| イタリアでは刺青がある者は、法律により警察に入ることが許可されない

警察採用試験に合格し、制服を着た後、タトゥーをしたために追放された数十人、おそらく数百人の警官とカラビニエリのうちの一人が、この元婦人警官のアリアナ・ヴィルゴリーノさん。
ロディ警察本部に勤務していたペスキエーラデルガルダ(ヴェローナ)出身の31歳
同僚の検査官である内縁の夫と、二人の間に生まれた8歳になる息子をもつ一児の母。
息子の将来の夢は警察官になることだという。


Guardamiglio交通警察部隊所属、60km制限の高速道路に配属されたり、麻薬捜査や交通事故処理などが彼女の行なっていた職務内容だ。
時には、事故で4本の指を切断して身動きが取れない状態の少女を自身のつけていたブレスレットを使って止血し、命を救ったこともあったという。
彼女が勤務し始めてから1年間が経った2019年10月16日の夜、
カサルプステルレンゴの街で、勤務を終え仲間とバーで飲んでいたところ、エクアドル人同士がボトルをめぐって大喧嘩を始めた。
非常に緊迫した危険な状況下で彼女は勇敢に喧嘩の仲裁に入り、援軍が到着するまで暴れるエクアドル人を素手で取り押さえた。
2019年11月7日にその勇気を称える功労賞の表彰をロディ県知事から受けた。

表彰式の2時間後に彼女の運命が大きく変わることとなる。

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表彰されたヒロインが2時間後に職務停止の停職処分

警察官は制服を着た際、おおむね夏制服(半袖)着用時に隠れる位置ならば容認されてきたタトゥーであったが、アリアナの手首には、18歳の誕生日に彫ったハート型のタトゥーがあり、明らかにそれは目で見てとれた。
イタリアでは刺青(タトゥー)がある者は、法律により警察に入ることが許可されない。
どんなに小さな領域に掘られた物であっても、刺青(タトゥー)が制服で覆われていない体の部分で可視化されている場合は、規程違反であり、警察官であるものには不適切であるとされ処分の対象となる。
アリアナは警察官の制服を着用するのに適していない審美的デメリットがあると判断され、停職処分を受けた。
同時に功労賞の表彰も無効取り消しとなった。
その後、
3月に銃と警察バッジの返納を余儀なくされた。
警察学校の入隊前には「刺青が無い、規程に違反していない」ということを宣誓する必要があり、事前の身体検査で刺青(タトゥー)があるかの検査もある。
もしも、あった場合は入隊前に除去か、除去をしない場合は不合格となるのが実情だが、どうして警察官採用試験に合格しているのだろうか。
もちろん、選考候補者は刺青を隠し虚偽の宣誓をしてはいけない。
アリアナは検査に合格し、警察学校に入ることが決まった時に、刺青の除去手術をしたと言う。
のちに、これが裁判における重要な争点となる。
彼女は、すぐさま停職は不合理で不当な処分であると主張し、
自分の勤務していた州警察のトップである国務院を相手どり警察官の身分の回復と復職を要求する訴訟を起こした。


| 今、あなたの人生はどう変わりましたか?

アリアナは、
「私は、裁判費用と弁護士費用を払うために車を売却しました。私には8歳の息子がいて育てていかなければいけないのです。慰謝料や補償を求めてはいません、ただ、息子のためにも復職し制服を着て地域のために貢献したいだけ。私には警察官になる権利があり、正義を求めています。」と、話した。
彼女が訴えの中で主張している内容は、警察官の採用試験を受けた2018年にはすでに手首の刺青はレーザーによる除去手術を9回受け、既に取り除かれていたという事。
痛みを伴う9回のレーザー除去手術は一回200ユーロ(約2万5千円)で、合計費用は1,800ユーロ(約22万5千円)を支払ったと言う。
*イタリアの警察官(職務経験2年目から)の平均月収は1,350〜1,400ユーロ(約17万6千円)である。
アリアナの手首には傷跡がほとんど見えない。

RepTVインタビューより

"停職処分を通知された時に彼女の手首に刺青が入ってあったのか"

9回に分けて除去手術を受けた時期と停職処分を受けた時期のタトゥーの痕についてが焦点となり、時系列に追って証拠資料を提出したアリアナ。
行政裁判官は「停職処分の時期の段階で除去されていたものではなく、9回の除去手術が完了し完全に刺青が取り除かれていたと主張するに値する証拠書類としては不十分だ」としてアリアナの訴えを退けた。
しかし、アリアナはあきらめなかった。
彼女が法廷が始まるとき、
「どうやら、法律は誰にとっても平等でないようですね。私より目立つ刺青をしている同僚はたくさんいます。その同僚らの写真を送ります。私は、手首に小さな傷があるだけです。」と主張しはじめたから驚きである。

