クリスマスがやってくる。クリスマスといえばプレゼント。英国でも家族はもちろん、友人や職場の仲間ともちょっとしたプレゼントを贈りあう。この国に来たばかりの頃に、自己破産に追い込まれるほどクリスマスプレゼントを買ってしまう人が毎年いると聞いて驚いた。そんなに真剣に取り組まなくちゃいけないのかと思い込んでしまって、最初のうちはずいぶんはりきってプレゼントを選んでいた。でも15回のクリスマスを経験するうち、そんなにすごいものを贈らなくていいらしいとわかってきた。ほとんどの人はゆるくて、でも楽しそうなのだ。

 英国には外国人も多いし、クリスチャンでなければクリスマスは関係なさそうだけれど、習慣として学校も仕事も休みになるこの時期、特別なこだわりさえなければ、宗教に関係なく、カードを書いたりプレゼントをしたり、何かしらをしていると思う。季節のあいさつのようなものだ。

 それほど親しくない同僚や知り合いへのプレゼントは、チョコレート(最強に無難なチョイス)、ミニチュアボトルのリキュール、ハンドクリームなどの消耗品が人気で、好みがわかるようになるとマグカップやコースター、身につけるもの、おもしろグッズや個人的なものに変わっていく。月に1度通っているアルバイト先では、最初の年には上司にあたるJさんにチョコレートをいただいた。2年めはハンドクリーム、アジア人のわたしは若く見えるけど実はそんなに歳が離れていないとわかった3年めにはふわふわの冬用スリッパになった。今年はクリスマスランチをしようと誘ってくれたけれど、オミクロン株の感染急増で中止になってしまった(うー、コロナめ)。ちなみにわたしのJさんへのプレゼントは1年めはラベンダーのポプリ、2年めは石けん、3年めはキャンドルで、今年はちょっとすてきなハンドケアのセットにした(Jさんはよくデスクでハンドクリームを塗っているのだ)。Jさん、今年は何にしてくれたかな。

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右下の2つが今年Jさんにいただいたプレゼント。デキる女はラッピングもキマっている。この国ではもともとプレゼントの包装は自分でしていたので、たまに驚くほど不器用な包みを見かけることもあった。それも、包装紙がくっしゃくしゃだったり、テープがぐるぐる巻きだったりと、日本ではあまりお目にかからないレベルで。それでも、「うまく包めなかった〜、あはは」と本人は笑い、周りも一緒に笑っているだけ。おおらかというか何というか。最近ではクリスマス柄の紙袋に入れるだけとか、お店できれいにラッピングしてもらう選択肢が増えたので、あまりへんてこりんなものは見なくなってしまった。ちょっとさみしい。筆者撮影


 家族や恋人だと格も上がって、アクセサリー、香水、時計、今どきならスマホやタブレットなど。親しい間柄では欲しいものを聞き合ったり、欲しいものリストを交換することも多くて、夫の娘もたまにリストを送ってくる。驚きに欠けるという意見もあるけれど、リクエストに応えれば間違いなく喜んでもらえるので、わたしは肯定派だ。何十人という相手に毎年バリエーションをつけて選ぶのは、案外プレッシャーのかかる作業なのだ。
 ただし、自分のリストを作るのは苦手だ。「これが欲しい」とはなかなか言いにくくて。それでも去年は娘に頼まれて、あわただしい12月に、予算低めを意識しつつリストをなんとかひねり出した。そしてその年、娘の家族から受け取ったプレゼントの中に、わたしがリストに入れたものはひとつもなかった! ただのひとつも。まあ、単なる目安だけどね。わたしは全部リストから選んだけどね。そういうゆるさが英国式だと思うことにする。

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 親しさや懐具合によるけれど、クリスマスプレゼントはそんなに高価でなくてもいい。本1冊だってじゅうぶん。プレゼント交換をする仲間うちでは予算を決める時もあって、他のプレゼントを選ぶ目安になる。前に通っていた、いけばな教室でもクリスマスにプレゼント交換があり、平均はどのくらい? と英国マダムたちに先生に詰め寄ったことがあった。敬愛していた日本人のその先生は、当時すでに在英40年という英国暮らしの大先輩。その時の「10ポンド(約1500円)ぐらいかしらねぇ」という先生の言葉は、この距離感ならそれくらいなのかと、とても参考になった。もう13、4年前の話なので、今なら15ポンド(約2300円)以上になるかもしれない。それでも意外に堅実なのだ。

