ヨーロッパ各地で新型コロナウイルスの変異種が猛威を振るい、イギリスやドイツ、スペイン、ポルトガルがまたまた大変なことになっている一方で、イタリアでは感染状況がずいぶん改善され、2月1日からはほぼ全国がイエローゾーンになる。
イエローゾーンとは、州を超えた移動はダメだがそれ以外は基本自由で、店も飲食店も営業が再開される(ただし18時まで)。夜間の外出禁止は続くものの、何が嬉しいって、店に入って座って食べて飲んで、おしゃべりに興じることができるってことだ。オレンジゾーンだった今までは、ショッピングに出かけても、疲れたね、お茶しようか、ということができなかった。紙コップに入れたコーヒーをもらって外で飲むのは、寒いし寂しすぎた(レッドゾーンはショッピング自体できない)。
ちょっと一杯、といつものバールに入ってエスプレッソを飲み、馴染みのバリスタや常連たちとつまらないおしゃべりが交わせること。コロナに奪われてしまった、そんな普通の日常が、ちょっとだけ帰ってくるのだ。

私個人的には、犬の散歩へ行き、そのままスーパーへ買い物に行くとか、郵便局へ並ぶなど、複数の用事を一度の外出で済まそうとする時、寒くてトイレに行きたくなることもあるのに、バールが空いていないとトイレに行けない。だからいちいち家に帰らないと行けない、そんなめんどくささが解消されるのもとてもありがたい。
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コロナ前のイタリア人は1日何回バールでコーヒーを飲んでいたか?
2018年のFIPE(イタリア公共商店連合)の調査によれば、全イタリアに15万件のバールがあったそうだ。イタリアの2019年の人口が6036万人だから、ざっと400人に1軒という計算になる。ところがその内の3分の2がピエモンテ(州都トリノ)、ロンバルディア(同ミラノ)、ヴェネト(同ヴェネチア)、エミリア・ロマーニャ(同パルマ)、トスカーナ(同フィレンツェ)、ラツィオ(同ローマ)、カンパーニャ(同ナポリ)の6州に集中しているというから、人数あたりのバールの数はこの6州ではもっと多いことになる。そのバールが平均して一日175杯のコーヒーを売っていた。ここでいうコーヒーとはエスプレッソだけのことだそうだから、カプチーノなんかも入れればもっと多い。この数字だけ見てもイタリア人がどれだけバールが好きかというのがよくわかる。
どんな使い方が一般的かというと、まずは朝食。朝起きたら家では何も食べずに出かけてオフィス、または学校(高校生や大学生)近くの馴染みのバールでエスプレッソまたはカプチーノと、コルネットやブリオッシュとイタリア人が呼ぶ、中にクリームやジャムが入った甘いパンを、さっと立ち食いして一日をスタートする。

午前中には10時にもう1杯、ランチの後に1杯、おやつに1杯、なんていうのが珍しくないイタリア人のバールの使い方だった。毎度長々居座るわけではなく、さっと入ってカウンターで1杯エスプレッソを飲み、ちょっとおしゃべりをして(ここが大事・笑)帰る、そういう使い方。ちなみにイタリア人はエスプレッソを頼むとき、わざわざエスプレッソください、とは言わない。「ウン・カッフェ・ペルファヴォーレ=コーヒーを1杯ください」といえば、自動的にエスプレッソが出てくるのだ。
最近では「ネスプレッソ」とその類似品が勢力を伸ばし、バールへ行かなくてもオフィスで美味しいコーヒーが飲める、つまり息抜きに行けなくなってしまって、なんだかイタリアらしくなくてつまらないと思うのは私だけだろうか。
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コロナで奪われた人生の楽しみ
ミラノの市場調査会社「アストラ・リチェルカ」によると、オンラインで1000人にインタビュー調査をしたところ、コロナウイルスの感染拡大でバールに行く機会が激減してしまったイタリアで、90%が家でコーヒーを消費していたことがわかった。2014人に行った同じ調査では89%だったので、ほんのちょっとだけ増えている(意外と増えていないんだな、と私は思ったけど)。そして10人に4人は一日に2〜3杯、同じく10人に4人が一日に3〜4杯、家でコーヒーを飲んでいたことがわかった。
イタリア人の家庭で飲むコーヒーの代表選手といえば「モカ」という機械(というよりはポット)で淹れるコーヒー。3つのパーツでできたそのポットの、一番下に水、真ん中にモカ用に挽いた粉を入れて火にかけて待つこと数分、上のパーツにコーヒーが湧き上がってくるという仕掛け。エスプレッソの美味しさには及ばないけれど、ぶくぶく湧いてきた時の家中に漂うコーヒーの香りが好き、というイタリア人は多い。
一方、バールはロックダウンや、それに続く飲食店の営業規制で大きな打撃を受けていて、2014年には77,5%だった利用率が(へー、100%じゃないんだ、と驚いた)2020年は65%に激減した。そして60%の人がバールでコーヒーが飲めないことを寂しいと感じていて、65%のオフィスワーカーや学生は、会社や学校の近くのバールでコーヒー休憩ができないことを「苦痛」に感じ、83,7%はバールでコーヒーを飲むことを「人生の楽しみの一つ」としてあげているという。
(ANA通信 12月2日 https://www.ansa.it/canale_terraegusto/notizie/in_breve/2020/12/02/covid-non-fermapassione-italiana-per-il-caffe_8efc66f6-fdf7-4314-a15b-b07fbfc27135.html)
そんなイタリアで、明日からバールも、そしてレストランも営業が再開する(ただし18時まで)。誰とお茶に行こうかな、ランチはどこがいいかな? なんてガイジンの私まで、ちょっとウキウキしてしまう。長く続いた営業規制で飲食業界の66%が倒産の危機と言われる今、このウキウキで少しでも挽回できるといいと思う。と同時に、これでまた感染拡大なんてことにならないといいけど、と疑心暗鬼な気分も否めない。
