◉圧倒的な存在感を誇った黄色と黒の縦縞の11番

日本高校サッカー界の歴史の中で、最も印象に残っている留学生サッカー選手はと聞かれたら、40代以上の方は東海第一高校(現・東海大翔洋)を優勝に導いたアデミール・サントスと答える方が多いのではないのだろうか。

プレーや髪型、醸し出す雰囲気、ロングパスにドンピシャで合わせるハーフボレー、決勝でのフリーキックなど、それまでのスターとは別次元の、新たなスタイルのスターとしてサッカー少年の心を鷲掴みにした。

後に渋谷幕張高校の田中マルクス闘莉王や明徳義塾高校のアレックスなど、高校サッカーを経て日本でプロサッカー選手となり、帰化して日本代表になる選手が出てくる事へも繋がった。

初出場で初優勝というストーリー性もあり、強烈なインパクトとして頭に残っている。

彼等に刺激を受け、真似し追いつき追い越せと日々切磋琢磨し、技術を磨いた選手達も沢山いたであろう。

日本サッカー界の成長という意味では、とても重要で有難い事であったと感じている。

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◉海外からの留学生が公式戦でプレーできなくってしまった日本

2019年10月、日本サッカー協会がある重大な決定を行った。

2020年より海外留学生の公式戦参加禁止を発表

「18歳未満の選手の国際移籍を原則禁止とする国際サッカー連盟(FIFA)の規定を、高体連や中体連、小学生年代に来年度から厳格に適用する」

2019年時点で在学中の生徒までは認められていた為、当時1年生であった生徒達は今年度卒業となる計算である。

我々が海外留学生のプレーを見る事ができる、また海外留学生自身が日本の公式戦でのプレーできるのも今年度が最後になる。

日本サッカー協会の決定というよりは、上部組織である国際サッカー連盟の決定・方針に従ったという方が適しているのかもしれない。

国際サッカー連盟(FIFA)の決定に従う日本サッカー協会(JFA)

2019年は、若い選手の青田買いが問題になっていた時期でもあり、外国人が下部組織でプレーする事を国際的に良しとしない風潮があった。

高校生という色々な物事を吸収できる時期に、海外の同世代の子達と授業や放課後、部活を共に過ごし、同じ時間を共有するという事は、留学生本人にとっても、受け入れる学校側の生徒にとっても良い刺激になっていた事だろう。

前述の通り、日本でプレーする留学生サッカー選手に対しては好意的に感じていたので、いささか寂しく感じている。

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◉日本人高校生がブラジルでプレーする場合

一方、日本人高校生がブラジルでプレーする場合はどうなるのだろうか。

実力次第だろうという身も蓋もない意見もあるだろうが、実力はあると仮定して他の部分で何が必要かを挙げてみよう。

まず、日本と違ってブラジルの学校には部活がないと考えて頂きたい(インター校、私立校は学校による)。

部活があって学校対抗の大会もあるにはあるのだが、それほどレベルは高くもなく公式ではない。

基本的には何かスポーツをプレーする場合は、地元の地域クラブかスポーツの強い総合クラブで日々の活動を行う。

サッカーを本気でプレーする場合、またプロを目指す場合は、クラブチームに所属する事が必須となる。

そしてクラブが参加している各州選手権に出場するのだ。

ではチームと契約し州選手権に出場するには何が必要なのだろうか。

18歳以上は成人扱いなので若干手続きが異なるが、17歳以下の場合は下記の様な項目をクリアしていく必要がある。

(個人対応)

・チームとの契約

・ブラジルでの身元引受人の認定

・スポーツビザ(特例/学生ビザ)等の取得

・領事館等への諸登録

実力があればチームには認められて自分の居場所ができる可能性はある。

語弊があるがビザがなくてもチームでの練習や練習試合、非公式な大会には出場する事ができる。(決して不法滞在でという意味ではない)

