最新記事

WHO

CIA:中国はWHOに圧力をかけて世界中のマスクや防護服を買い漁った?

CIA Believes China Tried to Stop WHO from Sounding the Alarm on the Pandemic.

2020年5月14日(木)17時45分
ナビード・ジャマリ

テドロスは中国の初期対応を高く評価し、渡航制限も必要ないと主張した Denis Balibouse -REUTERS

<中国はWHOの「パンデミック宣言」を遅らせて、その間に自国で必要な医療品を数十億点も緊急輸入した疑いが浮上。世界はそのために今もマスクや防護服の不足に悩まされている可能性が高い>

中国は昨年末、新型肺炎の集団発生に気づいた時点で、世界保健機関(WHO)に圧力をかけて緊急事態宣言を先送りさせ、その間に世界中からマスクなどの医療用品を大量にかき集めた──CIAの調査でそんな疑惑が浮かび上がった。

WHOが「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)」宣言を出したら、各国が医療用品の輸出を差し止めかねない。それを恐れた中国は、宣言を発出したら、新型ウイルスに関する調査に協力しないとWHOに脅しをかけた。CIAの調査チームはそうみている。本誌はCIA職員2人に報告書の内容を確認した。

先にドイツの情報機関も同様の報告を行っている。世界で29万人超、アメリカで8万人超の死者を出している新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)をめぐって、米中が繰り広げる鍔迫り合いは、この疑惑でさらに激化しそうだ。

シュピーゲル誌が先週報じたドイツの情報機関の調査は、中国の習近平(シー・チンピン)国家主席が1月21日に個人的にテドロス・アダノムWHO事務局長に宣言の延期を要請したと結論付けている。

原則論を盾にするWHO

WHOの報道官は本誌の取材に対し、習主席は介入していないと断言したが、宣言を繰り延べるか内容を変更するよう、中国当局から働きかけがあったかという質問には回答を避けた。

「加盟国との特定の協議についてはコメントできない。だがWHOはこのパンデミックでは一貫して、エビデンス(科学的根拠)に基づく技術機関としての権限を行使し、あらゆる地域の全ての人々を守る任務に専念している」と、WHOのクリスチャン・リンドマイヤー報道官は本誌に語った。「WHOは科学、公衆衛生上の最善の慣行、エビデンス、データ、独立した立場の専門家の助言に基づいて勧告を行う」

リンドマイヤー報道官はまた「1月21、22、23日にはテドロス事務局長は、習近平とコミュニケーションを取っていない」と断言。テドロス指揮下の「上級チームが1月28日に北京で習主席と会合を持ったが、その場ではPHEIC宣言については何も話し合われなかった」と付け加えた。

本誌が取材したCIA職員2人は、習主席が直々にWHOに圧力をかけたかどうかは分からないと述べた。

<参考記事>アメリカの無関心が招いた中国のWHO支配
<参考記事>米中激突:ウイルス発生源「武漢研究所説」めぐり

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ゼレンスキー氏、トランプ氏と28日会談 領土など和

ワールド

ナジブ・マレーシア元首相、1MDB汚職事件で全25

ワールド

ロシア高官、和平案巡り米側と接触 協議継続へ=大統

ワールド

前大統領に懲役10年求刑、非常戒厳後の捜査妨害など
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指すのは、真田広之とは「別の道」【独占インタビュー】
  • 4
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 5
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 6
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 7
    赤ちゃんの「足の動き」に違和感を覚えた母親、動画…
  • 8
    中国、米艦攻撃ミサイル能力を強化 米本土と日本が…
  • 9
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 10
    「時代劇を頼む」と言われた...岡田准一が語る、侍た…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 6
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 7
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 8
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 9
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中