 子どもたちは、小さいうちはサンタに手紙を書いて欲しいものをお願いする。クリスマスイブの夜に、サンタへのプレゼントとしてミンスパイ(ドライフルーツやスパイスを混ぜたものを詰めた甘いパイ)とシェリーかポートワイン(か牛乳)を用意してからベッドに入る。トナカイ用のニンジンを添えることもあるようだ。朝になるとお願いしていたプレゼントが届いていて、お菓子やニンジンにはかじった跡がついている(パパやママのお仕事)。夫の娘のところではやっていなかったけれど、こんなかわいらしい習慣、お菓子をかじる役でいいから参加してみたかった。子どものいるクリスマスはやはり楽しい。娘の子どもたちが小さかった時には、大はしゃぎで包みを開ける孫たちを見るのが大好きだった。

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本もクリスマスプレゼントとして人気が高い。好みをよく知らない人ならベストセラーや話題の料理本、趣味がわかれば専門的なものや好きそうなジャンルの本を選ぶ。今年は、わたしが日本語訳で読んでおもしろかったものの原書や、大好きだった本の続編などを選んだ。写真は手前左がResurrection Science: Conservation, De-extinction and the Precarious Future of Wild Things(『絶滅できない動物たち 自然と科学の間で繰り広げられる大いなるジレンマ』 M.R. オコナー著、大下英津子訳)、右は10 Minutes 38 Seconds in This Strange World(『レイラの最後の10分38秒』エリフ・シャファク著、北川絵里子訳)、奥の青と白の表紙は、『木曜殺人クラブ』(リチャード・オスマン著、羽田詩津子訳)の続編、The Man Who Died Twice。筆者撮影

 クリスマスプレゼントには、やはりサンタやクリスマスツリーなどクリスマスっぽい柄のアイテムが人気だ。お手頃なのはマグカップ、手袋やニット帽、Tシャツ、イヤリング、クリスマスバージョンのクリーム、クリスマスのお菓子など。当日を過ぎてトナカイ柄のセーターを着ているのは間が抜けている気もするけれど、クリスマスの飾りつけは1月6日の顕現日(クリスマスから12日めで、東方の三博士がキリストを訪れたとされる日)まで続くことだし、クリスマスの名残りとして、それもありのようだ。
 季節がら、あたたかくなれるものも人気がある。セーターやマフラーのほかにキャンドル、もこもこした室内ばき、厚手のパジャマ、お風呂まわりのもの、湯たんぽなど。ええ、湯たんぽ。冬はベッドに湯たんぽを入れるという話を日本よりもずっとよく聞く。ヒョウ柄やふわふわのカバーがついた湯たんぽは、プレゼントとしてもかわいらしい。

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前にいただいたキュートな湯たんぽ。こちらで見る湯たんぽはたいていこの形をしていて、中にゴム製の本体が入っている。カバーには動物の柄、マンガ風な絵がついたもの、ブランドものなど、意外にバラエティーがあっておもしろい。筆者撮影

 「あたたかい」に分類されるかどうか微妙だけれど、くつ下もクリスマスには人気が高い。くつ下なんて子どもだましかと思うでしょう? でも本当にとても多い。しかもサンタとか首相の似顔絵とかアニメの主人公という笑えるデザインも意外によく選ばれる。値段も手頃で大して場所もとらないから、少しぐらい変わっていても笑って許せるのかもしれない。選択肢の多い女性に比べて、男性へのちょっとしたプレゼントは意外と難しいものだし。

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去年、友人にいただいたおもしろくつ下(まだ履いていない......)。犬の方は「おもしろい」より「かわいい」つもりだったのかもしれない。もうひとつはラーメン好きの彼女ならではのチョイス。よく見るとテイクアウトの焼きそばっぽいけれど。右はもうずいぶん前にわたしが夫に贈った宇宙飛行士柄のソックス。ロンドンで電車やバスに乗っていると、すました顔で座っているスーツ姿の男性の足元に妙にハデな柄や変な柄が見えていることがある。人にもらったおもしろソックスをおとなしく履いている彼らのお人柄を想像して、なんとなくほほえましくなる。それとも自分で選んだのかな。筆者撮影

 おもしろくつ下なら「ジョークもの」の分類に入りそうだ。ほかに思いつくジョークものは、へんてこな絵やジョークが描かれたTシャツ、フランスパンの形をしたボールペン、おもちゃのように小さい掃除機、瓶の先に取り付けてワインを実質ラッパ飲みするグラスなど。日本でいうと、昔「王様のアイディア」で売っていたようなもの、今は東急ハンズで見て笑うようなものだ。(「王様のアイディア」はアイディア商品を販売していたチェーン店で、ツボ押しつき健康湯のみとか、たいやきのカバーつきカイロとか、おもしろグッズも多かった。現在は閉店とのことで、とても残念)

