2021年もあれよあれよという間に20日を数え、不肖私ひきりんの誕生日を迎えるに至りました。笑
World Voice 編集部より「2021年のキーパーソン、教えてください」というお題が出されましたので、それは「ひきりん」!と名乗りを上げるために、今日の誕生日まで我慢して鳴りを潜めていたという訳です。嘘です!笑
冗談はこれくらいにして、読者の皆さん、編集部の方々のご支援のお陰を賜りまして、有り難いことに年明け早々に別の新しい活動のオファーもいただいたりもしていますので、個人的にはまずまずの滑り出しではないかと感じています。
さてさて、そんな『月曜から夜ふかし』個人的ニュースレベルの話題はこれくらいにして、そろそろ真面目に本題に入ってみようと思います。
日本でも他の世界でも同じでしょうが、ヨーロッパ、ベルギーでも年明けから明るいニュースと言えばワクチン接種開始くらいですが、それを含め昨年から引き続きコロナ一色です。したがって、World Voice の年明け共通テーマ 「2021年のキーパーソン」のほうも各ライターさんともなかなか該当者を見い出すことが出来ないでいるようです。
僕もいろいろとアンテナを伸ばしてみましたが、「この人だ!」と思い浮かぶ人がなかなか見つかりません。日本の皆さんには誰か浮かびますか?
昨年11月から続くロックダウン、外出禁止措置によって、年明け以降、夫や買い物に行った際のお店の人を除いては、顔を合わせた人は家に遊びに来てくれた親友一人のみというくらい人との接触が限られることもあり、おしゃべりの機会もうんと少なくなってしまっていることも一つの原因でしょうね。オンライン上の新年の挨拶でも「コロナに気をつけて!」とか「コロナが収束することを祈って!」というような締めくくりになってしまいますし、ニュースをチェックしてもコロナ関連に覆い尽くされてしまっています。
クラシック音楽好きな僕ら夫夫(ふうふ)は元旦のウィーンフィルのニューイヤーコンサートを楽しみましたが、それ以外は一部のストリーミング配信を除き全てのコンサートがキャンセル(昨年3月中旬以降ずっと)。映画も含めエンタメもほぼ全滅です。
昨年は、僕が中学、高校時代に親しんだポップス界のレジェンド、Pet Shop Boys(『West End Girls』『It's A Sin』『Go West』など)、A-ha(『Take on me』が大ヒット)のブリュッセル公演が予定されていましたが、どちらも延期となり、それぞれ今年4,5月に振替されていますが、現在の世界のコロナ感染状況を鑑みると、再延期の可能性大です(A-haの日本公演は、2020年3月→21年1月→22年1月と再延期決定)。
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古今東西、大晦日、年越しの人気はやっぱり音楽番組?
日本では大晦日にはNHK『紅白歌合戦』のほか、民放でも『第53回年忘れにっぽんの歌』、そして年越しは『CDTV ライブ!ライブ!年越しスペシャル 2020→2021』『日本中に元気を!!ジャニーズカウントダウン2020-2021』『東急ジルベスターコンサート 2020-2021』 と歌番組、音楽番組がズラリ!他にも年末年始には音楽番組がいくつもあって大人気ですね。
ところ変わってベルギーはというと。人口が1100万人と日本の10分の1以下、加えて北のオランダ語圏と南のフランス語圏とで公共放送のテレビ局も分かれているこの小国では、国民的テレビ番組も南北で別々で日本の地方局レベルの規模、自然と予算も限られるので、あまり魅力的な番組構成となりません。
さらにケーブルテレビの時代からフランス、ドイツ、イギリスなど周辺の大国のテレビ局も映るベルギーですので、外国人の僕としては自然とそちらにチャンネルを合わせがちに。
こないだの大晦日は、夫が夜9時過ぎにドイツの公共放送ZDFにチャンネルを合わせましたが、毎年行われているベルリンのブランデンブルク門前の特設会場から無観客でスター歌手たちが出演する音楽番組が生放送されていました。
