったものではありますが、フランスで全国的に感染が拡大した大きな感染源の一つとなったのは、グランエスト(フランス北東部の地方)ミュールーズにある教会での、昨年の2月中旬に、全国から大勢の信者の集まる集会であったことがわかっています。当時は、まだ、コロナウィルスの感染が広まり始めていたことも知らずに、全国から集まった大勢の信者は、その集会で感染したことを知らずに集会終了後には、また全国へと散って行ったのです。

昨年の一年間で、フランスでのコロナウィルスによる死亡者は、64,632人でした。驚異的な数字です。そして、現在もその数は、毎日300人前後増え続けています。2020年は、まさに誰もが認める恐ろしい一年でした。ミュールーズの教会での感染拡大は、まだコロナウィルスの感染がフランスでは、ほとんど問題になっていなかった時の出来事なので、それを責めることはできませんが、現在の状況は、昨年に起こった悲惨な状況から、ある程度、どのようにして感染が広まることはわかっているのです。日本語でも年末には、よく「年忘れ・・」などという表現がありますが、まさに忘れたいことの沢山あった年でした。しかし、現段階では、まだ忘れてはいけない状況なのです。「若者にはリスクは少ない、感染しても発症しない確率が高い」というのは、神話のようでもあり、現実でもあるかもしれませんが、決して、感染しない、人に感染させないわけではありません。このような身勝手な行動を起こす若者が後を経たないのもフランスの現実です。

まさに予想していたシナリオどおり

コロナウィルスの感染が深刻化し始めたのが昨年の3月。3月半ばから約2ヶ月間、フランスは、ロックダウンになりました。5月11日にロックダウン解除になり、フランス人は、恐る恐る普段の日常に近い生活に戻って行きました。気温の上昇の助けもあり、感染は徐々に減少して行きましたが、ウィルスが完全に失くなったわけではありませんでした。それでも夏のバカンスにGOサインが出ると、さすがに海外旅行をする人は減りましたが、多くの人がいつも通りにバカンスに出かけて行きました。バカンスの終わりは、気温の下がり始める時期と重なり、国内を大移動し、多くの人がバカンスから持ち帰ったウィルスが活発化し、9月には、再び感染が拡大し始めました。そして10月には、第2波のピークを迎え、再びロックダウンとなりました。

フランス人が何よりも大切にしているバカンスで感染が再拡大し、そして、バカンスの次に大切にしているノエルで再び第3波を迎えようとしています。これまでのフランスのコロナウィルス対応を見ていると、バカンスやノエルなどの国民の民意を優先し(経済優先ともいう)、対応は後手後手に回ってきました。今回の年越しの対応などその最たるものです。国民の動静を見ていれば、充分に予測可能な危険な状況を直前の数字でのみ判断して、対策を取らずに迎えたことは、第3波の感染爆発に火をつけたようなものです。1回目のロックダウン解除以来の感染状況は、ほとんど私が予想していたとおりになってしまっています。

ワクチンの接種も開始されましたが、一般大衆に行き渡るのは、早くても4月以降です。それまでは、フランスは、再び厳しい冬を過ごさなければなりません。この2,500人のレイブパーティーを始めとして、多くの人が国内大移動をしたノエルから年末年始にかけての感染の結果が出るのは、1月半ばからです。コロナウィルス感染は、一度、大きな波に乗ってひしまえば、それは、しばらく、どうにも止めることはできません。

昨年の3月に見てきた病院から人が溢れ、野戦病院のようなテントが張られ、収容しきれない病人がTGVや軍用飛行機で運ばれ、埋葬に間に合わない死体が溢れ、ランジス市場(パリ近郊にある築地のような市場)の一部が死体安置所に使われるような危機的状況が再び起こってしまうのではないかと年明けそうそうに早くも不安にかられているのです。

フランス社会の縮図

この度重なるフランスの感染拡大の様子を見ていると、フランス社会の縮図のような気もしてきます。フランスはれっきとした格差社会で、一部のエリートは、自分たちだけで国を動かしているようなことを言う人もいて、なかなか鼻持ちならない感じではありますが、最近は、その通りなのかもしれないとも思い始めました。デモやストライキで四六時中騒ぎ、その上、しょっちゅうバカンスだ何だと休みばかり、一体、どうやってフランスの経済は回っているのかと思うことも少なくありません。しかし、実際にはフランスは、世界の経済大国の一つであり、フランスの産業の技術は高水準のものです。

世界の航空機の大半が使用するエアバスもフランスのものですし、日本の新幹線と肩を並べる水準のTGVもヨーロッパの国の多くの鉄道が使用しています。しかし、例えば、フランスのTGVの運行を見ていると、フランスの誇る高速で走ることができるはずのTGVは、運行に際しての遅延が多く、高速を実感することよりもその遅延を実感することの方が多いのが現状です。つまり、TGVの性能に見合った運行ができていないのです。その製品の開発のレベルとそれを実際に運行することに携わる労働力のレベルが追いつかずに足を引っ張っている状態なのです。

今回のコロナウィルス感染の度重なる感染拡大も、多くの人が感染回避の注意を払っているにも関わらず、一部の現状を理解できない、想像力の欠如した低次元の人がこうして足を引っ張るために、再び感染爆発の時を迎えようとしていることに、フランス社会の縮図を見るような気もしているのです。