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 クリスマスには部屋や家族向けの贈りものも多い。ルームスプレーやディフューザー、みんなで遊べるボードゲーム、ポインセチアやシクラメンの鉢植えなど。21世紀にボードゲームなんてと思うかもしれないけれど、クリスマスにはわりと人気なのだ。夫の娘の家でクリスマスを過ごすと、いつもはテレビやスマホでゲームをしている子どもたちが、突然トランプや人生ゲームを持ち出すので驚いてしまう。

 それからもちろん、食べもの。ワイン、チーズ、パウンドケーキ、ビスケット、コーヒー、紅茶の定番から、各地から取り寄せる名産品や高級食料品の詰め合わせ、クリスマスのお菓子。食べものの評判がよくない英国だけれど、おいしいものもたくさんあるのだ。

 プレゼントは必ずしも買ったものでなくていいらしい。ずっと持っていた大切なものとか、家にあった少し値の張るものをいただくこともある。わたしが心に残っているのは、元ご近所さんにいただいたエナメル製のカタツムリのブローチだ。ブローチとしては小さくて変わっているねと言ったら、「義母のイヤリングをブローチに作り替えたの。左右で2つあるから、ひとつずつ持っていようね」と教えてくれた。嬉しくて、彼女が引っ越してしまった今も大切にしている。

 大人になると欲しいものはたいてい持っているので、「モノ」ではなく「コト」のプレゼントも増えてくる。たとえば旅行や食事、コンサート、芝居や展覧会のチケット。ギフト券も実用的だ。ちょっと味気ないかなと思いつつ、本の好みがうるさい夫にはよく図書カードを贈る。3、4年前、友人に連れて行ってもらったホテルのアフタヌーンティーは、思い出深い「コト」のプレゼントだった。クリスマスの飾り付けをながめながら季節のおいしいものをいただき、贈り主の友人ともゆっくり話せて、とても特別な気分に浸ることができたのだ。

 実は今年は、大人の友人たちによいプレゼントを見つけて得意になっている。

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手間いらずのアマリリス。下はワイヤーで固定されているので、ごろごろ転がることもない。クリスマスとお年賀を兼ねて日本の家族にも送った(日本でも買えます)。実はわたしもお隣さんから今年のクリスマスにいただいたので、嬉しくて食卓に飾って毎日ながめている。筆者撮影

 水やりも何もいらないアマリリス(の球根)だ。ちょこんと置いておくだけでぐんぐん育って花を咲かせてくれるし、球根から成長する過程をながめるのも楽しい。去年の暮れにお隣の家で見せてもらってひとめぼれし、その時から今年のプレゼントにしようと決めていた。花はそれほど好みを選ばないし、休暇の時期に家族で楽しんでもらえる。しかも目新しい上に手間いらず。大きくて華やかなアマリリスは、クリスマスや新年によく使うので、喜んでくれた友人が多かった(生きものなので、今年はすぐに包みを開けてもらったのだ)。わたしのプレゼント史上かなりのヒットなんじゃないかと、ふふふとひとりで笑っている。

 クリスマスに大はしゃぎしていた孫たちが大きくなった今でも、みんなで一斉にプレゼント開ける時間は、やはり楽しい。もらったものをお互いに見せあったり、身につけるものはその場で着てみせたり、どうしてこれを選んだかという話をしたり聞いたり。ひとりで見るより、わいわいと包みを開ける方が楽しみが何十倍にもふくらむ。

 プレゼント自体は好みのものをもらえるとは限らないし、あちらも実はそんなに嬉しくないのかもしれない。それならいっそプレゼントのやりとりを廃止しようという人もいるのだけど、プレゼントのないクリスマスなんて、やっぱりつまらない。みんなで包みを開けたり、そのことについて話したりするだけでも存在意義があるんじゃないかしら。中身が好きでも嫌いでも、「あら、すてき!」とちょっと芝居がかった笑顔で会話を弾ませるのが、クリスマスのお約束じゃないかと思っている。

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 今年はこれで最後の投稿になります。今年もEngland Swings!をご覧いただいて、ありがとうございました。読んでくださる方、見守ってくださる方のお力をいつも感じています。これからも素直な気持ちでロンドンの空気をお伝えできたらと思っています。来年もどうぞよろしくお願いいたします。

 コロナ禍もなかなか落ち着かない年の瀬ですが、お元気でハッピーに年末年始をお過ごしください。楽しいクリスマスを。すこやかな2022年になりますように。