リスクとリターン

韓国側も、このような提携が恩恵をもたらす可能性をみている。

朝鮮半島と中国やロシアを結ぶ南北鉄道は、貨物輸送の所要時間を半減させる可能性があり、韓国に巨額の通行料をもたらす、と政府系の鉄道関連団体は2015年予測している。

「南北鉄道を巡る過去の議論は、単純に分断された鉄道をつなげるだけのものだったが、今では、鉄道を実用的な形で近代化して運営し、経済的価値を生み出すことに主眼が置かれている」。韓国大統領の直属機関、北方経済協力委員会のメンバーであるAhn Byung-min氏はロイターにそう語った。

とはいえ、南北対話の初期段階では、北朝鮮における高速鉄道の建設は議論されていない、とAhn氏は言う。

「現実的に、それが議論されるのはもっと先の話だろう。巨額の資金と、複雑なロジスティックスが絡むからだ」

韓国は来年、北朝鮮の道路や鉄道の近代化などの経済協力事業として、5040億ウォン(約506億円)の予算を組んでいる。今年の同予算と比べ46%の増額となるが、鉄道分の内訳は明らかにしていない。

韓国のSKエンジニアリング・アンド・コンストラクション(SK E&C)のSeol Young-man最高経営責任者(CEO)は、高速鉄道と高速道路の建設案を韓国政府に売り込もうと準備を進めている、と述べた。

「北朝鮮に鉄道を建設して金正恩氏と経済協力を行うには、中国やロシアと競って主導権を握るための用意をしなければならない」と、同CEOはロイターに語った。

北朝鮮の中国国境地帯に水力発電所を建設する中朝の合同事業や、ロシア産石炭を北朝鮮の港に輸送するためのロシアによる鉄道計画は、どちらも国連制裁の例外として認められている。

それでも、北朝鮮との事業に対しては、同国の抱える秘密主義や慢性的な電力不足など、多くのリスクが残っている。韓国鉄道公社の李哲(イ・チョル)元社長はそう指摘する。

2006年当時、南北鉄道の復旧について北朝鮮当局者と議論した李氏は「南北の鉄道協力には、北朝鮮における鉄道の状態を把握することが大変良いだろうと考えた」と言う。

「しかし北朝鮮側は、それをほとんど軍事機密のように考えており、われわれに見せることはなかった」

(翻訳:山口香子、編集:下郡美紀)

Ju-min Park and Jane Chung

[ソウル 30日 ロイター]

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