最新記事
米中対立

中国軍の台湾「封鎖」演習を監視していた米海軍第11空母打撃群

U.S. Navy strike group keeps close eye on China's carrier near Taiwan

2023年4月11日(火)19時25分
ジョン・フェン

中国軍の演習に睨みを利かせた米空母ニミッツ(写真は2008年2月28日、韓国の釜山) Jo Yong-Hak-REUTERS

<南シナ海で航行の自由作戦を実施してアメリカと台湾の接近に神経を尖らせる中国軍をけん制>

米海軍は4月10日、南シナ海で「航行の自由作戦」を実施した。台湾周辺で同日まで3日間にわたって軍事演習を行っていた中国軍をけん制する目的があったものとみられている。

中国海軍が運用する3隻の空母のうち2隻目にあたる「山東」は、4月5日に初めて太平洋上を航行しているのが確認された。台湾の蔡英文総統が、訪問先のアメリカでケビン・マッカーシー米下院議長と会談を行う数時間前のことだ。中国軍は、この会談への対抗措置の一環として、山東をはじめとする艦船や軍用機が台湾「包囲」軍事演習に参加したと明らかにした。

中国は台湾を自国の領土と主張しており、必要とあれば武力によって統一すると宣言してきた。1949年に国共内戦に敗れた国民党が台湾に逃れて以降、台湾は事実上の独立状態を維持してきている。中国政府は独立姿勢を鮮明に打ち出してきた蔡を「分離独立主義者」と見なしている。

蔡は8日、中国が台湾の標的をミサイル攻撃するシミュレーションを含む軍事演習を開始したことを受けて、本土安全保障担当の当局者らを招集した。中国軍は10日、台湾包囲と正確な攻撃のシミュレーションを伴う「連合利剣(鋭い剣)」演習が「成功裏に完了」したと発表した。

宮古島南で計120回発着艦

今回の軍事演習は、2022年8月にナンシー・ペロシが現職の米下院議長(当時)が台湾を訪問した後に実施された軍事演習ほどの規模には達しなかった。

とはいえ、台湾周辺の海上と上空に数十機の軍用機と11隻にのぼる艦船を展開させており、軍事的な圧力は十分だった。演習には中国の艦載戦闘機「殲15」少なくとも4機が参加し、台湾国防部によれば10日に台湾南東部の防空識別圏に侵入した。殲15は台湾の東沖約370キロメのところで演習に参加していた山東から発艦したとされている。

アメリカとその同盟国である日本は、山東の動向を厳重に監視してきた。先週、山東が太平洋上の海域を航行しているのを確認した日本の統合幕僚監部によれば、山東は4月7日から9日にかけて宮古島から南に約230~430キロメートルの海域を航行し、この間に艦載戦闘機を計80回、艦載ヘリを計40回発着艦させたということだ。

また同防衛省の情報によれば、山東と共に中国軍の駆逐艦「焦作」やフリゲート艦「柳州」、戦闘支援艦「査干湖」も同海域を航行しているのが確認された。

だが台湾の東岸から約590キロ地点には、米海軍第11空母打撃群と旗艦の米原子力空母「ニミッツ」が派遣され、日米双方の発表によれば、週末までに東シナ海から太平洋西部にかけて日本の海上自衛隊の艦船と共に海上訓練を行った。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

中国習主席、異例の民間企業シンポジウム主催へ 信頼

ビジネス

キリンHDの24年12月期は純利益半減、構造改革の

ワールド

米印首脳会談、貿易と関税巡る対立解消へ協議開始で合

ビジネス

楽天G、24年12月期は5年ぶり営業黒字に転換、モ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ガザ所有
特集:ガザ所有
2025年2月18日号(2/12発売)

和平実現のためトランプがぶち上げた驚愕の「リゾート化」計画が現実に?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だった...スーパーエイジャーに学ぶ「長寿体質」
  • 2
    【徹底解説】米国際開発庁(USAID)とは? 設立背景から削減議論まで、7つの疑問に回答
  • 3
    吉原は11年に1度、全焼していた...放火した遊女に科された「定番の刑罰」とは?
  • 4
    【クイズ】今日は満月...2月の満月が「スノームーン…
  • 5
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 6
    夢を見るのが遅いと危険?...加齢と「レム睡眠」の関…
  • 7
    イスラム×パンク──社会派コメディ『絶叫パンクス レ…
  • 8
    終結へ動き始めたウクライナ戦争、トランプの「仲介…
  • 9
    鳥類進化の長年の論争に決着? 現生鳥類の最古の頭骨…
  • 10
    「ばかげている」北朝鮮がトランプ大統領のガザ所有…
  • 1
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 2
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だった...スーパーエイジャーに学ぶ「長寿体質」
  • 3
    Netflixが真面目に宣伝さえすれば...世界一の名作ドラマは是枝監督『阿修羅のごとく』で間違いない
  • 4
    研究者も驚いた「親のえこひいき」最新研究 兄弟姉…
  • 5
    メーガン妃の最新インスタグラム動画がアメリカで大…
  • 6
    戦場に響き渡る叫び声...「尋問映像」で話題の北朝鮮…
  • 7
    2025年2月12日は獅子座の満月「スノームーン」...観…
  • 8
    iPhoneで初めてポルノアプリが利用可能に...アップル…
  • 9
    【徹底解説】米国際開発庁(USAID)とは? 設立背景…
  • 10
    「だから嫌われる...」メーガンの新番組、公開前から…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 8
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 9
    戦場に「杖をつく兵士」を送り込むロシア軍...負傷兵…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中