「企業の戦略と競争」とは、当該地域内における企業間競争が国際的な競争力に影響を与えるレベルにまで高められているかという条件である。特に自動運転の分野においては、イスラエル国内での開発競争が世界における開発競争の縮図となっていることは明らかだろう。

「関連産業・支援産業」とは、当該産業のみならず関連する複数の産業クラスターがお互いに連携し合い競争力やイノベーションを高めているかという条件である。

実際にイスラエルにおいては、自動運転のみならず、IoT、AI、サイバーセキュリティーなどの産業が重なり合って産業クラスターを形成していることが競争力やイノベーションの源泉となっている。

またイスラエルと米国、特にシリコンバレーなどITの最先端地域とは、ユダヤ人のネットワークで緊密につながっていることも見逃せない点だ。シリコンバレーの会社がイスラエルのスタートアップを買収したり、成長段階にあるイスラエルの会社がシリコンバレーに支社を開くことなども頻繁に行われている。

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高速道路の交差点が「立体的である」必要がなくなる

筆者が団長として参加したイスラエル国費招聘リーダーシッププログラムにおいては、1週間の同国滞在のなかで、複数の政府機関・研究機関・大学・民間企業等とのミーティングを行った。なかでも本稿との関連で特筆すべきは、技術大国イスラエルのR&D最高峰の研究機関であるワイツマン科学研究所において行われた、同国のハイテク分野におけるサクセスストーリーの象徴となっているアディ・シャミア博士とのミーティング及び特別講義受講である。

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ワイツマン科学研究所(写真提供:筆者)

アディ・シャミア博士はサイバーセキュリティーの代表的技術であるRSA暗号の開発者の1人であり、現在は博士本人が科学者として育つきっかけとなったワイツマン科学研究所で教授として若手育成や研究を行っている。本年2月の日本とイスラエルの二国間投資協定調印に先行して、国際科学技術財団の日本国際賞をイスラエル初の科学者として受賞した人物でもある。

イスラエルにおける次代の注目企業について尋ねたところ、アディ・シャミア博士はこのような予測を話してくれた。

「従来の高速道路のような立体的なインターチェンジではなく、信号機のない通常の交差点を、自動車が高速のままで行き来できるようになる。すなわち、高速道路でインターチェンジが不要となるところまで自動運転技術の実用化が可能となってくるなかで、位置情報技術×AI×IoTなどが交差する自動運転の分野においては、サイバーセキュリティーがこれからの最注目セグメントになる」

イスラエルの国としての競争戦略は日本としても多いに学ぶべき点が多く、次稿以降のテーマとしていきたい。