コロナ禍が私の居住国バーレーンに到達してから既に半年以上が経った。同国はこれまで一切ロックダウンをすることなくこのコロナ禍を乗り越えてきたが、その一方で、外出時のマスク着用の義務化や映画館など一部施設の営業停止、イベントの開催無期限休止など、本件に関する対応は非常に厳しい状況が続いている。そんななか、8月に発表された外食の一部解禁のニュースはバーレーンに暮らす我々にとって待望の瞬間であった。今月に入り同制度が施行されたことを受け、今回、現在の外食事情を取材した。

取材を目的に訪れたのは、バーレーンの首都マナーマのビジネス街(CBD)にある高級日本料理店「MAKI」。同レストランは湾岸諸国屈指の美食大国として知られるクウェート発のレストランで、クウェート、バーレーン、カタールの3か国でローカルの富裕層を主なターゲットとした営業を行っている。ローカル向けということからもお分かりの通り、弊社CEO(バーレーン人)が最もひいきにしている日本料理店でもある。

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日本料理店MAKIの外観(撮影:福田健人)

(※)他にも、バーレーン国内には同国が世界に誇る最高級の日本料理店「BUSHIDO」の他、「SATO」や「IMARI」、「KOJO」「KABUKI」など、人気の高い日本料理店が数多く存在しているので、こちらはまた別の機会に紹介することにする。今回ご紹介する「MAKI」は、アラブ世界で親しまれるスイーツ「クナーファ」などを用いてアラブ風にアレンジされたメニューで人気を集めている名店である。

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さて、「MAKI」の店内に入ると、普段は予約でいっぱいのはずの店内は閑散としていた。店員も半年ぶりの接客とのことで、まだまだぎこちない様子である。入店の際には、新制度で求められる検温のほか、顧客情報(*CPR番号と個人の電話番号)を提供することが義務付けられている。座席に関しても、通常のテーブル席ではなく、他の利用者と接触しにくい半個室空間へと通された。

(*CPR番号=バーレーン版のマイナンバー制度に基づく個人IDのこと)

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「MAKI」の半個室空間(撮影:福田健人)

席につくと、テーブルには消毒剤が用意され、フェイスシールドを被った店員がオーダーに対応している。オーダーの際に店員に確認すると、アルコールの提供も再開しているとのことである。バーレーンは湾岸諸国のなかでも最も自由に飲酒が可能な国であることから、コロナ禍以前はサウジアラビアやクウェートをはじめ周辺諸国からの旅行者が大勢集まってきていたこともあり、同国のレストランによるアルコール提供の解禁は同国の観光業の復活にとって朗報と言えるかもしれない。

オーダーの際に気づいたことだが、前述のアルコール類の品揃えはもちろん、そのほかのメニューに関しても提供不可能となっているものが少なからず存在している。確認すると、未だに続く物流の停滞により今もなお一部食材の輸入が思うように進んでいないようだった。社内でも通関に関してかなり苦労してきたこともあり、現在の状況は理解しているが、実際にオプションが少なくなっているのを見るのは心苦しい。外食禁止令の発布以降、私がこれまで利用してきた配食アプリの「Talabat」では、提供可能なメニューのみしか記載されないため、これまで全く気づいてこなかった。

今回訪問した「MAKI」以外にも、大半のレストランでは客の入りがコロナ禍以前よりも圧倒的に少ない。同国の高級レストランがターゲットにしてきた富裕層マーケットの規模がサウジ人の流入ストップにより縮小してしまったため、どのレストランも経営状況は厳しくなっている。一方で、ドライブスルーを導入したり配食サービスでのマーケティングに成功したレストランは売上を伸ばしている。特に、バーレーン発の日本食レストラン「KOJO」が立ち上げた新ブランド「MAKI BOWL」は当地では非常に好評である。ただ、食材を輸入に頼り、かつ客層が外国人中心となっている多くの高級レストランにとって、外食の解禁はまだまだ回復に向けた最初のステップでしかない。バーレーンの飲食業界は、国際的な物流の安定化と国内の観光業の復活を苦境のなかで今も待ち続けている。