最新記事

教育

コロナ禍で「体験」の機会を奪われた子どもたち

2022年10月5日(水)10時40分
舞田敏彦(教育社会学者)
ボランティア活動をする子どもたち

子どもたちの学習理解度にとっても体験は重要 Rawpixel/iStock.

<行動制限によって、遊園地やスポーツ観戦に行ったり、ボランティア活動を行なったりする機会は大きく減っている>

子どもの成長にとって、各種の体験は大きな意義を持っている。自然や動植物への慈しみの念は自然体験を通して育まれ、弱者への思いやりは、そういう人を手助けする経験を通して内面化される。

勉強にしても、教科書に書いてある抽象的なことの理解は、自分が持っている原体験に引き寄せてできることだ。教科書の内容は、社会生活に必要な「読み・書き・算」や、生活上の諸問題を解決するための知恵を体系的にまとめたもので、その原点は先人の体験だ。それに通じるものを持っている子とそうでない子では、勉強の理解度にも差が出てくる。

このように子どもの成長にとって体験は重要なのだが、コロナ禍での行動制限でその機会が奪われている。先日、2021年の総務省『社会生活基本調査』の結果が公表された。それによると、10~14歳の子どものうち、過去1年間にボランティア活動を行ったと答えたのは12.1%。5年前の26.5%と比べて半減している。

『社会生活基本調査』では、各種の趣味や旅行の実施率も調べている。<表1>は、過去5年間の実施率の増加分が大きい順に各項目を配列したものだ。

data221005-chart01.png

スマホでのゲームや自宅での音楽鑑賞は、実施率が5ポイント以上増えている。コロナ禍での巣ごもり生活の影響とみていい。

しかし数で見ると、実施率が下がっている項目が多い。下の方にあるのは減り幅が大きいものだが、映画館での映画鑑賞は71.5%から52.7%、遊園地・動植物園見学は52.0%から29.0%、国内観光旅行は59.9%から31.9%に減少している。コロナ禍以降、子どもの各種の体験が明らかに減っていることが分かる。巣ごもりで読書(マンガを除く)は増えているかと思いきや、そうではない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

インドネシア中銀、2会合連続金利据え置き ルピア安

ワールド

政府・日銀、高い緊張感もち「市場注視」 丁寧な対話

ビジネス

オランダ政府、ネクスペリアへの管理措置を停止 対中

ワールド

ウクライナに大規模な夜間攻撃、10人死亡・40人負
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影風景がSNSで話題に、「再現度が高すぎる」とファン興奮
  • 4
    マイケル・J・フォックスが新著で初めて語る、40年目…
  • 5
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 6
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 7
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 8
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 9
    「これは侮辱だ」ディズニー、生成AI使用の「衝撃宣…
  • 10
    「嘘つき」「極右」 嫌われる参政党が、それでも熱狂…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 9
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 10
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中