訴えが通らず裁判に敗北したアリアナへの取材インタビューで、「国務院の裁判官の中に刺青に対する最も柔軟性のないセクションがあり、そこに警察組織の最高責任者がいるだからこういう判決になるわけよ」と敗因について答え、イタリアのズブズブな判検交流(はんけんこうりゅう)、裁判所や検察庁において、一定期間、裁判官が検察官になったり、検察官が裁判官になったりする人事交流制度を批判した。

そして、彼女は、除去した刺青(タトゥー)の傷痕でも法律によって処分を適応された一連の闘争劇について、
「若い世代のイタリア人にとって、タトゥーを持っている事はスマートフォンを持っているのと同じくらい普通一般的な事であるのに、国家に奉仕する身であった私が、時代錯誤の古い規範と法律によって不合理に除外された。国家にとってそれは良いことではないと、先験的立場を持って今後とも発信していきたい。辞任するつもりはなく、まだ裁判で戦っていく」との意向をSNSやマスコミのインタビューで答えている。

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| 国務院の判決からみえた、刺青・タトゥーに対するイタリアの文化背景

国務院が刺青に対して厳格な路線を打ち立てることを去年の3月に確信したのはなぜなのか謎であるが、
イタリアでは、刺青(タトゥー)はその昔から船員と囚人だけが入れるものであるという時代があった。その時代の規範が残っており、警察の法律は厳しいままだ。
刺青(タトゥー)がある者は自己申告にて事前に申請登録をすることで許可をするという多数の判決が過去にはあったが、
現在はその登録申請制もなくなり、逃げ道的な扉も国務院は厳しく閉ざした。
現在も、手首、前腕、首などの目に見える領域に、小さな装飾を施したデザインタトゥーであっても、停職処分になるか刑務所警察などへ配置転換されるという。
前腕に鷲の刺青(タトゥー)が入っていると公序良俗に基づくものではないと言うことになるのだろうか、手首に娘の名前を刺青(タトゥー)しているから犯罪者を追って逮捕する事はできないと言うのだろうか。


8月18日、ミラノの警察署に勤務してた2人の婦人警官サラとヴァレリアも処分された


サラは、サラのために亡くなった叔父の頭文字が付いた星のタトゥー、ヴァレリアは音符のタトゥーがそれぞれ見つかり、停職処分を受けた。
解雇をされたわけでは無いが、事実上、勤務はできないし収入源を絶たれ現在も無職だ。
解雇をされていない現状では、警察官は副業が許されていないので、新しい仕事を探して就職活動をすることも面接試験も受けられない。
政府はまた、これまでに受け取った給与、それぞれおよそ7,000ユーロ(約87万円)を国に返済するように彼女達に要求した。


近年、一部、解釈の厳密さを緩和する動きもある。
農業政策大臣のジャンマルコ・チェンティナーイオ(北部同盟)は9つの刺青を持っているし、経済開発大臣のカルロ・カレンダは酔っぱらった勢いで入れてしまった蜘蛛(くも)の刺青がある。
時代は変わり、刺青(タトゥー)を入れているほとんどの人がアーティスティックなものであったりファッションアイテムの一部として気軽に入れている人がいる。
刺青(タトゥー)は悪人か反社的逸脱者を記すアイテムでそういう人物像が体に彫り物をするというイメージを持っている人は少ないようだ。
イタリアでは、どのスイミングプールでも、片手で数えることができるほどではあるが、タトゥーを1つも持たず無傷の肌で泳いでいる30歳未満の男女はいることにはいる。

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| 2019年の12歳以上のイタリア人を対象にした調査データ

イタリアでは690万人の刺青をしていて、イタリアの人口の12.8%であり、その割合は男性(11.7%)女性(13.8%)でイタリア人女性の方が割合が高い。

教育資格・最終学歴別に見てみると刺青を入れている人
55.4%が高校の卒業資格の人、30.8%が大学の学位を取得の人、

刺青を入れた感想・満足度とその後の問題

92.2%の人がタトゥーに満足している。
17.2%はタトゥーを取り除きたい。
そのうち4.3%は既に除去手術をした。
さらに、刺青を受けた人々の3.3%は合併症または反応があった。


最も頻繁に見られた症状は、痛み、肉芽腫、皮膚の肥厚、アレルギー反応、感染症、膿。
これらすべてのケースで、皮膚科医にかかった12.1%ホームドクター(9.2%)、
タトゥーアーティストに相談した27.4%、
半分以上(51.3%)は、これらの専門家のいずれにも相談しなかった。
一般的に、刺青・タトゥーのリスクとしてあげられるのは、アレルギー反応(79.2%)、肝炎(68.8%)およびヘルペス(37.4%)の症状が懸念されるが、
そういったリスク説明をカウンセリング面接で事前に受けたのはの58.2%のみで、禁忌について十分な情報を得た上で刺青を入れたと答えたのは41.7%だけだった。

「正」という漢字は、"「一」度「止」まる" と書く。これからタトゥーを入れようかと考えている人は、一度、思い止まり、考えてみて欲しい。そうすると、後悔のない「正しい」答えが見つかるかもしれない。