最新記事
気候変動

韓国のソウルフード「キムチ」に迫る気候変動...白菜収穫激減も

2024年9月9日(月)21時13分
キムチ

9月3日、韓国料理に欠かせないキムチが、気候変動の脅威にさらされている。写真はキムチを仕込むイ・ハユンさんら。8月、韓国・南楊州市で撮影(2024年 ロイター/Kim Soo-hyeon)

韓国料理に欠かせないキムチが、気候変動の脅威にさらされている。研究者や農家、製造業者らによると、気温上昇により、主な原材料である白菜の品質や収穫量に低下がみられるという。

白菜の生育には涼しい場所が適しており、重要な栽培シーズンとなる夏季でも気温が25度を超えることはめったにない、山地などの高冷地で栽培されることが多い。


 

複数の研究によると、気候変動による気温上昇がこうした作物の生育を非常に脅かしており、韓国では将来的に白菜の栽培ができなくなる可能性もあるという。

「こうした予測が現実にならないことを祈っている」と植物病理学とウイルス学の専門家、イ・ヨンギュ氏は言う。

「白菜は冷涼な環境を好み、耐えられる温度範囲はとても狭い。生育適温は18-21度だ」

畑や店頭、家庭の食卓に至るまで、農家やキムチ製造業者らは既にさまざまな場所で変化を感じつつある。

辛く味付けされた発酵食品のキムチは、ダイコンやキュウリ、ネギといった他の野菜でも作られているが、白菜は長年最も親しまれている定番の食材だ。

韓国の食文化を支える「キムチマスター」として農林畜産食品部の認定を受けているイ・ハユンさんは、白菜の芯部分が「悪くなっている、根元がもろい」として、高温による野菜への影響だと指摘した。

「もしこの状態が続けば、夏場は白菜のキムチを諦めなければならないかもしれない」とイさんは言う。

政府の統計データによると、昨年の高地の白菜作付面積は3995ヘクタールで、20年前の8796ヘクタールから半減以上の縮小となった。

韓国の農業シンクタンク、農村振興庁の気候変動シナリオでは、作付面積は今後25年でわずか44ヘクタールへと大幅に減少し、2090年には高地でも白菜が全く育たなくなることが予測されている。

研究者らは白菜の生産量が激減している原因として、気温上昇や予測が困難な豪雨、より高温・長期化する夏には対策が難しい害虫などを挙げた。

白菜を枯らす細菌感染は、農家をとりわけ悩ませている。収穫の直前になって初めて病気が発覚するためだ。

また、韓国のキムチ市場は、主にレストランなどで提供されている低価格な中国からの輸入品との競争にも直面しており、気候変動はこうした現状に追い打ちをかけている。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米税務事務所アンダーセン、上場で時価総額17.5億

ビジネス

ドイツの企業経営破綻、25年は前年比8.3%増で1

ワールド

白人至上主義は南アの主権を脅かす=ラマポーザ大統領

ワールド

タイ、領内のカンボジア軍排除へ作戦開始 国境沿いで
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...かつて偶然、撮影されていた「緊張の瞬間」
  • 4
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 5
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 6
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 7
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 8
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 9
    米、ウクライナ支援から「撤退の可能性」──トランプ…
  • 10
    死刑は「やむを得ない」と言う人は、おそらく本当の…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 7
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 8
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 9
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 10
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中