それから同じく音楽番組で構成されていたドイツとフランスのチャンネル計4局を行ったり来たり頻繁に切り替えて、好きなアーティストや曲を楽しみました。その間にBBCもチラ見してみましたが、大陸より1時間遅れるように時差があるためか、まだニュースや通常番組のお時間。ニュースでは、EU側との合意を受けてブレグジットが完了する日でしたので、関連ニュースが大々的に扱われていました。
そのチェンネルのザッピング後に固定したのが、France 2 です。
というのも、そこに映し出されていたのは、ヴェルサイユ宮殿内の鏡の間と王立オペラ座とを舞台に華やかな音楽ショー。歴史絵巻のような光景の中で現代のアーティスト達のパフォーマンスが繰り広げられていたのでした。
歴史絵巻に登場する多種多様なアーティスト
カウントダウン20分を切ったところで、ダンサーたちが往時の衣装を身に纏い、鏡の間で舞踏会が催されているという、まるでマリーアントワネットの世界が出現!そんな演出の中、ベルギーの旧植民地コンゴ出身でフランスヒップホップ界の大物 ギムス Gims の "Jusqu'ici tout va bien"『これまでのところ、すべてが順調』という曲をダンサーたちを従えて歌うというシチュエーションです。

France 2,《 La grande soirée du 31 à Versailles 》 テレビ画面より筆者撮影
この後も、年越しまであと10分となったところでアルジェリア起源のライ raï と呼ばれるアラブ・ポップスの歌手2人が登場。そのうちの一人 ハレド Khaled が90年代にヒットした曲『Aïcha』を披露(アイシャはアラブ女性の名前)。まるで、紅白歌合戦のトリ近くで登場する演歌歌手のようです。
多民族国家、移民国家フランスを象徴するようなベテラン勢が大活躍です。
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ショーの主役はゲイの2人
さて、France 2 が放送したこの大晦日の年越し番組 《 La grande soirée du 31 à Versailles 》(《ヴェルサイユで大晦日のソワレ》ソワレとは夜の舞台興行やパーティーなどを指します)ですが、プレゼンター(総合司会)を勤めたのが、ステファン・ベルン Stéphane Bern です。テレビ、ラジオ、雑誌とあらゆるメディアで活躍、テレビでは幅広い番組に登場、またフランスの国家的な祝祭行事の司会を数多く務めるなど、35年のキャリアを持つベテラン。ヨーロッパの王室ジャーナリストの顔を持ち、関連したテレビ番組の案内役も長年務めてきたので、その印象が強いフランス人も多いです。各国王室から勲章も授与し、王族の結婚式にもゲストをして招待されるほど(ちなみにこの方貴族の出身という訳ではありません)。2013年にフランスで同性婚が認められる前、賛否の議論が激しく行われた際に改めて堂々とカミングアウトして、注目を集めた人物のひとりです。

France 2, 《 La grande soirée du 31 à Versailles 》 テレビ画面より筆者撮影
そして、この番組のオープニングと最大の見せ場であるカウントダウンの際に、パフォーマンスを披露したのがレバノン出身のシンガーソングライター、兼音楽プロデューサーの ミカ MIKA。2006年にメジャデビュー、ファーストシングルの『Relax, Take It Easy』が大ヒット、翌07年リリースのファーストアルバム『Life in Cartoon Motion』は550万枚セールスを記録(2007年世界第9位)。来日公演では親交の宇多田ヒカルをゲストに招きデュエットを披露。当初はバイセクシャルと言っていたのが、その後発表した曲の歌詞が男性との恋愛経験を綴ったものとなっていて、改めてゲイとカミングアウトしたという経緯があります。
オープニングでは彼の代表曲、アップテンポ、且つハイトーンボイスが印象的な『Relax, Take It Easy』に始まり、数曲のオムニバスをやはり舞踏会衣装のダンサーと共にやはり鏡の間で披露。
