歌舞伎町のポテンシャルを解放するために

 さて、もう1つお伝えしたいのが歌舞伎町についてだ。冒頭のご質問もそうだが、「欲望渦巻く危険な街」というイメージが強いようだ。「欲望渦巻く」は事実としても、「危険な街」という点では誤解が多い。「湖南菜館にもマフィア対策に青竜刀ぐらいおいてありますよね?」と聞かれたが、ご期待に添えなくて申し訳ない(笑)。

 歌舞伎町での警察の取り締まりは日本一厳しいといっても過言ではない。日本一安全とまではいえないにしても、繁華街の中では安全なほうだろう。『不夜城』に登場するような中国マフィアに出会うこともまずないから安心して遊びに来てほしい。

 危険があるとしても、それは外国人に対するものが多い。たとえば中国人旅行者を狙って「AV女優と一晩過ごせます。料金は50万円」といった詐欺が横行している。だまされた中国人も騒ぎにすれば奥さんにばれてしまうだけに泣き寝入りするしかない。

【参考記事】中国人観光客残酷物語

 安全は重要だが、過剰な規制や取り締まりによって街の魅力を殺してしまうようなことがあれば逆効果。そもそも規制では問題の根本的な解決は不可能だ。2003年、石原慎太郎元都知事の号令によって「歌舞伎町浄化作戦」が行われた。24時間営業の禁止や外国人労働者の就労資格確認厳格化などを徹底する内容だ。確かに客引きが減るなど外面は"清潔"になったかもしれないが、むしろ過剰な"浄化"によって街の魅力はそがれ、多くの店が閉店するなどの副作用をもたらした。

 なにより石原元都知事は「5年間で東京の不法滞在者を半減させる」と豪語したが、その目的はほとんど達成できなかった。歌舞伎町からは消えても、周りの街に移動しただけだったからだ。リビングのゴミを台所に移しただけで掃除をした気分になったようなもの。ばかげた話だ。

 豪腕都知事ですら達成できなかった目標は2011年に意外な"事件"により実現する。東日本大震災と福島原発事故だ。危険を感じた外国人たちは次々と帰国の途についた。日本を危険で魅力のない場所に変えれば、不法滞在者はあっという間に減るだろう。

 規制を作れば問題が解決するという大上段の発想は必ず失敗する。外国人労働者自身が「違法滞在は損、合法的な滞在が得」と考えるようなインセンティブを用意しない限り、問題は解決しない。加えて安全と経済の両立、守りではなく貪欲に成長を目指す攻めの発想が欲しい。

 今や歌舞伎町は東京屈指の観光地として外国人に愛されているが、そのポテンシャルをいかに解放するかが課題だ。24時間営業の解禁など大胆な転換が求められている。

 決断力と実行力を併せ持つ小池百合子新都知事が誕生した今こそがチャンスだ。選挙で見せた攻撃的姿勢を、ぜひ経済政策にも反映してほしい。大人が楽しめる街、情がある街としての歌舞伎町をいかに残せるか。新都知事の決断にかかっている。

【参考記事】歌舞伎町ラスベガス化作戦