最新記事

ウクライナ情勢

米独、ウクライナに主力戦車供与へ ゲームチェンジャーとなるか

2023年1月26日(木)08時54分
米国のM1A2エイブラムス戦車

米国がウクライナへ供与を決定したM1A2エイブラムス戦車。2016年5月撮影(2023年 ロイター/David Mdzinarishvili/File Photo)

米政府は25日、ドイツに続きウクライナに主力戦車「エイブラムス」を供与することを決めた。ウクライナは対ロシア戦における転換点になりうる動きとして歓迎の意を表明した。

バイデン米大統領は25日、エイブラムス31両をウクライナに供与すると発表。これまで維持してきた反対姿勢を撤回し、ウクライナ支援で欧州との結束を鮮明にする。

米国は、エイブラムスは維持や管理が難しく、ウクライナ軍への訓練が困難という理由で供与に慎重な姿勢を維持していた。しかし、より操作性の高い「レオパルト2」提供を巡り独を説得するため方針を転換した。

バイデン大統領は独の決定を評価した上で、ロシア側の期待に反し、欧米の同盟国は「完全かつ徹底的に結束している」と言明した。

ウクライナは数カ月前から西側の主力戦車提供を要請してきた。

バイデン政権幹部によると、エイブラムスが供与されるまでには数カ月かかる見通し。米国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官も、戦車がウクライナに到着するには数カ月が必要と述べた。

勝利への道

米ホワイトハウスは25日、バイデン大統領が独、フランス、イタリア、英国の首脳と電話会談を行い、ウクライナに対する支援で緊密に連携することを確認したと発表した。

独にはナチス時代の反省に立ち攻撃的兵器の輸出に大きな抵抗がある中、まず軍事備蓄から14両のレオパルト2を輸出することを決定。ポーランドなどのパートナー国が保有する同戦車の供給も認めた。

ショルツ首相は同国議会で「ウクライナ支援で常に最前線に立つ」と語った。

ウクライナのゼレンスキー大統領は米国の決定を米国の決定を「勝利への重要なステップ」とした上で、独にも感謝を表明。自由主義世界はウクライナの解放という「共通の目標の下、かつてないほど団結している」と述べた。

その後、恒例の夜のビデオ演説で、ウクライナ軍の戦力として戦車を供給するための鍵は、スピードと十分な数だと述べた。

また、北大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルグ事務総長と話し、長距離ミサイルと航空機の供給を要請したと明らかにした。

タブーが破られた

米独の決定は、西側諸国にとってウクライナ支援における最後のタブーの一つを決定的に崩した。西側諸国はこれまで、核保有国ロシアを刺激することを恐れ、ウクライナに重火器を送ることに消極的だった。

ロシアは独の決定に激しく反発。ロシアのネチャエフ駐独大使は「この極めて危険な決定は、紛争を新たなレベルの対立に導く」とし、「すでに嘆かわしい状態にある両国の関係に取り返しのつかない損害を与えるだろう」と述べた。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2023トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシア、ウクライナ東部ルハンスク州全域を支配下に 

ワールド

タイ憲法裁、首相の職務停止命じる 失職巡る裁判中

ビジネス

仏ルノー、上期112億ドルの特損計上へ 日産株巡り

ワールド

マスク氏企業への補助金削減、DOGEが検討すべき=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた発見の瞬間とは
  • 2
    ワニに襲われ女性が死亡...カヌー転覆後に水中へ引きずり込まれる
  • 3
    普通に頼んだのに...マクドナルドから渡された「とんでもないモノ」に仰天
  • 4
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 5
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 6
    「パイロットとCAが...」暴露動画が示した「機内での…
  • 7
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 8
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    顧客の経営課題に寄り添う──「経営のプロ」の視点を…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 3
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門家が語る戦略爆撃機の「内側」と「実力」
  • 4
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 5
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 6
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた…
  • 7
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 8
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 9
    サブリナ・カーペンター、扇情的な衣装で「男性に奉…
  • 10
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 6
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 7
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 8
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 9
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中