そして、カウントダウンの数分前になって、司会のベルン氏が改めてMIKAを紹介すると、今度は映像が外の庭園へ切り替わります。グランドピアノを弾きながら『Underwater』を弾き始めるMIKA。空には光で作られたハートがゆっくり回転。その曲中、サビに入るところでベルン氏の声で"10,9,8..."とカウントダウンが始まり上空にも数字が表示、それと共に花火ショーの開始です。そして、"3,2,1 Bonne Année !!"との掛け声と共に、2021の文字が上空に現れて打ち上げ花火も。その後は庭園の敷地を使った花火ショーが8分近くに渡って繰り広げられます。このMIKA出演のカウントダウンの様子は花火ショーを手掛けた Group F の公式YouTubeチャンネルでご覧いただけます。ベルン氏のカウントダウンコールは音声も最小限にボリュームが絞られていますが、微かに聞こえますよ。
Groupe F - YouTube 《 Versailles sur son 31, passage à 2021 avec MIKA 》
MIKAの曲の構成もバラード曲とアップテンポの曲が交互に織り交ぜられていて、バラード部分はコロナ禍で生活が苦しくなった人々への癒しの音楽、またコロナで亡くなった方々へのレクイエムのようにも聴こえますし、アップテンポの曲はまさに新年を迎えてコロナに打ち勝とうというようなメッセージが込められているようにも感じられます。個人的にはとても心に沁みるパフォーマンスで、素晴らしい年越しを過ごせた気分でいっぱいになりました。
普段の年であれば、カウントダウン10分前くらいに、ベルギーのテレビ番組にチャンネルを合わせて、ブリュッセルでの花火を画面越しで観ながらシャンパンの栓を開けて乾杯するのですが、今年は豪華にヴェルサイユの花火ショーで年を越したのでした。そして年明け後もショーは続き、40分ほどして終始華やかな雰囲気の中で閉幕したのでした。
他にも、この番組にはフェミニンなゲイのビラル・ハッサニ Bilal Hassani(2017年カミングアウト)も出演しており、かなりのゲイ占有率だったことになります(ダンサーの中にもきっと何人も居たでしょうし)。自身の持ち歌のほか、女性ヴォーカリスト2人とコラボしたABBAの『Gimme! Gimme! Gimme! 』が印象的でした。
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フランス版紅白のような大晦日の歌番組
男女に別れて勝ち負けを争ったりはしませんし、事前収録だったりしますし、一人が数曲歌ったりもしますが、総勢40組近いアーティストが、ジャンルもポップス、ロック、ヒップホップ、シャンソン、アラブ由来の民族音楽的なものまでカバーし、全世代に届く、フランス国民が一緒に楽しめる内容になっていて、まさにフランス版紅白というべき性格の大晦日歌番組なのです。
そして、日本の紅白も視聴率が好調だったという話ですが、こちらの《 La grande soirée du 31 à Versailles 》もフランス国内で524万人がリアルタイムで視聴しました。昨年の同枠の歌番組の視聴者数285万人を2倍近くに伸ばし、テレビ視聴者層の27.9%を獲得、カウントダウン時には40%を記録するまでに。ライバル局の定番人気番組、視聴者から寄せられたおもしろ映像を観て笑うという《 Le grand bêtisier sur son 31 》の 21.4%を圧倒したのでした。この両局の番組の視聴率は逆転していることもあるので、《グランドソワレ》は大成功に終わり、更には視聴者やメディアからも高評価を獲得したのでした。
その意味では、新年の年明けを飾ったこの2人、フランスでの「2021年のキーパーソンズ」として十分ノミネートされて良いのではないでしょうか?
ヨーロッパは各地とも昨年秋からコロナ感染の第2波が収まらない状況が続いていて、ロックダウンも各国2月下旬から3月上旬まで延長されています。その期間たるや4ヶ月以上に及びます。このままだと2021年のエンタメ業界も露出の少なさに比例して話題も少なめになる可能性も。もしかしたらもしかして、今年の大晦日からの年越しだって"視聴率男"として、このお祭り男ふたりが再登場?なんてこともあるかもしれません。そうなったら僕はきっと今年も観ちゃいますね!