転移も起こらない

従来型ワクチンや非ナノ粒子製剤でワクチン接種されたマウス、無接種のマウスはすべて腫瘍を発症。35日以上生存したマウスはいなかった。

一方、ナノ粒子ワクチンを接種されたマウスは、肺への転移も起こらなかった。

アトゥコラレは「転移はがん治療で最大の障壁だ」と言う。「腫瘍による死亡の大半はいまだに転移によるものだ。それは、メラノーマや膵臓がんといった治療が困難ながんそのもの以上に、大きな課題だ」

最初の実験では、それぞれのがんの種類に一致する抗原を用いた。しかし、研究者らは、異なるがん種に対応する抗原を開発するには、全ゲノム配列解析や複雑なバイオインフォマティクスのスクリーニングが必要だと説明した。

これを踏まえ、追加実験では腫瘍塊から得た、腫瘍ライセート(殺したがん細胞)を用いた。

ナノ粒子ライセートワクチンを接種したマウスを、メラノーマ、膵管腺がん(膵臓がんの一種)、三陰性乳がんのいずれかの細胞に曝露した。

結果、膵管腺がんを発症しなかったマウスは約88%、三陰性乳がんを発症しなかったのは75%、メラノーマを発症しなかったのは69%であった。これらのマウスは、がんが転移するかを調べる試験でも、すべて腫瘍を発症しなかった。

研究メンバーのグリフィン・ケインは「われわれのワクチンによって引き出されるがんに特化したT細胞の働きこそが、高い生存率の鍵なのだ」と述べた。

「このワクチンを自然免疫の細胞に使うと、非常に強力な免疫反応が引き起こされる。すると、抗原をほかの免疫細胞に伝える働きが活発になり、腫瘍を攻撃するT細胞が目覚める」

研究チームは今後、この技術を治療用のワクチンとして応用することを目指している。だが、ワクチンが人間にも同じように通用するか確かめるには、さらに研究を重ねる必要がある。

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