最新記事

災害

相次ぐ台風被害で国土強靭化緊急対策拡充へ 人手と予算の不足が課題に

2019年10月29日(火)18時06分

台風19号やそれに続く豪雨などの被害を受け、政府・与党は昨年度に打ち出した3カ年の国土強靭化緊急対策の拡充を検討し始めた。写真は台風19号で被害を受けた家。福島県で15日撮影(2019年 ロイター/Soe Zeya Tun)

台風19号やそれに続く豪雨などの被害を受け、政府・与党は昨年度に打ち出した3カ年の国土強靭化緊急対策の拡充を検討し始めた。まずは水害に関する対策パッケージを取りまとめた上で、補正も検討し、「必要なものを上乗せする」(菅義偉官房長官)構えだ。ただ、こうした対策には人手不足の制約もあり、緊急対策の期間を延長するという議論が主軸になりつつある。11月中旬にも概要を取りまとめるのがメインシナリオだ。

まず対策パッケージと補正

水害対策については安倍晋三首相が「水害が頻発化、激甚化する場合に備えた治水対策を適切に講じていく」、「予備費を活用して新しい対策パッケージをまとめるよう指示した」(10月24日衆院本会議など)と繰り返し発言。自民党の岸田文雄政調会長も18日、台風被害からの復旧支援のため「補正予算案を年内の早い時期に編成すべき」と述べており、水害対策のパッケージと補正予算の必要性は政府・与党内で広く共有されている。

しかし各論では議論は集約していない。もともと政府・与党内では10月の消費増税による消費の落ち込みに対応する形での経済対策が議論されていた。軽減税率やポイント還元などの増税対策を打ち出しているため、新たな経済対策は不要との意見と、輸出・生産の下落による景況感悪化の可能性に対応した対策が必要との意見があった。

国土強靭化3カ年計画拡充

そこに台風19号の被害が発生し、国民的に必要性の理解されやすい水害対策の拡充が、経済対策を兼ねるものとして議論され始めた。議論の中心は、2018年末に打ち出された事業規模7兆円、国費3兆円台の国土強靭化のための緊急対策の拡大。菅義偉官房長官も26日、3カ年緊急対策に関連し、「必要なものはさらに上乗せをする中で、災害に対応する仕組みを作っていきたい」と述べた。

昨年策定された3カ年の緊急対策は、河川の堤防かさ上げや大規模停電防止など160項目にわたる。台風で関西空港が浸水し停電したことを踏まえたエネルギー・運輸対策や、氾濫の可能性のある河川の堤防強化などが柱だ。大阪府北部地震で小学生が倒壊したブロック塀の犠牲になった事故を受け、学校の塀の撤去・改修や、小中学校のエアコン設置なども盛り込まれた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中ロ首脳がビデオ会談、米新政権やウクライナ戦争など

ワールド

平和維持軍最低20万人必要、終戦後の安全保障で=ウ

ワールド

ルビオ米国務長官が就任、米国第一主義鮮明に ヒスパ

ワールド

ベッセント米次期財務長官指名、上院財政委を通過 民
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプの頭の中
特集:トランプの頭の中
2025年1月28日号(1/21発売)

いよいよ始まる第2次トランプ政権。再任大統領の行動原理と世界観を知る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 2
    被害の全容が見通せない、LAの山火事...見渡す限りの焼け野原
  • 3
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性客が「気味が悪い」...男性の反撃に「完璧な対処」の声
  • 4
    大統領令とは何か? 覆されることはあるのか、何で…
  • 5
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 6
    トランプ新政権はどうなる? 元側近スティーブ・バノ…
  • 7
    世界第3位の経済大国...「前年比0.2%減」マイナス経…
  • 8
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 9
    米アマゾン創業者ジェフ・ベゾスが大型ロケット打ち…
  • 10
    「敵対国」で高まるトランプ人気...まさかの国で「世…
  • 1
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性客が「気味が悪い」...男性の反撃に「完璧な対処」の声
  • 2
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 3
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 4
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 5
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 8
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 9
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
  • 10
    中国でインフルエンザ様の未知のウイルス「HMPV」流…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中