最新記事
日本社会

マスメディアへの信頼度が高い日本は「思想統制」されやすい国?

2025年3月26日(水)11時40分
舞田敏彦(教育社会学者)
テレビを見る家族

ネットが普及した現代でも日本人のマスメディアに対する信頼度は依然として高い Fine Graphics/photoAC

<他国に比べて日本の教育現場で「批判的思考」を促す教育が行われる割合は突出して低い>

現代社会では、新聞やテレビ等のマスメディアが発達している。無数の大衆(マス)に情報を伝達し、国民の世論形成や意思統一にも寄与している。1億2000万人もの人口を擁する巨大国家・日本において、マスメディアは不可欠といってよい。

しかし、メディアを操作する側も人間だ。誤報(扇動)に象徴されるように、誤った(偏った)情報が流されることもしばしばある。マスメディアは重要な機能を果たすが、それに対し無批判に信頼を寄せるのは考えものだ。


 

日本人のマスメディアに対する信頼度は高い。2017年から2022年に実施された『第7回・世界価値観調査』によると、日本人の66.6%が「テレビは信頼できる」、71.5%が「報道機関は信頼できる」と答えている。アメリカ人の信頼率(順に22.6%、29.7%)と比べるとかなり高い。

<図1>は、調査対象の66カ国の回答をグラフにしたものだ。横軸に「テレビは信頼できる」、縦軸に「報道機関は信頼できる」の回答割合をとった座標上に、各国のドットを配置している。

newsweekjp20250326015151-0971cf440fd8c3b72b754e5e1e7525a2ad9af91b.png

右上にあるのは、マスメディアへの信頼度が高い国で、アジア諸国が多く位置している。発展途上国や、言論への社会的統制が強く国営メディアが力を持っているような国だ。日本もこのゾーンにあり、メディアへの信頼度が高い部類に入る。左下の欧米諸国と比べて格段に高い。

報道関係者にとっては名誉かもしれないが、一抹の不安も拭えない。マスメディアは無数の人々に情報を瞬時に伝えてくれるが、発信者がチョイスした情報が一方的に伝達されるので、思想統制の手段として使われる危険性がある。

SDGs
2100年には「寿司」がなくなる?...斎藤佑樹×佐座槙苗と学ぶ「サステナビリティ」 スポーツ界にも危機が迫る!?
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

中国輸入博、米出展企業は貿易戦争の行方を楽観視

ビジネス

豪CBA、第1四半期は2%増益 住宅ローンのシェア

ワールド

イラン、IAEAの核施設視察受け入れ テヘランの研

ワールド

タイ軍、カンボジアとの停戦合意「停止」へ=最高司令
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一撃」は、キケの一言から生まれた
  • 2
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評家たちのレビューは「一方に傾いている」
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    コロンビアに出現した「謎の球体」はUFOか? 地球外…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    中年男性と若い女性が「スタバの限定カップ」を取り…
  • 7
    インスタントラーメンが脳に悪影響? 米研究が示す「…
  • 8
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 9
    レイ・ダリオが語る「米国経済の危険な構造」:生産…
  • 10
    「爆発の瞬間、炎の中に消えた」...UPS機墜落映像が…
  • 1
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 2
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 3
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 6
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 7
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 8
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 9
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 10
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中