観光ビザで入国し、一定期間チームに帯同し活動するだけでも良い経験にはなるだろう。

しかし、真剣勝負の場である州選手権の様なオフィシャルな組織が行う公式戦には出場する事は出来ない。

プロを目指してブラジルに来る高校生はほぼ全員が公式戦への参加を望んでいるだろう。

しかし、公式戦でプレーする為には、ピッチ外でクリアしなければならない項目も多い。

その部分をクリアできずに期限切れを迎えブラジルを後にした日本人選手達も沢山いる。

特にブラジルは未成年を守る為の法律が年々厳しくなってきていると感じている。

日本で暮らす選手の両親からの現地身元引受人への委任状から、州警察への登録、法務省への登録、日本国総領事館での諸登録などがある。

ブラジルの場合は州によって対応が違う為、委任状で済む場合もあれば本人、更には両親を連れてこいと言われてしまう場合もある。

ポルトガル語が分からない高校生が一人で現地でこれらを行う事は中々ハードルが高い。

筆者は現在、ある高校生の身元引受人を行っているが、ビザ取得の為に色々な関係機関を回っている。

それでもやはり一人では無理なので、こちらの弁護士に相談をしながらである。

加えて、コロナ禍で州警察や労働省、法務省などの公的期間が開いたり閉まったりするので、先の予定が全く立たない。

話がそれるが、筆者自身の自動車免許取得も公的機関の閉鎖で既に1年以上止まっている。

限られた期間の中で、結果が求めれる若い選手(高校生)達からすると、何とも歯痒い状況ではある。

これら個人でクリアすべき項目に加えて、労働省や法務省からのチーム側の審査も重要になってくる。

自分も審査されるが、受け入れるチームも審査されるのだ。

(チーム対応)

・選手の住居

・選手を受け入れる学校の選定

・クラブの組織体制の審査

・クラブの財務状況の提出

ビザ取得申請の審査にあたっては、受け入れクラブの組織や経営状態も厳しく見られる。

毎月の財務書類が不足していたりする場合、それだけでビザが承認されない事もある。

クラブにとっても中々ハードルが高いのである。

ビッグクラブならまだしも、地方の中堅以下のクラブなどは、どこも財務的に厳しかったり組織的に出来上がっていなかったりするのが普通である。

施設的にも、選手寮の質、収容人数や広さ、防犯、防災面での規定もあり、条件を全て満たす事ができるクラブはそう多くないだろう。

ブラジルへのサッカー留学する若い世代が減ったのは、こういった法律改変も大きな要素であろう。

90年代はサッカービザなるものがあり、1年毎の更新ができていたとは聞いている。(今は廃止されている。)

また、抜け道としてどこかの語学学校に入学し、学生ビザが下りた場合は、2年間の滞在が可能であった。

但し、この方法もコロナ禍で事情が変わってきている。

ロックダウンに伴い、授業がオンライン化している影響で労働局がビザ承認を行わないのである。

一時期、アメリカのトランプ元大統領が就任機関中にアメリカの大学への海外留学生の受け入れを禁止した事があった。

オンラインで授業が受けれるのだから、わざわざアメリカに来る必要が無いという見解である。

ブラジルもまさにその通りの見解となり、語学学校への学生ビザも現在は停止されている。

学校と部活が紐付いている日本のスタイルの場合、ある程度の項目は、学校側が受け皿となって事前にクリアしているのであろう。

事実、ブラジルの場合も大学や学校という枠組みでは交換留学生などの制度が存在している。

ただ残念ながら部活という存在がない為、教育の場とスポーツの場が紐付いていない。

サッカー界には、交換留学で外国人選手同士の交流、それによる心の成長などの考え方が入る隙はないのだ。

毎年の様にセレクションがあり、良いプレーをしなければいつまでクラブに所属できるかも分からない。

教育というよりは既に労働に近い世界である。

日本とブラジルが違いというよりは、学校に紐付いた部活(スポーツの場)という日本の制度の方が、国際的にはマイノリティなのであろう。

FIFA側も日本の部活制度は認識しているが、世界全体で考えた際に、各国の特殊事情を考慮する事はできないとの見解を発表している。

ブラジルは治安の問題をよく言われてしまうが、全ての地域が危ない訳でもなく、時間と場所とタイミングを間違えなければよっぽどの事はない。

全てが揃っていて、施設の中から一歩も出る必要のないクラブもある。

サッカーをプレーするレベルや環境も問題はない。

ビザ取得の問題さえ上手く解決すれば、日本の選手達にとっては自身の成長・挑戦するには持ってこいの国である。(前述の項目をクリアして、実際に正式に契約できた選手もいるので、全く無理な訳ではない。)

今後も色んな可能性を探りながら、未来のサッカー選手達の後押しを行っていきたい。

日本のサッカー界の為にできる事はないか、地球の反対側から日々考えている。

<了>